「ガシン。君はどうして………。
…そんなに間が悪いんですか?いくら僕が温厚だからってこう続けて邪魔されては…ねぇ?」
「……俺にふるな」
〜〜
ガシリとガシンの肩を掴みは笑みを浮かべながらガシンを威圧した。
ガシンはすっかりに気圧されジタバタと暴れながら謝罪した。しかし、そんなことでが許すはずがない。
滅多に怒る事のない。その分、怒ったときのしつこさといったらない。
それ故に誰もの怒りを買うような愚かな行為はしない。
だが、ガシンは間が悪い――いや、運が悪いようで何度もの策を潰していた。
「オ、俺に悪気はないんだって!全部偶然の出来事なんだって!!」
「知った事じゃありませんよ。僕の計画をおじゃんにしたのは…限りなく、果てしなく…ガシン、君なんですから」
ゴゴゴ…!と音でも立ちそうなの威圧の笑みはガシンの寿命は確実に縮めている。
心臓をガシリ!と掴まれたような感覚にめまいを覚えるが、ここで気を失っては、
明日のお日様が拝めないような気がしてガシンはなんとか意識を繋ぎとめた。ガシンも人の子。
まだ死にたくないようです。
「さぁーて…どうやってこの不始末をつけてもらいましょうか?」
「!助けてくれッ!!」
に救いを求めるのは無意味と判断したガシンは親友であるに助けを求めるが、
は我関せずといった感じでマサオミのドライブを磨いていた。
「ガシンはいい友人を持ちましたね〜。友人の罰を止めない友人だなんて…」
「…!見損なったぞ―ッ!!」
「五月蝿い。碌にドライブの手入れもしないヤツが偉そうな口きくな」
眉間に皺を寄せて冷たくピシャリと言い放つにガシンは返す言葉を失った。
あと他に助けを求められるものはいない。
タイザンに求めてもいいが、タイザンがを打ち負かせるかと問われれば、その可能性は0%です。
と間髪いれずに答えられる自信があるほどタイザンはに弱い。……いや、が強すぎるのだろうか…。
どちらにしろ、ガシンにとっては生命のピンチだ。
「………ちょっと待て。一つ言っておくが……。
ガシンに落とし前つけさせるのはいいが…。死なせるなよ」
不意にが口を開いた。ガシンは嬉しそうに表情を明るくするが次のの一言に打ちのめされた。
「ガシンはどうでもいいが、キバチヨが名落宮に行くのは我慢ならん」
「心配なのは俺じゃなくキバチヨなのね…ッ!!」
くぅ…っと拳を握りガシンは顔を背けて泣いた。
なんとなく、感づいてはいたがここまではっきり言われれては泣くしかない。
「それもそうですね。キバチヨ君を名落宮に落としてはウスベニに会わせる顔がありませんね」
に言われは困ったような表情を浮かべた。
しかし、気にかけているのはウスベニの弟ではなく式神だ。お前等、彼女の弟の事はどうでもいいのか。
「あら〜?随分と賑やかね。私も混ぜてくれないかしら?」
「!!姉さん助け…ごふっ!」
「これは。珍しいですねあなたが僕達に会いにくるだなんて…」
「ん〜まぁ、気まぐれよ。それに、色々と愉しそうな雰囲気だったし」
ニコニコと笑うと。二人とも浮かべる表情は笑顔だが、内に秘める感情はドス黒い。
実はこの二人、これでもかというほどに仲が悪い。
だが、それを一切表には見せないようにしているために、親しい者でなければ知る事はない。
ゴホウビ
「……そうだ。ガシン、君への罰はに一任しましょう」
「「「ブブッ!!」」」
発言者のと状況をイマイチ理解していないを除いた3名が思わず吹き出した。
面白かったわけではない。笑える?笑えるはずがない。
に一任など…ガシンにとっては死刑宣告にほど近い。唯一の救いは『死なない』ことのみだ。
三人はあまりに残酷な言葉の羅列に衝撃を受けて吹き出したわけだった。
「お願いできますか?」
「いいわよ?ガッちゃんにはたっぷりご褒美あげさせてもらうわ」
そう言うとは式神――大蛇のケツルイを降神しガシンを担がせた。
そして、嬉々とした笑顔を浮かべて三人の前から姿を消した。
『……こればかりは不憫だな…』
『ああ、あそこでがくるとは…。
タイザン、お前もあんまりヘマしてるとかから…ご褒美貰うことになるぞ』
ぽんっとタイザンの肩に手をおきは励ますようにタイザンに言った。
タイザンは引きつった笑みを浮かべて他だ一言。『そうならないよう、努力する』と一言言って深い溜め息をついた。
「ふふっ。これで心置きなく数日は策をめぐらせる事ができそうですね」
ただ一人満足そうに笑うのはだけだった。