はじめて会ったときはただの無愛想な野郎。そっけなくて、愛想がなくて…。人として可愛げのない奴。
まぁ、男なんだから、可愛げなんてもんはいらないが。そして、次に会ったときは…
 
「…じろじろ見るな馬鹿者」
 
不機嫌そうに俺の顔を睨みつけて彼、いや、彼女は弟に手当てを急ぐように言った。
 
 
 
 
 
〜〜
 
 
 
 
 
「よっ、遊びに来たぜ」
「来んでいい。来んで」
笑顔で声をかけてもマサオミはにいつも軽くあしらわれている。
だが、はマサオミを邪険にすることはなく、ただ、皮肉を並べるだけだった。
マサオミは皮肉ばかり並べるが自分の事を嫌っているとは思わなかった。
嫌いであれば、の性格上、無視したり、ただ冷たい視線を送るだけだと予想したからだ。
実際、マサオミの予想は大方当っているだろう。
「今日は…団子な」
「……どこから仕入れてくるんだ…」
は眉間に皺を寄せてマサオミが持ってきた団子達を見つめた。
マサオミはここ最近牛丼以外の手土産を持ってここ太刀花家にやってくる。
大体はお茶菓子で、来る時間帯というのもやはり大体がお茶の時間、三時代だった。
その時間帯は大抵、このアパートにが一人でいることが多かった。
それをマサオミはいつの間にやら調べて確りこの時間帯を選んでやってくるのだった。
時間に統一性があるのは三日目ぐらいで理解したが、来る理由はにとっては全く理解できなかった。
「お茶は日本人の心だな…」
いつもならば絶対に見せることのないリラックスしきったその表情。
このときだけはごくごく普通の中学生に戻る。そんなをマサオミは眺めるのは好きだった。
誰の前でも警戒を解かなかった
しかし、ずっとこうやって訪れているうちにはマサオミに自然な笑みを見せるようになっている。
それが一種、『にとっての特別』になっているということなのだろうし、
の笑顔を独占しているとも感じられたからだ。
「本当に美味しそうに食べるな。これなら、食べられてる方も嬉しいだろうな」
「……褒められているのか…貶されているのか…」
「褒め言葉だよ」
そう言ってマサオミはの頭を撫でた。
それを気にする素振りも見せずには眉間に皺を寄せて頭を悩ませていた。