「素敵な式神を持ってるわね」
キバチヨと話していたマサオミの耳に届いた声は艶気をふくんだ女の声。ふと顔を上げれば黒髪の女が一人。長く美しい黒髪を風で遊ばせニコニコと笑いながらマサオミに声をかけたようだった。マサオミはこの女に不思議な感覚を覚えた、自分と似ているのだけれど、似ていない。そんな感覚だ。
「あんた…誰?」
「私の名前はよ。お姉ちゃんって呼んでくれると嬉しいわ」
ニコリと笑うに嫌な気配は感じられない。いや、子供であるマサオミには気付く事ができないだけだろう。このが隠す不穏な影を…だが、それを逸早く察したキバチヨはマサオミとの間に立ちふさがった。その目には不信感がありありと見えており、そんなキバチヨの心中を察しのかは苦笑いを浮かべた。
「そんなに警戒しなくてもいいじゃない。私は子供を苛める趣味なんてないわよ?」
『あんまり信用できないんだよね。アンタを取り巻いてるそのオーラ…それがどーにもね』
「………?…ああ、ケツルイのことね。ごめんなさいね。私の式神はちょっと警戒心が強いの。だから私のことを心配してこうなってるの……これで納得してくれたかしら?」
申し訳なさそうに薄い笑みを浮かべてはキバチヨに言う。キバチヨは少々まだ納得できないようだが、とりあえずは納得したようにマサオミの横に戻った。それを見ては柔らかい笑みを浮かべて『ありがとう』と礼を言った。そのときには既にを包んでいた『違和感』とも言えるオーラは消えていた。
「私はアナタと同じ神流の闘神士。アナタをお迎えにきたの…これから始まるお芝居に招待するためにね」
「神流…?お芝居…??」
「ええ、アナタと同じ力を持つ人達の集まりよ。アナタの到着を皆待ってるわ…誰も…アナタを拒みはしない」
不意にの手がマサオミの顔に延びる。優しくマサオミを撫でるの手はマサオミの脳を正常ではなくしていった。何もかも考えるのが面倒になり、もう全てをこの人に任せてしまおうと思ってしまう。ぼんやりとし始めたサマオミを見ては妖艶な笑みを浮かべる。その笑みは『上手くいった』そう言っているようにも見える。しかし、それに気付く者はいはしない。
「アナタと同じモノが見えるの……皆アナタと同じ思いをしてきた…誰もアナタを異としないわ。さぁ、行きましょう?神流の仲間が待っているわ」
がマサオミに手を差し伸べる。マサオミは無意識のうちにの手を取っていた。はぐいとマサオミを引き寄せ抱きしめる。そして優しい声音で言った。
「これから私はアナタのお姉さん……裏切りと言う言葉を知らない本当の姉さんよ」
マサオミは初めてに会ったときの夢を見た。今更な夢だ。を姉さんと呼ぶようになってからもう既に10年が経つ。なのにこんな夢を今更見ている。マサオミは少々不信に思った。だが、どうこう考えたところで所詮夢は夢。夢に何かを求めたところで何か答えが出るというわけではない。
「難しい顔をしてどうかしたのかしら?ガッちゃん」
優しい笑みを浮かべてマサオミに声をかける。マサオミは不意に現れたに一瞬は驚いたような表情を見せはしたが、直にその表情を消して平然と笑みを浮かべた。『なんでもない』と言いながら。
「そう?ガッちゃんって直に何でも誤魔化しちゃう事があるから私、心配なのよねぇ〜……。そうだ、嘘つかないようにガッちゃんの体、仕込んであげようか?」
何かを企んだ笑みを浮かべ、は楽しげにマサオミに言った。マサオミは本能的にの企んでいる事が危険だと察し『いらないよ』と苦笑いを浮かべて答えた。はそんなマサオミを見て心底残念そうに『残念』と言った。
「姉さん。姉さんは、神流を…俺を、裏切ったりしないよな?」
「…?突然ね、どうしたの?」
「そんなことはどうでもいいんだ。答えてくれ姉さん」
「全く…そんな不安げな顔じゃ、折角の男前が台無しよ?ふふっ……。…裏切り?そんな言葉は知らないわ…私は『裏切り』を知らないんだから…」
そう言っては愛しそうにマサオミの頬に口付けを一つした。
〜アトガキ〜
【幼少マサオミと姉さんの出会い】
マサオミさん平安人疑惑が出る前に書いたせいもあり、色々設定おかしい。
完全に自分勝手設定なので、本当に色々おかしい。
取り合えず……この設定では、幼少時代マサオミさんは孤児だった。
しかも、式神やら妖かしやら、普通の人では見えない物が見えたために、施設ではイジメを受けていました。
そんなところに姉さんが現れ…攫ったっていう…。一番ヤバイの最後だね。
平安版では、平安から一緒に飛ばされて来たって幹事が一番いいなぁ…。