クスリと女が笑う。それを男――タイシンは不機嫌そうに睨み、青年――マサオミは苦笑を浮かべている。その原因の女は鏡に映し出された少年を見つめて笑みを浮かべている。
「姉さん…いつまで見ているつもりだい?」
「いいじゃない…何時間見てても〜かわいいのよこの子?ガッちゃんも見ない?」
『こいこい』と手を動かしガッちゃん――マサオミを呼ぶ女――。しかし、マサオミは『いいよ』と言っての誘いを断った。はつまらなそうに『あら、残念』と言った。それを見てタイシンは呆れ果てたようなため息をついた。
「まったく…何故このような女が神流闘神士なのだ……!」
「運命よ運命。私はアンタ達と会う運命だったのよ」
「嫌な運命だ」
「私も、タイシンと会ったのは失策だったと思うわ」
笑顔で失礼な事を言われてタイシンはに食って掛かる。だが、結果はいつもに返り討ちにあい、全治一週間の怪我を負わされる事があるのでタイシンをマサオミが慌てて止めた。タイシンはマサオミに『離せ!』と怒鳴るが、マサオミは『落ちつけ!』と言う。しかし、それで落ちつくようなタイシンではない。
「いい加減にしろ!貴様は怪しすぎる!突然、神流だと言って現れ……突然去ってはまた現れ…!貴様本当に神流の闘神士か!」
「何度目かしらね、タイシンのその台詞……これこそいい加減聞き飽きたわ。もうちょっと捻りはないわけ?」
タイシンに怒鳴られたことよりもタイシンの台詞が前回と同じだったことに不機嫌そうに眉をひそめる。マサオミは『ツッコミ所はそこじゃないだろ』と心の中で思った。だが、ここに始まった大人(と言えるのか怪しいが)の闘いにマサオミは絶対に足を踏み入れることはできない。はっきり言って危険すぎるのだ。……圧倒的にが。
「全く、この流派章を何度見てるのかしら?これどう見ても神流の証でしょう」
「ゔぐぐ…だが!貴様は一度でも我等の邪魔をする闘神士を倒したことがあるか!最近我等の事を嗅ぎまわっているヤクモとか言う闘神士にも接触しておいて、式神すら降神しなかったというではないか!何を考えておるのだ貴様は!」
「あらっ、タイシンったら私がヤクモちゃんに興味持ったからってヤキモチやいてくれるのかしら?」
「 断 じ て ち が う ッ ! ! 」
嬉しそうに笑って言う。しかしタイシンは間髪いれずにそれを否定した。は相変わらず笑って『照れなくてもいいのよ?』とタイシンを誘うように言った。するとどこかでブチッとマサオミには妙に聞き覚えのある音が響いた。次の瞬間にはマガホシが降神され、タイシンがキレていた。それを見てマサオミはため息。に関しては楽しそうに笑っている。
「今ここで貴様の捻くれた信念を正してやろう!!」
「キャー、タイシンがご乱心よ〜ガッちゃんお願い」
ケラケラと笑いながら怒るタイシンから離れるためにマサオミに抱き付く。マサオミは困り果てたため息をついてタイシンを止めようと口を開く…が。
「ガシン!貴様までの味方をするつもりかッ―――!!」
「落ちつけよ、タイシン!仲間割れしていても仕方ないだろう!」
「そうよ、タイシン。私達は神流の名に選ばれた仲間なんだから……仲良く行きましょうよ」
「何を調子のいいことを言っているッ!お前が我々の団結力を乱しているんだろうがッ―――!」
「あら、私のせいにするつもり?それは聞き捨てならないわ。ケツルイ、ちょっとタイシンに私の大切さを教えてあげなさい」
マサオミに抱き付いたままは己の式神――大蛇のケツルイを降神する。ケツルイは『やれやれ』と言うかのように首を横に振るとその手から糸を放った。その糸は完全にタイシンだけを狙っており、マガホシには一切目もくれずにタイシンの体に巻きついた。
「ふふっタイシンの生け捕り完了。どうかしらタイシン?私がいれば生け捕りと拷問はお手のものよ〜」
「……要するに性悪ということだろうが…」
「タイシン、今日は呪縛プレイにしましょうか?うふふ……鳴かせてアゲルわよ。ガッちゃん、私達ちょっとながーい修業に出てくるから、あの子の監視と天流宗家の事お願いね。行きましょう、ケツルイ、マガホシちゃん」
笑顔でケツルイにタイシンを担がせはマサオミに修行に行くことを告げた。マサオミは下手な突っ込みが命取りになる事を知っている故に笑顔でパタパタを手をふった。
「離せッ!離さんかッ!!ガシン!コイツをどうにか…!?」
「黙りなさい」
笑顔ですごむにタイシンは蛇に睨まれた蛙のようになる押し黙るのだった。
『マサオミ、タイシンの奴、全治何ヶ月だろうね?』
「………」
楽しそうに尋ねるキバチヨにマサオミは苦笑いを浮かべるしかなった。