「派手にやったなぁ〜……」
驚いているか、呆れているのか、それは声だけでは判断する事はできない。
だが、派手に大地を荒らした――霜花のライデンの心に何かがぐさりと突き刺さったのは確かな事実だ。
〜〜
草が鬱蒼と茂っている。見上げれば空は青い。ここは人の手が入っていない山の中。
ライデンとはこの周辺を荒らしているという妖怪を退治の依頼を受け、
その妖怪を退治するために山奥に足を運んでいた。
妖怪はそれほど強い相手ではなかった。だが、質より量とでも言うのか、量は異常なほどに多かった。
それが一種、この大地が荒れてしまった理由の一つにあげられる。
ライデンはパワーはあるが、小回りがきかない。それ故に小回りのきく小さな妖怪には手を焼く。
式神と妖怪の戦いにおいては印を切ることだけが戦い方ではない。そして、勝利への道ではない。
「でも、時と場合によるよな」
「よ、わしは真っ白に燃え尽きたぞ……わしは式神失格じゃ…」
草花があったはずの大地をいじりながらは今回の戦いの感想を述べた。
すると、それに促されるようにライデンも口を開いたが、その口から出た言葉は酷く落ちこんだ言葉だった。
は心の中で溜め息をついた。
ライデンは一度落ちこむとかなり長い間落ちこんだ状態の続く立ち直りの遅い式神だった。
まぁ、要するには責任感のある式神と言うことなのだが。
「ラ、ライデンが悪いわけじゃないだろ。
お前に指示を与えたのは俺だ。ここがこんな状態になったのは俺の技の選択ミスだ」
慌ててライデンのもとにかけより励ましの言葉をかける。だが、ライデンは簡単には『そうだな』とは言わない。
「お前の指示は間違っていない。
実際、あの技を使って戦わなければわし等の負けじゃっただろう…。だから、お前に非はない」
「い、いや、でも…」
「慰めなどいらんよ……」
はぁ〜っと盛大な溜め息をつくライデン。そんなライデンの背中を見ては困り果てた表情を浮かべる。
完全に落ち込んでしまった。
ここで自信の一つでもつけるのに巨大な妖怪でも現れてくれれば万々歳。
だが、そんな都合よく妖怪が現れるわけもなく、はどうしたものかと頭を悩ませる。
だが、妖怪退治ぐらいでしか式神に自信をつける方法をは思いつきそうにはない。
自身が戦いの場に身を置くことが多い。
その所為か式神の特性を戦いの場でしか活かせてやれないかもしれない。
そんな事を思うとの方が落ちこみたくなった。
しかし、ふとの脳裏に何かがよぎった。
「ライデン、壊したのなら直せばいい。今すぐには無理だが…ゆっくり一緒に直していこう?
式神であるお前の頑張りに絶対自然は答えてくれるよ」
俯いているライデンの顔を覗きこみ、は明るい表情で言った。
「あの妖怪達を放っておけば、もっとここの自然は壊されていたかもしれない。
でも、俺達はこの場所の為に戦ったんだ。多少の事は見逃してくれるさ」
「そういう…ものか?」
「間違った事を悔やむよりも、先を確り見据えろ。……そう言ったのはライデンだろ」
苦笑いしては言う。にそう言われライデンは思い出したように『ああ』と声を出した。
自分で言ったはずの言葉を忘れてしまうとは…。ライデンは自分の落ちこみように少し呆れた。
「すまんな。迷惑をかけた」
「いや、いつも俺の方がライデンには世話になっているし…お互い様だよ。
それに式神と闘神士は支えあっていくものだからさ」
「そう…じゃな。では、一度戻るか」
ライデンがそう言うとは『ああ』と言葉を返す。その言葉を聞いてライデンはのドライブに戻っていく。
そしては山を下りていくのだった。