学生の敵、テスト。それは、この学園の生徒においても同じである。
そして今、この学園はテスト週間真っ只中である……。
テスト週間中の図書館。いつもはヤクモやマサオミ、コウヤといった人物が来ない限り人が少ない場所…。
しかし、今はあちこちに生徒がごった返している。資料を探す者、問題演習を解く者、はてにはナンパする者……。
そんな中、吉川ヤクモは勉強をしていた。
周囲のざわめきを物ともせずに集中してはいるものの、眉間にはしわを寄せている。要するに分からないのだ。
だが、赤点はとりたくない。もしテストで赤点をとれば、地獄の補習+追試である。
いつもはコウヤやナナのお陰で赤点をとらないのだが、今回は全教科の範囲がやたらと広い。
コウヤやナナに頼るわけにもいくまい、そう考え、一人勉強に明け暮れるが…
「…全然わかんねぇ」
ヤクモはもともと勉強が大の苦手である。
自ら学ぶのは好きではあるが、この様な形で学ぶのが駄目である上に、範囲が範囲である。やる気も起きない。
「……先生に聞いてくるか」
暫くしてヤクモは立ち上がり、教務室に行こうとした時、
「あらヤクモさん、どうされました?」
「」
神泉に声をかけられた。
ヤクモとは同い年だが、学年の上ではの方が二学年上である。
そのもテスト勉強なのか、両手には参考書を抱えている。
「先生に分からない所を聞こうと思って」
「それでしたらお止めになられた方が良いですよ。私も先程行きましたが、一時間位は待ちそうでしたので」
用件を告げると、はヤクモに忠告する。その忠告を聞くと、ヤクモは再び座り机に突っ伏した。
そんなヤクモを見ては苦笑しながら、提案してみる。
「サネマロさんに教わってみては?学問を司りますし」
「サネマロはスパルタになるからなぁ……」
暗に嫌だと言うヤクモに、
「でしたら、私がお教えしましょうか?」
「え?いや、遠慮するよ。だって勉強中だろ」
「大丈夫ですよ。後でやりますし」
むしろヤクモの方が心配だと言われると、何も言えない。それでも渋るヤクモにはこう言う。
「私はサネマロさんに後で教わりますから」
良いでしょう?とに微笑みながら言われては、もう逆らえない。
「……じゃあ、頼む」
「はい」
「ここの所がよく「ちゃーん!今日も可愛いねー!」
早速勉強開始と言うところでヤクモの声を遮り、後ろからに声をかけ抱きつこうとする輩が一人。
言わずと知れた大神マサオミである。しかし、マサオミのもくろみは見事に失敗した。
キンッ、ドサッ、グシャ。マサオミの上に(確信的に)降りた“白帝”猩稀の手(むしろ足?)によって。
呆然とするヤクモ、何事も無かったかのようには尋ねる。
「あら、猩稀。どうしました?」
「ん?ああ、本を返すついでに大神が五月蝿くてな、黙らせた」
「そうですか。しかし猩稀、貴方は仕事中では?」
「すぐに戻る。、本は渡しておくから、後はよろしく」
「……ちょっと待て、白帝」
「何だ、大神。に手を出したらお前、確実に名落宮行きだぞ」
「…え゛マジで?」
「ああ」
よかったな、名落宮行きにならなくて。
さらりと暗にほのめかす猩稀に対してマサオミは顔を青ざめながら更に問う。
「うー…じゃ、何でヤクモはいいのさ?」
「俺はお前みたいな行動はとらん」
「同感。後、は五月蝿い奴は嫌いだしな」
「ええ。騒がしいと心を落ち着けにくいので」
マサオミの質問に対し、ヤクモ・猩稀・がそれぞれ答える。
マサオミはショックを受けたようで、立ち上がることできない(まだ猩稀が上に乗っているせいでもあるが)。
「……やべ。そろそろ戻るぜ」
「そうですか、お気を付けて」
「ああ。そうだ、吉川、大神を押さえ付けておいてくれ」
「わかった」
頼んだぜ、そう言うとキンッとした音の後に猩稀は消えた。
「……行ったみたいだし、改めてここの所を教えてくれ」
「はい。ここはですね…」
「なーちゃん、俺にも教えてー?」
「さっさと失せろ、マサオミ。それとも究極必殺でも受けるか?」
「………慎んで御遠慮申し上げます」
さりげなく零神操機を出してファンが黄色い声をあげるような笑顔で脅すヤクモを見て、
スゴスゴとその場から立ち去るマサオミを見ては言う。
「よろしいのですか?」
「別にいい。あいつに関わるとロクなことが起きない」
「……そうですか」
まぁヤクモが言うのだからそうなのだろう。はそう思い、ヤクモに勉強を教える。
………周りの視線が刺さって痛いが。
それは明らかにやヤクモに対する嫉妬だが、
何と言うか、二人の周りの空気が周りを圧倒していて、誰も口に出せない。
そんなことにも気付かず、
「……よし。一通り、分かった。ありがとう、」
「どういたしまして。分からなかった所がありましたら、遠慮無くお聞きしてくださいね」
「分かった。じゃあ約束通り、サネマロに教えて貰ってくれ」
「はい。ではまた」
「ああ。また」
の微笑みを見て、ヤクモは微かに頬を赤らめてすぐにサネマロを降神すると、その場から立ち去った。
ヤクモが頬を微かに赤らめたのを見て、は「?」をサネマロは微笑んでいた。
「どうされたのでしょう?ヤクモさん」
「まぁ様もそのうち分かるのでおじゃる、多分。所で、どこが分からないのでおじゃるか?」
「ああ、ここがよく分からないのですが…」
「そこはでおじゃるな……」
その後、何事も無かったかのように、はサネマロに勉強を教わった。―――そして、一週間後のテスト返却日。
ヤクモは今回のテストで高得点を叩き出し、教師及び周りを驚かせた。
一方のもいつもの通り、高得点だったとか……。
はい。遅くなってすみません。
猩稀「遅すぎだろ。その上、俺かなり出てないか?」
仕方がないよ。君の契約者出すと収集つかなくなるから。
猩稀「……あ、そ」
さて今回、ヤクモが頬を赤らめたのは、別にに気があるからではありません。
可愛い子に微笑まれれば、いくらヤクモでも頬を赤らめるでしょう。
ちなみに、お気付きでしょうが、文中「はてはナンパをする者」は言うまでもなくマサオミです。
彼以外には有り得ません。
後、猩稀が契約者なしにあの場に出てきたのは、“五帝”の特殊能力の一つです。
他にも……
「…そろそろ終りにしませんか?」
あ、そうだね。こんな文を最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
そして、名前だけですが希沙斗さん宅のコウヤ君をお借りしました。
そちらもすみません&ありがとうございました。