「コゲンタとは…上手くやれてるか?」
「…ええ、はじめはお互いに認め合っていませんでしたから、溝みたいな物はありましたが…今は仲良くやっています」
太白神社で一夜を過ごす事になった。食事も終え、一人夜風に当っていると不意にヤクモが姿を現しに声をかけた。は一瞬は驚いたものの直に表情を変えて笑顔でヤクモの質問に答えた。嬉しげに答えるを見てヤクモも薄くだが笑みを浮かべた。
「よかったよ。あいつはプライドが…いや、気性が荒いからきっと、反発しあっているだろうなと思っていたからね」
「やはりコゲンタと付き合いが長いんですね。ヤクモさんの言う通り…初めのうちは喧嘩が多かったですね」
『ツクモが仲間になってからは減りましたけど』とつけたしは苦笑いして言った。そう言われ、ヤクモは心の中で『コゲンタの性格知ってるからだけじゃないんだけどな』と思ったが表情には見せずに苦笑いした。コゲンタの性格をよく知っていても、の性格がわからなければ喧嘩するかなどはわからない。ヤクモはコゲンタと同様に、またの性格もあやふやながらも多少見抜きはじめていたのだ。
「でも、同じ式神の闘神士になるなんて…運命感じるな。それに、今の俺の式神とも契約したみたいだし」
「運命を感じる…ですか、ヤクモさんって以外とロマンチストですね」
「……似合わないか?」
「まさか、ただ…ヤクモさんの口から『運命を感じる』と引用されるとは思っていなかったんですよ。ヤクモさんは運命を掴む方だと思っていましたから」
少々不満気なヤクモに問われは苦笑いして弁護した。多くの闘いを制してきたヤクモ。そんな彼ならば、運命を甘んじて受け入れるのではなく、勝ち取るモノと認識していると思っても仕方無いだろう。ヤクモはの言葉を聞いて少々驚いた。まさかそんなことまで予想されているとは思わなかったのだ。の中の自分はあくまで『天流最強の闘神士』とまでしか認識されていないと思っていた。
「…そうだな、俺は運命を感じるなんて…ガラじゃないな」
「でも、ヤクモさんに『運命を感じる』だなんて素敵な言葉を言われたら、多くの女性は喜んでくれますよ」
「?『多くの女性』と言うことはは嬉しくないのか?」
少々不思議に思ってヤクモが問うと、はやはり苦笑いを浮かべて言う。
「私はあまり世の女性と同じ感性を持ち合わせてはいませんからね。綺麗な言葉を並べられるよりも、その方の素直な気持ちを言ってくださった方が私は嬉しいです」
「らしいな」
「それは、褒め言葉として受け取らせていただきますよ」
顔を見合わせて笑う。滅多にこんな会話はできない。だが、『コゲンタの闘神士』という名の二人の共通点が二人の会話をいつも以上に穏やかなものにしていた。ヤクモはコゲンタの闘神士であったることに感謝した。
「…そろそろ、風も出てきたし…中に入ろうか」
ヤクモが立ちあがって言うとも立ちあがる。そして空を見上げながらは言った。
「……今夜は少々冷えそうですね」
「なら、一緒に寝る?二人で寝たら寒くないさ」
「えっ…?ヤ、ヤクモさん!?」
「俺って割と寒がりでね。寒さに弱いんだ」
クスクスと笑いながらを抱きしめるヤクモ。はヤクモの腕の中にすっぽりと納まってしまい、下手に抵抗することもできずに顔を真っ赤にして口をパクパクと開けたり閉めたりを繰り返した。
『ヤクモッ!!に何してやがる!』
「昨日の敵は今日の友。……今の俺の心境は真逆だな」
突然の前相棒の登場にヤクモは苦笑いを浮かべつつを抱きしめている腕に少々力をこめた。