戦いの中でその真の実力を見せることはない。
 
 
 
白光道師は戦うために道師になったわけではない。
 
 
 
ただ、大切な何かを守るために道師になっただけだ。
 
  
 
「我が力は主の盾となる」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
光道師 〜白髪の陰陽師〜
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ヤクモ、天正10年にあったことは?」
「……」
がヤクモに尋ねた。ヤクモは眉間にしわを寄せ悩むが答えはどうも出てきそうにはない。
「悪い、聞いた俺が悪かった。で、天正10年にあったことと言えば…本能寺の変だ」
「…ホンノウジ?」
「ああ、そうだ。あの目の前にあるのが本能寺。あそこで歴史が変わりそうになっている。では…我が主ヤクモ」
ニヤリと笑ってはヤクモに命令をこう。ヤクモは『行くぞ!』と言って本能寺へと足を走らせた。
 
 
 
「この手で変えられぬ未来なぞ興味はないわ!!」
男の大きな刀が空を切る。刀を向けられた青年は軽々と男の攻撃をかわし不敵な笑みを浮かべた。
「フッ…聞き分けのない御殿であれば……無用!!」
青年は片手で印を組みそのもう一方の手で闘神機を握った。そしてそのまま式神を降神した。
「雷火のタカマル。契約により推参」
現れたるは火属性の雷火族のタカマル。背丈は高く、鋭き眼光は捕らえた獲物を逃がしはしそうになかった。
青年が『行けェェい!!』と命を下すとタカマルは男に襲い掛かった。
だが、タカマルの攻撃は男には一切入らず、逆にタカマルにきつい一撃が叩き込まれた。
男の前に姿を見せたのは白き虎の獣人だった。
「白虎のコゲンタ見参!ってね…」
不適な笑みを浮かべてコゲンタはその名を口にした。それを隙ととりタカマルはコゲンタに拳を向けた。
即座にそれを理解しコゲンタはタカマルの拳を受けとめた。ハッと鼻で笑いコゲンタは言葉を返す。
「やるな雷火の!!」
「……まだ序の口!!」
タカマルはコゲンタに負けじと言葉を返す。式神は己の力ををぶつかり合わせその場から動けないでいた。
タカマルの闘神士の青年は突然現れた白虎に驚きの表情を隠せないでいた。
「白虎…だと!?」
「…うぬらは……一体」
男は自分を守る様に姿を見せた獣人――コゲンタを背を見ながら男は戸惑ったように呟いた。
すると不意に人の気配が二つ増えた。
「ムっ何奴」
男が振り返る。そこにはコゲンタが入ってきたときの土ぼこりが舞っていた。
だが、ゆっくりと土ぼこりは晴れていきそこには少年が二人立っていた。
片方の少年は闘神機を確りと握り締め、もう片方の少年はその手に札を何枚か持っていた。
「闘神士…闘神士ヤクモだ!!」
「ついでの陰陽師でよろしく」
 
 
 
式神達の引き起こす闘気は強いものでその床も何もしていないというのに衝撃が走っていた。
「…お主……闘神士ともうしたか?」
男が闘神機を握る少年――ヤクモに問いかけた。
しかし、それを阻止するかのように符を持った少年――は男の前に手をかざした。
男はの心中を察したかその口を閉じた。
「織田ノブナガ様、ご理解のほどありがとう御座いまする…其の者はあなた様の命を守るために戦ってております。
…未熟者ですので何故、戦いに集中させてさせてくださいませ」
「……主はなんぞ」
「我は其の者に仕えし陰陽師と申しまする。
主に代わり、ノブナガ様のお命、お守りさせていただきとう御座います」
ヤクモ達には絶対に見せない真剣な表情と、その落ち着いた言葉達。
その言葉達はあったばかりであるノブナガを信用。いや、黙らせるだけの力があった。ノブナガはこくりと信じるように頷いた。
は『感謝いたします』と言ってこコゲンタとタカマルの戦いに目を向けた。
そこには苦戦を強いられているコゲンタとヤクモの姿があった。は小さく舌を打ち印を踏んだ。
「我は神速」
障子戸が開き一本の手槍がタカマルの手元に下りてきた。タカマルはすぐさまその手槍を掴んだ。
「陰陽手槍・稲妻王!!」
そこに武器が現れたということはタカマルの必殺技が来ると言うことだ。
コゲンタはそれを瞬時に予測しヤクモに防御の印をきるようにと声を飛ばす。
だがそれを言う前にタカマルの攻撃は完成してしまっていた。
 
「天魔焼尽撃!!」
 
火の属性に相応しい炎攻撃が決まる。コゲンタは叫び声を上げる。ヤクモとノブナガの顔に驚きが走る。
「フッ…勝負あったな」
青年は勝ち誇ったように言葉を放った。だが、その場に居たは楽しそうに笑う。『どこに目ん玉つけてんだよ』と。
「はっ全くだ。まだ終わっちゃいねェぜ」
「コゲンタ!」
ヤクモは嬉しそうに己の式神の名を呼んだ。コゲンタも嬉しそうにふっと笑い言う。
「やっと手前の付けた名前を覚えたようだな……あと、ご苦労さん」
「おうっ。さっ、ヤクモ、こいつにはまともにぶつかり合えば勝算は十分ある!
それに…手の内が見えた敵ほど弱いもんはないからなぁ…」
礼を言うコゲンタに言葉を返しはヤクモに勝算を告げた。しかし、タカマルはその言葉を聞いて鼻で笑った。
「ふん。雑魚の戯言。強がるのはよせ。すぐに楽にしてやろう」
「言ってろ。…ヤクモ、モンジュの印だ。忘れてねェだろうな…」
コゲンタはちらりとヤクモに視線を向けて言った。ヤクモの頭の中で父モンジュと自分が印を切る姿が思い出される。
 
「あぁ、忘れるもんか……」
 
ヤクモの中で何かが目覚める。…闘神士としての血に目覚めたのかもしれない。
そんなヤクモのなにかを感じ取ったのかは薄く笑った。
「決めろよ!!コゲンタ!!」
「ハッ!誰に言ってやがる!!」
ヤクモは力強く印をきる。は勝利への確信のためにまた印を踏んだ。
宙に障子戸が現れその中から一本の剣が姿を現した。コゲンタはそれを確りととらえる。
「今度こそ来たァァ!!俺の西海道虎鉄ッ!!」
コゲンタの動きが変わる。それを感じ取りつつも青年は己の実力を過信していた。
「チッ!生意気な秒殺しろタカマル!!」
「御意!真天魔焼尽……」
青年の命令が飛びタカマルはすぐさま攻撃体制に入った。だが、それよりも早くコゲンタの攻撃は開始されていた。

 

 

 
「遅ェわ、お前」

 

 

 
タカマルをコゲンタの陰陽剣――西海道虎鉄が切り裂いた。タカマルは声をあげる暇もなく返っていった。
「連撃怒濤斬魂剣。日は灰に帰り土となる……また会おうぜ雷火の……」
コゲンタはそう言って立ち上がった。ヤクモはその場に残った一枚の札を取り上げた。コゲンタは『とっとけ』と言った。
「くっ…ま、まさか私が童にやられるうとは」
「だたの童ではなかったのさ。…陰陽師を従えてる時点で警戒しろってーの。では、ノブナガ様」
「うむ。ランマル。己の天命を知る事こそ美しきことと知れ!!」
ノブナガは青年――ランマルを切り裂いた。
ヤクモは血の気の引いた顔を、コゲンタは不機嫌そうな表情を浮かべた。
その横では無表情に切り裂かれたランマルの亡骸を睨んだ。ノブナガはひょいと闘神機を拾い上げた。
「…ワシには無用の品だな」
「ならば、こちらでお預かりさせていただきましょう」
はノブナガから闘神機を受け取った。そしてそのままノブナガに背を向けた。
「冥土の土産に面白いものを見せてもらったわ。お主の戦い、まことに見事であった。己が信じる道を貫き通すと良い…」
ノブナガはヤクモにどこか優しい笑みを浮かべて言った。そして背を向けた。コゲンタが立ち尽くすヤクモに声をかける。
「ヤクモ間に合わねェ行くぞ!」
 

 

 

「人間五十年。
下天のうちをくらぶれば、夢まぼろしの如くなり…ひとたび生を受け滅せぬもののあるべきか…
思えばこの世は常の住処非ず。草葉に置白露…水に宿る月より猶怪し…
ノブナガの命、我白光の道師が承ったぞ」
そう言っては闘神機に向かって印を踏んだ。
 
 
 
「あんな可愛い女の子を待たすなんて最悪だなヤクモ」
「五月蝿い」
「タイムオーバー!!バイス!!」
「あ」
と無駄話していると同級生の女の子――ヒトハは待ちきれずに駆け出した。
そんなヒトハを見てヤクモは間抜けな表情を浮かべた。
「負けるか!」
「速っ」
ヤクモは置いていかれるものかと駆け出す。そのスピードはすさまじかった。
「どうです?ヤクモ様はマホロバを倒せそうですか?」
イヅナはヤクモを見送っているとコゲンタに尋ねた。
「さァな……………けどよ…、少しはマシになってきてるぜ!!」
そう言ってコゲンタはヤクモの腰に装着されている闘神機にすばやく入っていった。
それを見ては苦笑いを浮かべる。
「素直じゃないな。まっ、いいけど……さ!イヅ、愛の語らいでも………」
「あなたはご自分の仕事をしてください。どうせ、裏でいろいろとするつもりでいるのでしょう」
「失敬だな。俺は愛しのヤクモのためにこの身をなげうつ気だが?」
「……どうだか、とりあえず、次の戦いのための札でも作っておいてはいかがですか?」
イヅナはそう言うとさっさと家に戻って行った。は苦笑いを浮かべ、ランマルの闘神機を眺めた。
 
「……いいのかねぇ…あんなこと言ってさ。まっ、俺の気まぐれ任せだな」
 
妙にやわらかいの笑みはどこか感情がなく見えた。

 

 

 

 

 

〜後書〜

バトルシーンなんて書けるか。上手い表現の仕方がわからんとです。
次は好きなだけ結構ギャグができそう。でも、バトルシーンが……多いんだよコレ。
いや、そうゆう漫画なんで仕方がないといえばないんですが………。
バトルシーンを抜くと、わけはわからないし、文自体減るんですよ。それが一番痛い。
つか、この小説の目玉が抜けた格好になるんですよ。……なければ楽。なければもっとクソ小説。さぁ、どっちをとる!