「…殿、あのままでよろしいでありますか?」
「…いや、ブリュネ。俺にあいつらをどうこうできると思うか?」
困ったように尋ねるブリュネには溜息混じりに言葉を返した。ブリュネはの言う『あいつ等』を見て確かにどうこうできる相手ではないことを確証した。
〜〜
とブリュネはヤクモとマサオミ、そしてその式神であるタカマルとキバチヨの言い争いを遠巻きに眺めていた。初めはも止めようと試みたが、どうにもこうにも本人達に聞くつもりがないようなので諦めの境地にいたり、こうなっていた。ブリュネはそう簡単に諦めるわけにもいかず、が諦めた後も何度か仲裁を試みたが、無意味に等しかった。
「仲良くなれとは言わんが…こう会う度に喧嘩されてはいい迷惑だな」
は留まるところを知らない男達の言い争いに呆れたような溜息をついた。いつもは尊敬の眼差しを向けているヤクモでも、こんな姿を見せられては、やはりまだまだ高校二年生なんだと実感してしまっていた。落ちつきがあり、実力も折り紙付き。という固定観念があるために17歳以上に見えてしまっていたが、そう簡単に歳など誤魔化せるはずがないのだ。それはマサオミにもいえたこと。いつもは人をからかうような態度をとるが、今はどうだ。感情を剥き出しにしてヤクモと討論しているその姿に学生服を着せてしまったら…。
「人間、簡単には歳というのは誤魔化せないものなんだな……」
「……そんなのでありますか?」
「ああ、あの二人を見ているとそれをいたいぐらいに実感するよ…。俺も大人から見れば大人ぶった餓鬼なんだろうな…まぁ…実際、餓鬼と言える年齢だが…」
軽く溜息をつきはブリュネに寄りかかる。ブリュネは一瞬驚いたが、わりとよくあることなので直に落ちついた。確かに、ブリュネからいわせれば、はまだまだ子供。いくら闘神士としての実力が突起しているからといって、その考えはまだ浅いと言えば浅い。まぁ、普通の中学生と比べればは多少大人なのかもしれないが、精神と言うものは歳を正しく重ねて成長するものなのだ。それを知っているのだから、下手なフォローは小さな親切大きなお世話だ。
「それが、普通なのであります。大人と子供の境目、それが今殿のある年齢…。悩み、逃げず、解決していく。さすれば、殿は自ずと立派な闘神士、いえ、大人になれるであります」
あまり笑うのは得意ではないが、自分なりにニコリと笑ってブリュネはに言った。は一瞬驚いたような表情を見せたが、ブリュネと同じく笑って言葉を返した。
「ありがとう、ブリュネ。お前の言葉のおかげで肩の荷が軽くなったよ」
「それはよかったであります」
「ブ〜リュ〜ネェ〜……抜け駆けぇ〜?」
「「キバチヨ(殿)!?」」
不意にブリュネの首筋にキバチヨが現れる。突然のキバチヨの登場にもブリュネも驚きを隠せないでいる。ブリュネに関しては、自分より立場が上であるキバチヨにいきなり、機嫌の悪い状態で現れられ、気が気ではない。
「ボク達が話してる間にと二人っきりで会話だなんていい度胸してるね、ブリュネ…」
「別に普通のことだろう?な、なに怒ってるんだ?キバチヨ……」
「…別に?怒ってないよ??がボクを指名してくれるなら」
「指名…?」
「……殿は知らなくてもいいことでありますよ…。まだ無用の知識でありますから」
苦笑しながらブリュネはに言った。それにはいまいち納得できなかったようだが、おとなしく『わかった』と言葉を返していた。それを聞いてキバチヨはブリュネに『夜道には気をつけた方がいいと思うよ』と怪しい笑みを浮かべて言った様だった。それを見たブリュネは深い深いため息をつくのだった。