夕暮れ時、は竹箒片手に今晩の夕食のメニューを考えていた。
「今日の晩御飯、何にしようかな?ジョニー」
『オイ、俺はジョニーじゃねぇ。ジョニザっだって何度も言ってんだろ』
「ん〜それ答えになってないよジョニー」
が困ったような表情を見せ自分の式神、雷火のジョニザには言った。
『あのな、取り合えずはお前が俺の言うことを確り聞け』
「……私ジョニーよりちゃんと人の話聞くタイプだよ?」
『じゃあなんで俺が何回も名前を訂正してんのにお前は訂正しねぇんだよ』
ジョニザが不機嫌そうにに尋ねるとはニッコリと微笑んで口を開いた。
「今日の晩御飯はハンバーグに決定――ッ!」
『オイコラ!ッ!!』
「ジョニー!晩御飯の買出しに行っくよ――っ!」
ジョニザを適当に無視しては家へと向って行った。
その後を追うようにジョニザはわーわーと騒ぎながらその体を宙に揺らした。
「今日の晩御飯はちょっとばかり頑張ってみちゃった」
照れくさそうに笑って同居人であるリクとソーマの前に夕食であるハンバーグを出す。
ソーマの目が輝きリクの表情も嬉しそうになった。
「「いただきまーす」」
「召し上がれ〜」
ハンバーグを一口サイズに切りソーマとリクは口へと放りこむ。肉汁が口の中で広がった。
「う〜んッ!、美味しいよ!このハンバーグ!」
「そう?嬉しいなぁ。頑張ったかいがあったね」
『、今日何かいいことでもあったのか?』
ご満悦といった感じの表情を浮かべてハンバーグを頬張るソーマの式神――フサノシンが不思議そうに尋ねた。
「うん。今日はお世話になってる人にハンバーグを食べさせるといいって占いに出てたんだ。
それで、今朝からそれを企んでいたら…いいこと尽くしだったんだ!」
ニコニコと笑顔でそう語る。フサノシンも嬉しそうに笑って『よかったな』と言った。
『だが、。お前が一番に世話になってるいる俺になんの施しもないっていうのはおかしくねぇか?』
「まぁ、ジョニーは一線超えてるから!」
『というか、ジョニザの場合は逆にに迷惑かけてるんじゃないか?』
ふんっとジョニザを鼻で笑ってフサノシンはに抱き付きながら言う。ジョニザの額に青筋が浮かんだ。
『オイ、フサ。お前、すこーし自分の年と俺の年考えろや?』
『……なんだよ。ジョニザのおっさん』
ブチ。何かが切れた。……いや、明日の天気より見当はつくが…。
『ブッ殺すッ!!』
「ジョニー!?同じフサちゃんとは雷火同士でしょ!?あと、私達は仲間なんだから仲良くしなきゃだめでしょ!?」
プンスカとでも擬音をつけても不自然ではないほどプンスカ怒る。ジョニザは渋い表情を浮かべた。
の後ろでは『ベー』っとフサノシンが舌を出していた。ジョニザの中で、『いつかフサノシン潰すッ!』と誓われていた。
リク、ソーマ、の目の前には一体の巨大な妖怪が堂々とたたずんでいる。
その目には狂気が宿り、三人とその式神を倒す想像でその頭は支配されているに違いない。
リクとソーマは大分技を使い、その気力を減らしていた。
うって変わっては、援護をするために思ったほど技を使用しておらず、式神ジョニザ同様に大して疲れを見せてはいなかった。
「オイ、コゲンタ。コイツはお前等にはもう止めさせねぇだろ」
「何言ってやがる。この程度の妖怪…!倒せねぇわけねぇだろ」
ジョニザに声をかけられコゲンタは不機嫌そうに言葉を返す。それを受けてジョニザは後ろに立つ闘神士達をクイクイと指をさした。
リクもソーマも少々行きを乱しており、は不安気に二人を見ている。
「確かにお前は元気だろうが…闘神士あっての式神だろ?フサ、お前にも言ってんだからな?」
「…なんだよ先輩ずらしやがって」
「俺はお前等の先輩だろが。……黙ってアイツ等のとこ行け」
ジョニザはフサノシンの言葉を適当に流して二人と闘神士の元に早く行くように促した。
コゲンタとフサノシンは大人しく己の闘神士の元へと急いだ。
「二人とも、リクくんとソーマくんのことよろしくね!」
向ってきた二人にウィンク一つしては、ジョニザのもとに近づいた。
「ジョニー!行くよ!」
「……こんなときまで俺はジョニーなのか…」
掛け声をかける。しかし、呼び名が相変わらず『ジョニー』なためにジョニザは返事を返さず溜息をついた。
それに納得いかないは、『返事―!』と声をあげるが、ジョニザは『ジョニザっていったらな』と言って妖怪に踊りかかっていった。
コゲンタとフサノシンが元々戦って大分ダメージを与えていたおかげで、
技を使わなくても勝てそうな勢いではあるが、それよりも気になるのは不機嫌そうな闘神士――だ。
返事を返さなければ、にはなにもさせない。
はっきり言っての存在を無視しているような状態だ。ジョニザは困った闘神士を見た。
「……。印切れ」
「じゃあジョニー、掛け声!」
「……おーう」
ジョニーと呼ばれている以上、『おうッ!』とも『了解っ!』とも返せない。
返事を返せばジョニーという名前で呼ばれることを承諾してしまうことになる。
それだけは、はっきり言って防ぎたい。故、否定の意も兼ねて小さな声で返答するジョニザ。しかし…
「ジョニー!声小さい!男で年上なら大きな声で返事――ッ!」
ジョニザの心情を一切察してくれないは、大きな声でジョニザを急かした。
の後ろでフサノシンが『そうだぞ〜』とニヤニヤして言っている。ジョニザはとあることをひらめいた。
「雷火のジョニザ!参るッ!!!」
そう言って妖怪に襲いかかるジョニザ。このまま放っておけばジョニザは妖怪の牙にかかって深手を負うだろう。
だが、が印を切れば話しは別だ。
「……ジョニーめ…上手い逃げ道考えちゃったな〜…。いつになったらジョニーと普通に呼べるのか…」
「ッ!!早くしろ!」
「ゔゔ〜!分かったよ!」
ジョニザに急かされは、諦めたように印を切る。ジョニザは技を放つ体制に入った。
「必殺!暴狼丸雷刀ッ!!」
の膨れっ面とジョニザの勝ち誇った表情が重なった。