「………なんだ。私に何か用か?」
「いや…、特に用はないんだが……」

 

妙に自分を見つめるにバラワカは少し困惑したように尋ねた。
だが、の返答ははっきりとしないもので、バラワカは溜め息一つついての元に近づいた。

 

「そのような途切れの悪い返事を返されて放っておけるほど私は白状ではないのだが?」
「…だよな。……あまり本気にされても困るんだが…俺とバラワカって釣合わないような気がして……」

 

 

 

 

〜〜

 

 

 

「なに…?」

 

バラワカの表情が変わる。そのの一言を聞いてその表情は酷く不機嫌なものへと変化した。
それを見たは慌てて『本気にするな!』と声をあげてバラワカに落ちつくように言った。
の必死の説得により、一応は落ちついたバラワカ。
だが、その内には完全に怒りの感情があり、を見る目は少々厳しい。

 

「それはどういう意味だ。私が納得できるように説明してもらおう」
「……、バラワカには、華やかさとか美しさとか、煌びやかさとかあるだろ?
なのに闘神士の俺にはそう言うのに無縁だから…なんか、宝の持ち腐れというか…不釣合いというか…」

 

苦笑いして答える。確かにの言う事も尤もで、は己を飾ることをしない。
故に、美しさや華やかさといった物からはかけ離れた存在だ。
だが、バラワカはその真逆の存在だった。
それは戦いの中でも健在で、先ほどの戦いでもその華麗さを思う存分発揮していた。
そんなバラワカの姿を見てはそんなことを思ったのかもしれない。

 

「そんなことで釣合わないなどと言ったのか?」
「そんなことって……。バラワカだって、本当は飾り気のある闘神士と組んだ方がいいんじゃないか?」
「馬鹿を言え、お前以上の闘神士がこの世にいるわけがないだろう?それに、お前は飾らなくとも十分に美しい」

 

少し自虐的に笑っているを見ながらバラワカは自信ありげに言いきった。
『美しい』などと生まれてこのかた初めて言われたは思考が追いつかないのか呆然とバラワカの顔を見つづけている。

 

「お前のその、毅然とした態度、強き意志の宿る瞳……。どれもそれは美しい」

 

長く蒼いの髪をバラワカはその手で愛しそう撫でた。

 

「それはお前だけが持つ美しさだ。飾った美しさなど誰でも手に入れることはできる。
だが、お前の持つ美しさはお前しか持てない物…。それは、この世で二番目に美しい……」
「二番目…?一番目は?」

 

別に二番目という評価に不満があるわけではないが、二番目と言われれば自ずと一番目が知りたくなのは人の性。
の問いにバラワカはクスリと笑い答えた。

 

「この世で最も美しいのは私とお前が戦っている姿だ。
私達の信頼が形になった物だからな」

 

これでもかと言うほどに自信満万で言いきるバラワカには苦笑する。
こんなことを言いきるのは、彼らしいし、彼だけだろうと思うとなんとなく笑えた。

 

「なんだ。私の評価に不満でもあるのか?」
「い、いや…っ。バラワカらしすぎて…な」
「……私が誉めているようのに失礼な」

 

不機嫌そうに言うバラワカ。
そんなバラワカを見ながらは『悪い』と謝るがバラワカは許すつもりがないのか、ふんっと鼻を鳴らした。
だが、機嫌が悪かったのもその一瞬で、不意にをその両手で抱き笑みを浮かべた。

 

「だが、お前のそのようなところも私が好いているところだがな」