はじめは、男だと思っていたから、優しい兄貴役程度にしか思ってなかった。でも、今は姉貴。
いや、そんな事はない。あいつは俺にとって姉貴じゃない。もっと大切で大きい存在。
だから、俺は大切だから独占したいと思うんだ。だけど、結構壁は大きいんだよな。
〜〜
フサノシンは今、の腕の中にいる。
別にが抱き付きたくて抱き付いたのではなく、フサノシンがの腕の中に勝手に入っていったのだ。
それを特にはいやがることはなく、すんなりと受け入れていた。冷たそうに見えるその雪のような肌。
だが、見かけと違っては暖かかった。今、コゲンタはいない。
闘神士であるリクと共に学校に行っているからだ。
その点フサノシンはソーマが家にいる分、と共にいる時間は断然多い。
しかし、の闘神士であるはリクの側近として使えており、リク、もしくはコゲンタの命が下れば言うことを聞いていた。
それに従い、もリクとコゲンタに忠誠を誓っていた。
故、コゲンタが『傍にいろ』と言えば、はその命を確りと守っていた。生真面目故の行動だ。
それをフサノシンは快く思っていなかった。
戦闘中に下す命令ならば兎も角として、日常で、しかもかなりの私利欲からなるその『傍にいろ』という命。
おかしいところだらけだ。
『、お前真面目過ぎ』
『え…?そうですか?まぁ…よくは言われますが…』
フサノシンに『真面目過ぎ』と言われは言葉を返しながら苦笑した。
確かに自身、多少真面目過ぎることがあると自覚していた。
真面目と言えば多少聞こえはいいかもしれないが、悪く言ってしまえば融通が利かないと同じことだ。
先輩式神であるライヒにも『少し怠けたら?』と呆れたような視線を向けられたことがあった。
『だってよぉ、白虎の奴の無駄な命令聞いてばっかりだし』
ふてくされたようなフサノシンの言葉を聞きはまた苦笑する。
『無駄ではないと思いますが…』といいながらはコゲンタの弁護をはじめた。
『コゲンタ様はいつ地流が襲ってきて、戦闘が始まってもいいように私を傍においていらっしゃるのでしょう。
無駄なご命令ではないですよ……きっと』
『、その最後の自信なさ気な『きっと』ってなんだよ』
『………』
の不安要素を一切聞き逃さずフサノシンは尋ねた。は気まずそうに視線を逸らした。
しかし、そう簡単にフサノシンがあきらめることもなく、をじぃーっと見つめていた。
流石のも諦めてしまったようだ。
『確かに…少々コゲンタ様のご命令には………』
小さな溜息をつきつつは口を開いた。
別にコゲンタの命令が嫌で溜息をついたのではない、フサノシンのその粘りに敬服したための溜息であった。
も少々コゲンタの命令の意図がわからなかったが、『何か理由があるはず』と自分で納得して
コゲンタの傍にいたのであった。が、フサノシンにいわれた事によって少々疑いの目が生まれたわけだった。
「ただいま〜」
リクの声が響く。は一瞬にしてその顔ろを青に染め上げた。
リクが帰ってきたとうことは、コゲンタも返ってきたと言うこのなのだから。
もし、先ほどの会話が聞かれていてはどうなるかわかったものではない。
『オイコラ雷火、なーにやってやがる』
『と話をしてたんだよ』
『話をするのにそんな状態にならなけりゃいけねぇのか?あ?』
『お前に指図される覚えはねーよ。あと、から重大発表があるぜ』
クククと笑いながらフサノシンはの腕の中から抜け出しての首元に抱きついた。
はそれ所ではないようで真っ青になった顔でコゲンタにことを言った。
『様やフサノシンに真面目過ぎると言われまして……その…少々砕けようかと思いまして…』
『なんだ、いいことじゃねぇーか。真面目過ぎるのもお前に負担かかるしな』
嬉しそうに笑って『頑張れよ』と言うコゲンタ。はそんなコゲンタを前にして言葉をなくした。
というか、そんな大それたことをやはり生真面目なには絶対に言えるわけがなったのだ。
『〜〜〜ッ!!』
『『!?』』
不意に立ちあがりは一瞬のうちにしてその場から消え去った。とり残された式神二人は唖然としている。
『…なに言おうとしてたんだ?』
『アンタの私利欲が入った命令は一切聞かないって言おうとしたんだよ』
『ッ!?雷火…オメェの入知恵か…』
『ふんっ、をお前ばっかりに任せてらんねーからな!』
そう言ってフサノシンはソーマのドライブに戻って行った。残されたコゲンタは不機嫌そうに溜息をついた。