陰陽学園。この学園は実力ある闘神士などを育てるための学び舎だ。
しかし、だからといって集まる人間全てが優秀というわけではない。
実力に関しては兎も角だが、性格的なものはどうしてもあまり重要されないのはしかたないことだ。
「なぁなぁ、俺達に付き合えよ。たまにははめ外そうぜ?」
勉学や修業を二の次にして遊び惚けるものは意外にも多い。
まぁ、そういったものは大抵何年か留年したり、途中で学校を止めていく、最終的には伸びない者が多い。
だが、未だにこの学園にいる以上は、指導の対象になる。
学園の自体の質を良好なものに保つためにも、ある程度の実力行使は必要だと思う。
暴力はいけないものだと言われてはいる。
しかし、この学園においては体罰はかなり容認されている。
ということは、「学園の治安維持」のためであれば、多少の暴力沙汰も黙認されるだろう。
もし、こでれ停学にでもなったら、某国語教師達は一発で謹慎処分だ。
「そんな事を言っている暇があったら、補習のひとつも受けなさい」
そんな事を思いながら少女は不機嫌そうに男子生徒を睨んだ。
 
 
 
難儀な妹
 
 
 
「派手にやったな」
「お嬢様…」
言いよってきた男子生徒に「指導」を加えた女子生徒――寺恩リリに声をかけたのはサボりの常習犯であるだった。
はややリリの行動に呆れているのか滅多に変えることのない表情を少し歪めていた。
「非があるのは彼等です。私はすべきことをしたまでです」
呆れているを尻目に、呆れられていることが不服らしくリリは不機嫌そうに弁論した。
本人の言う通りに、これは悪いことではない。今、リリが「指導」を加えた生徒は、比較的成績の悪い生徒だ。
放っておけば留年せざるおえない生徒に対して勉強するように指導することが悪いこととは言えないだろう。
だが、その点についてはも同意するところだ。
そう、が呆れているのは、リリが生真面目に生徒に指導をしていることではなく
――リリが男子生徒を相手に、実力行使で指導を行ったことに呆れているのだ。
リリは女子生徒。だというのに勇敢というか、勇猛と言うかで、
怯みもせずに男子生徒に鉄拳制裁を加えるリリには、流石のもリアクションに困る。
「以外に短気だからな、リリは」
「なっ…!お嬢様!私は短気ではありません!あんな兄と一緒にしないでください!」
「(……リリの方が短気かもしれない)」
の横で文句を言うのはに仕える執事一家の長男であるユウゼンの双子の妹なのだ。
二人きりの兄妹だというのにその仲の悪さは天下一品で、
同じく二人きりの姉弟であるとしては非常に不思議なところだ。
だが、仲の悪い原因はリリだけのことであって、
ユウゼンはどれほど罵られてもリリを嫌っている節は見受けられなかった。
また、リリは極度の男性恐怖症で、男を見ると殴らずにはいられないほど、男という男が苦手なのだった。
幸い、自分寄り年下の「男の子」や父親や祖父ぐらいの年代になると大分抵抗がついたらしく、
殴らないようになったが、同年代の男となると有無言わさずして殴っていた。
おそらく、兄であるユウゼン嫌いもこの男嫌いが最も大きな原因なのだろう。
「大体、なぜ私と兄さんが似た性格をしていると思われるんですか!」
「えーと、双子…だからかと……」
「双子といっても、私達は二卵性双生児なんですから性格が似か寄るわけがないでしょう!
それに、外見だって双子だからといって、必ずしも似ていいる訳ではないのですから、
双子=以心伝心などという非科学的且、気色の悪いことをいわないでください!!」
「いや、それは俺の意見じゃなくて、世間一般の理論だろ…」
憤りをぶつけるかのようにに言葉をぶつけるリリ。
はリリのこと発作ともいえる行動にはそれなりになれているらしく苦笑しつつも、
律儀にはリリの言葉に適当な相槌をいれていた。
「お嬢様?なにをして――って、リリもいたのか」
「っ!?に、兄さん…」
タイミングが悪い。そんな事を思いつつはリリの兄であるユウゼンに視線を向けた。
先ほど、リリは以心伝心を完全否定していたが、
どうやらそれなりに繋がっているらしくユウゼンはリリの様子を見てある程度の様子を把握したようだった。
というか、単に毎度のことなので馴れてしまっているだけなのかもしれないが。
ちゃ〜ん!俺とお茶でもして帰らないか〜い!」
そこに飛びこんできたのは聞きなれた男の声。
この声は、ユウゼンの親友の――ナンパ師のマサオミだ。
に抱きつくつもり満々らしく、嬉々として達の方へかけてきているが、
このままマサオミがに抱きついた日には、悲劇が起きるだろう。
その悲劇を阻止しようと、一応は思ったものの気付けばマサオミはに抱きつく寸前。
そして――
 
 
 
 
 
バキッ
 
 
 
 
 
ガスッ げし ガッ べし ずがっ ゴンッ
 
 
「……お嬢様、このままだとマサオミが休学するはめになるのでお先に失礼します」

 

 

ばきっ ぼき ガコッ どかっ ダンッ

 

 

「ああ、マサオミにお大事にと伝えてくれ」

 

 

ごす ガンッ メキッ ぐきっ めきょ

 

 

「失せろ変態ィいいぃぃぃ!!」
 
 
 
「(…難儀な体質だよな)」