ぶっきらぼうなのは、照れているから。けれど彼女はそれに気付いてくれない。
なかり、困ると言うか、不安と言うか……でも、彼女の勘も信じてみたい。
取り合えず、探りを入れてみよう…。
 
 
 
〜〜
 
 
 
にとってヤクモは闘神士としての師。なので、会う理由は必ず修業のため。
それは一種当たり前のことであったが、師と弟子と言う関係から昇格(?)したいヤクモにとっては少々当たり前では困る。
しかし、『付き合ってください!』と言う勇気もなく、というか、極普通に会話することすらできないのに告白などもっての他だ。
多くの強敵を倒してきたヤクモだが、どうもこの『恋』というものにはからっきしのようだ。
それを見るにみかねたのはヤクモの式神達だった。
しかし、サネマロやタンカムイについては恐らくある種の暇つぶしなのだろうが。
嬢との『でーと』とやらを我等がとりつけるでおじゃる』
『いつまでもそんなんじゃ見てるこっちがムズムズするからねぇ〜』
からかうように言う式神二人にヤクモは感謝していいのか、
寧ろ逆に、『やめろ』と静止をかけていいのかよく分からない心境になった。
だが、これはと近づけるいいチャンスなのだと思えば止めるどころか『もっと、とりつけて』と頼む勢いなのだが、
それでは流石に師としてはいつまでも修業をサボるわけにも行かなかったのでそれの言葉は心に仕舞っておいた。
 

 

 

「…休息?」
『そうでおじゃる。こう修業ばかりでは嬢も疲れるでごじゃろう?故に明日は修業をやめて休息をとるのでごじゃる』
『ボク的にはお弁当とか食べたいよねー』
に休息と銘打った一応、デートと呼ばれるものに誘うサネマロとタンカムイ。
興味なさそうに二人の話を聞いているようにして内心は象のように耳を大きくしての返答を待っているヤクモ。
そんなヤクモの状況には一切気付かずは不思議そうな顔をしてヤクモに問う。
「ヤクモさん。よろしいんですか?」
「………お前の好きにするといい」
突然話しをふられて一瞬驚いたが平静を装いヤクモはに言葉を返した。
は少々悩んでから答えを出した。
「では、お言葉に甘えてお休みにさせていただきましょうか」
『やったぁ〜!、お弁当には魚料理必須だよ』
『食後のでざーとも忘れてはならんでおじゃるよ』
ウキウキとした様子でに弁当のリクエストをどんどん言うサネマロとタンカムイ。
ヤクモは心の中で『この二人…弁当が目当てだったのか…!?』と式神二人を疑っていた。
しかし、そんなヤクモをよそに式神達は各々の好みをに要求していた。そんな式神達には苦笑いを浮かべていた。
そして不意にはヤクモに声をかけた。
「ヤクモさんはなにか食べたいもの、ございますか?」
「……
照れたように小さい声で言いヤクモは直にに背を向けた。
まさかここでが自分の意見を聞いてくるとは思っていなかったのだ。
なので嬉しさと恥かしさが入り乱れ顔はゆでだこよろしく真っ赤だった。
は確りとヤクモの言葉を聞き取り笑顔で『了解しました』と言った。その後ろで式神達はニヤニヤしていたという。

 

 

 

 

 
ただの食事。
しかも、別に高級ホテルのディナーにと二人きりで行くわけでもなく、
式神達とともにただ伏魔殿内で休息を兼ねた食事だと言うのにヤクモは緊張というか、落ち着くことができなかった。
いつ来るんだ、いつ来るんだ、と腰を落ち着けつつも心の中はバタバタと慌しく考えをめぐらせていた。
すると宙に襖が現れそこから大きめの荷物を持ったはヒョイと飛び出してきた。
その大きな荷物は恐らく弁当であろうが、式神達の分も含まれているためにその量は結構莫大だ。
「お待たせいたしました。コレを運び出すのに少々手間取ってしまって…」
「…いや、気にするな。元を正せばサネマロとタンカムイが頼みすぎたんだろう?」
謝罪するにヤクモは霊体となって後ろをふよふよと浮いている遅れの根源の根源をみた。
二人は『なんのこと〜?』とでも言うかのように視線を逸らしてからに話しをふった。
『さ、さぁ!早く嬢の作ってきた弁当を食べるでごじゃる!』
『そうそう!ボク、お腹空いちゃって空いちゃって』
苦笑いしつつに言うサネマロ達。
そんな彼等を見ても少々苦笑いを浮かべたが、『さっそくお弁当を広げましょうか』と言って荷物を地に降ろした。
そして弁当をつつんでいた包みをとるとご立派な重箱が姿を見せた。
それにはヤクモも式神達も驚きの声をあげ重箱に見入った。
は『重箱と中身が釣合っていればいいんですが』と言って重箱を広げた。
そこにはきっちりと色合いまでも考慮されたおかず達が整理整頓されて入っていた。
流石にここまでとは思っていなかったらしく全員が全員、驚いていた。
『予想以上でごじゃるな…嬢、今すぐにでも嫁に行けるでおじゃるよコレは…』
サネマロがの作ったおかずをつつきながら突拍子のないことをポロリと洩らした。
ヤクモは『嫁』と聞いて、別に自分が娶るわけでもないとに恥かしくなってゲホゲホとむせた。
は心配そうに『どうなされました?』と尋ねてくる。ヤクモは顔を伏せて『なんでもない』と極力、平然と答えた。
『本当だね、これって花嫁修業ってやつ?』
「まさか、ただの生活上必要な技能だよ。それに私を娶ってくれるような人なんてそういるものではないしね」
は『違う違う』と苦笑しながら花嫁修業説を否定した。
『じゃあ、先客がいないんならヤクモが娶っちゃえば?』
ニヤニヤとしながらタンムカイがヤクモに話しをふる。
やっと先ほどの『嫁』が抜けたかと思えば今度は『娶れ』ヤクモ達は式神達、というかサネマロとタンカムイに殺意を抱いた。
「タンカムイ、ヤクモさんにも好みってものがあるでしょう。私のような乱暴者ではヤクモさんと釣合わないよ」
『そうかなぁ〜?結構お似合いだと思うけど…で、当のヤクモはどうなのさ?』
『告白しちゃえよ』そうタンカムイの目は言っている。
というか、企んだような黒い笑みがタンカムイの表情に浮かんでいた。

 

 

 

「俺は……さえよければ………」

 

 

 

ほぼ聞こえないような声で言うヤクモ。
式神達はヤクモがなんと言ったか分からず頭に疑問符ばかりを浮かべている。
しかし約一名のみが確りとヤクモの小さな意見を確り聞き取っていた。
「お世辞でも嬉しいですよヤクモさん」
そう言っては嬉しそうな笑みをヤクモに向けた。
その笑顔を見てヤクモのは顔が熱くなるのが手に取るように感じられた。