部活動をしていくうえで、必ず必要になってくることといえば、ミーティング。
何気に具体的な活動内容のない部活動盛上げ委員会こと、
――助っ人部もその例に漏れず、律儀にミーティングを開いていた。
「では、第38回『助っ人部、ポロリもあるかも!学生だらけのミーティング』をはじめます!」
しかし、部員の集まりが極端に悪いのはお約束だった。
 
 
 
〜助っ人部のミーティング〜
 
 
 
「ほんとにうちの部は集まりが悪いなぁ」
さして苦にもしていな風に言うのは助っ人部の部長であるビャクヤ。
ビャクヤがぐるりと辺りを見渡しても誰一人として人はいない。
ようするには、助っ人部のミーティングの集まりはいつも通りに最悪ということだ。
「俺が無理矢理を連れてこなかったら俺、一人でミーティングやんなきゃなんなかったな!」
「それ既にミーティングじゃないでしょう…」
呆れ返った声は、唯一助っ人部のミーティングに参加している助っ人部部員のだった。
しかし、がこのミーティングに参加しているのも、
ビャクヤ本人が言う通りに、ビャクヤが強制的に連行してなんとか確保した結果だ。
もちろん、としては、
これまた強制的にビャクヤに入れられた助っ人部のために時間を潰すつもりなどなく、さっさと帰るつもりだった。
だが、それをビャクヤの用意周到な罠に阻止され、そのままビャクヤに引きずられたことの末路が現在というワケだ。
最近は、逃れる気力もうせて大人しくビャクヤの迎えを待つこともあるほど、
はこのミーティングの度にビャクヤに捕獲されていた。
「まっ、俺が一人でミーティングやることなんて、この先ないだろうけどな」
「(あ゙ー…、もっと真面目に勉強してこの人より先に卒業すればよかったなぁ……)」
、ぼっーとしている暇はないぞ!早速ミーティング開始だ!」
「はいはい」
たった二人でミーティングが成立する訳がないとは思いつつも、
はビャクヤに言われた通りに、いつものミーティングの準備をはじめた。
部室にあるパソコンを起動しては報道部が持っている情報をネットワーク上から引っ張り出した。
は報道部の部員ではないが、報道部と連携を組んでいる放送局の局員だ。
それに、にそれを命じたビャクヤは報道部の人間なので、一応問題はない。
パソコンの画面に映し出された情報を見ながらビャクヤはいつになく真剣な顔で呟いた。
「やはり…、ウチの部には彼がいなくてはなりたたないな…」
パソコンに映し出されているのは、第6学年に在籍している神崎タクマの情報。
は画面をスクロールさせて詳細を映し出した。
「神崎タクマ、第6学年陰陽師科に在籍。
成績並々優秀。しかし、授業に参加する事は少ない。そのため、どちらかというと、問題児に分類される。
……あと、妹が一人いるそうですね」
「やっぱりタッちゃん先輩には、是非入部して欲しいなぁ…」
「――この場では取り合えずそのニックネームについては深く追及しませんが、
間違っても本人の前では呼ばないでくださいね
難しい顔でタクマにミスマッチなニックネームをつけて呼ぶビャクヤに、は無表情でビャクヤに忠告した。
それを聞いているのか、聞いていないのかは分からないが、に更に情報がないか尋ねた。
「ビジュアル、学力、運動能力。そして、何気に家庭的というスキルで女子の反応はかなり良好。
調べていないので正式な組織体制を組んでいるかは不明ですが、ファンクラブがあるという情報が多数あります。
あとは……、特に気になる物はないです」
「そんだけ条件はそろってんだから、
もっと楽しくこの学園で楽しくやれると思うんだよ、この人は。なのに……」
惜しいものでも見るかのようにビャクヤはぼそりと呟いた。
いつも、自分勝手に楽しんで毎日一人で楽しくやっているように見えるビャクヤではあるが、割りと人のことを見ているようだ。
そんな意外な一面を見せるような一言には不覚にも少しビャクヤを尊敬しそうになった。
 
 
が、
 
 
「なんで、俺みたいにあんな事とかこんな事とかしないわけ!?勿体無い!!
アンタみたいな人が増えたら俺死ぬよ
「ん?、なんか言ったか?」
「言ってませんよ…」
まともな一言が最後まで続く訳もなく、思いっきりビャクヤの口から出てきたのはいつもの調子の馬鹿げた台詞。
流石のも呆れるよりも先に本音が出てしまうほどだ。
しかし、ご都合よろしくビャクヤには聞こえていなかったらしく、は呆れながら話を濁した。
「なぁ、どーやったらタッちゃん先輩がうちの部に入ると思う?」
「…はっきり言うと、神埼タクマがうちの部に限らず、どの部活動にも入る可能性はまずないです。
妹さんのことがあるので、さっさと家に帰りたいらしいですし」
がもつ独自の情報も含めて考えるとこれが自然な答えだ。
タクマは人とかかわる事は滅多にない。対人恐怖症ではないが、タクマは人間不信だ。
そんな彼が態々人と係わり合いを持たなくてはならない部活に参加する訳がない。
「ふむ…、妹さんかぁ……」
待てい。興味を示すのは、そこではなく可能性の部分でしょうが」
が興味を示して欲しかった――というか、ビャクヤが諦める材料になればと持ち出した話題にビャクヤは食いつかず、
別の話題に食いついたビャクヤには不機嫌そうな視線を向ける。
ビャクヤは、そんなの視線を受けながら言葉を返した。
「俺は『可能性』に興味はないの」
何所から沸いてくるのかは分からないが、その表情から窺えるのは自信と楽しげな表情だった。
「馬鹿なヤツだ」と思いながらもは、その馬鹿に言いように掴まっては、
いいように遊ばれている自分のことを思い出して嘲笑うかのように鼻で笑った。
「でも、神崎タクマの件とはイコールになりそうにないですけどね」
「だいじょーぶ。白光導師のウリは、可能しかないことだからよ。
さぁ〜て、どうやってタッちゃん先輩にアタックしようかなぁ〜」
「(……この台詞だけ聞くと、物凄い変態だなこの人…)」