真っ直ぐと前を見つめるその視線。それが僕に向った時、
僕は彼女に全てを支配されたような気分になる。
そんなことは僕の勘違いに決っているけど。
でも本当に彼女の瞳には僕にはない強い力があって、
僕はそれにとても惹かれているんだと思う。
『愛しい』とか『好き』とかいう前に、僕は彼女に『憧れて』いるんだと思う。
 
 
 
 
 
〜〜
 
 
 
 
 
「ただいま〜」
「お帰り」
リクが帰って来た事を告げるとそれに返事を返したのはだけだった。
はちゃぶ台の上に電卓と家計簿とを置いて一切リクを見ずに返事を返したようだった。
だが、リクにとってはいつものこと、これがの普通なのだから気にする事はない。
さん、ソーマ君達は…?」
「ああ、二人には買い物を頼んだんだ。そのうち帰ってくる」
リクに問われては家計簿からリクに移して言った。そしてことを言い終わると直に家計簿に視線を戻した。
自分にの視線が来ることは嬉しい。だが、心拍数があがり冷静な判断ができなくなる。それは流石に困る。
リクは自分の性格を恨んだ。自分にとって好意を抱ける人と関るといつもの自分が出せない。二人きりならなおのことだ。
さん。お手伝いすること……」
「ない。……だが、もし手が開いているなら、茶の一杯も入れてくれないか?」
ようやっと見れるようになったの柔らかい笑顔。
不適に笑う表情なら何度も見たが、それよりもリクはのこの優しい笑顔が好きだった。
遠い昔に…見たことのある笑顔…。
「はい!」
こちらも笑顔で答えを返し台所へと向う。
の好きなお茶は常時ある。リクはなぜかウキウキしながら湯を沸かしていた。
 
 
 
綺麗な薄緑色のお茶が暖かな湯気を称えて湯のみの中で揺らいでいた。それをはとり、口をつけた。
「お茶を入れるのが上手くなったな。初めとはえらい違いだ」
はリクの入れたお茶に賞賛の声をあげた。リクは照れくさそうに笑って『ありがとうございます』と礼を言った。
だが、リクがこうしてお茶の入れかたが上手くなった理由というのは、他の誰でもないだ。お茶好きの
そんな彼女にとっての特別な存在になるためにはなにかを持たなければならなかった。
そのとき、知ったのがのお茶好きだった。
それ以来、リクは独学ながらもお茶の入れ方を自分なりに極め、にとっての特別な位置を手に入れたのだった。
「……お茶があるとどうしても甘いものが欲しくなるのは…女の性なのだろうかな」
心底嫌、と言いた気には溜息を付いた。
そしてその真っ直ぐな視線をリクへと不意に向けた。リクの心臓はドキリと跳ねあがる。
の視線はリクだけを捉えリクだけを見ている。それ考えるとどうして言いかわからなくなった。
「そのうち…茶菓子でも買いに行くが…リク、お前も一緒に来ないか?」
「え、ええっ、あ、はい!」
「…?何を動揺している。なんだ、俺と行くのが嫌なのか?」
「そ、そんなこと絶対ないです!!寧ろ光栄です……」
顔を真っ赤にして言うリクを見ては楽しそうに笑って
『それはこちらも嬉しいよ』と言ってリクの入れたお茶を美味しそうに飲んだ。