「今日はどれにするかな……」
いつも行く牛問屋の前で少々メニューを眺めるマサオミ。今日も今日とて彼の食事は牛丼らしい。
…恐らく彼の血の半分は牛丼のの成分でできているに違いない。
まぁ、そんなことになっては彼は高血圧で死んでしまうだろうが。
悩むマサオミの体を不意に何かに引かれる感覚に襲われる。
『なんだ?』と思い後ろを見てみれば、嬉しそうな顔をしてキバチヨが一人の少女の元へ向おうとしていた。
 
 
 
〜〜
 
 
 
「…キバチヨの根性はすごいな」
感心したように自分の式神に懐くキバチヨを眺める。その横にはキバチヨの闘神士であるマサオミが当然の如くいた。
その顔には苦笑いを浮かべている。今二人はアパートの近くにあるスーパーに来ている。
「キバチヨの根性もすごいと思うが、ちゃんのお誘いはそれ以上に俺にとってはすごいことなんだけど?」
そうなのだ、キバチヨがヒョウオウのもとにたどり着き、
マサオミものもとに強制的に連行されるときっちりの前に立たされ、
は『昼飯奢らせろ』と突拍子なくはっきりとマサオミに言い放ったのだ。
確かにそれは、マサオミにとっては『すごい』ことだ。だが、もっとはっきり言うと『ありえない』の領域でもあった。
「そうだろうな。俺とてお前に食事を奢るなどとは思ってもみなかったよ。だが、奢られてばかりでは癪だからな」
無愛想に言い放ちは手ごろな野菜をカートに放りこんでいく。
マサオミと会話はしつつも確りいい野菜を選び、値段も手ごろなものを厳選して選んでいる。
マサオミはらしいとは思いつつもどこかで感心していた。
「…それにしても、野菜…多すぎないか?」
「普段どうせ摂っていないんだ。今日ぐらい多めにとっても問題ないだろう」
『野菜なら、食べ過ぎても悪い影響はないだろ』と言いは相変わらず肉ではなく野菜を放り込む。
マサオミはふと自分がいた場所を思い出し苦笑した。
「俺、毎日牛丼食べてると思われてんのかねぇ…?」
 
 
 
スーパーの袋は思った以上に膨らまなかった。どんどん放りこんでいたわりには実際はあまり買い込んでいなかったらしい。
「便利な世の中だな」
「……ちゃん、あまりにも若者らしからぬ言葉だよ…それ」
アパートへ向うマサオミと
曰く『機械の進化がもたらした』…いや、大げさすぎるな表現なのだが、マサオミの愛車で楽を帰宅していた。
「俺はあまり機械とかには接していなかったからな。特に車やバイクなんかは何がどうなっているのか見当もつかん」
特に困っているつもりはないせいもあり、は何故か誇らしげだった。
しかし、全然威張るところではないことはどう考えても確かである。
「じゃあ、ちゃんって機械オンチ?」
「失礼な。車などはわからんが、パソコンについての知識なら多少地…いや、前の修業場で学んだ」
不機嫌そうにはマサオミの機械オンチを否定した。
「それに、式神の力を使えば車などはなくとも生きていける」
「…それはそうだけど、殆どの闘神士は並の気力なんて持ってないよ」
「………」
苦笑いしてマサオミにもっともなことを言われは黙った。
確かに並の気力を持った闘神士など、この世の中には一摘みしかいないだろう。
現に今まで自身、自分と同等の気力を持った闘神士や術者などにあった事はない。
「だが、お前も相当な気力を持っているようだな。俺と比べたら微々たるものだが」
「それ、褒めてるのか、褒めていないのか全然わかんないんだけど?」
「…まぁ、一般論から言えば高い。だから褒めているんだ。この俺が」
「なら、明日は大嵐だな」
「ああ、洪水警報と津波警報がでるだろうさ」
「……ちゃん。そこは子供らしく否定しようよ……思いっきりさ」
嫌味で言ったはずの言葉。それをは否定せずに逆に肯定した。マサオミは苦笑いを浮かべるしかなかった。