自分と同じ色の長い髪をくしで梳き、綺麗にまとめた山吹茶色の髪をいつもとは違う高い位置で括る。 前を向いた先――鏡に映っているのは、自分とよく似た顔。でも、今となっては昔ほどは似ていない。 弟の髪を整え終え、弟に「終わったよ」声をかけると、弟は「ありがとう姉さん」と言ってスッと椅子から立ち上がる。
「…ね、姉さん?」 「……おっきくなったね」 「…………まだまだだよ」 「……ぇ、まだ大きくなるつもりなの?」 「…それは……そう、だよ…。男子としては、低い方なんだから…」 「……」
何処か不貞腐れた表情で、弟は自身の身長を低いと言う――…まぁ確かに、親戚や友人たちと比較すれば、弟の身長は高い方ではない。
「…それに――……」 「………ん?」 「……ううん…なんでもないよ――…ただ、あんまり大きくなると、姉さんと姉妹舞ができなくなるなと思って」 「…いや、うん……それはそうだけど――………お前、いつまで女装するつもりなの……」 「ん、それは――姉さんに望まれるならいつまでも、だよ」 「………いやいやいやいや、私に変態要素付加しないでよっ」 「えー?自分にエプロンドレス着せて喜んでたのは姉さんなのに」 「いつの話だよっ」
からかいの言葉に「がう」と吠える私――を、見る弟の顔には楽し気な笑みが浮かんでいる。
「姉さん」 「…」 「姉さんは姉さんだよ。自分にとってただ一人の大切な――ね」 「……………はぁ……そーゆーセリフ言われてる時点でダメだよねぇ……」 「それは――自分の察しが悪いだけだよ。…黙ってた方がよかったかな」 「…ぁあもうこのできる弟は〜〜〜〜」 「ぇえ〜?」
励ましている――ようで、嫌味を言っているようでもあって―― ああもう本当にこのできた弟には参ってしまう。
「――双子
弟を抱きしめながらもにゃもにゃと考え込んでいる――と、 姉として――以上に、
「――行こうか。幸福の押し売りに」 「ふふ、押し売りとは人聞きの悪い――慈善事業ですよ、コレは」 「――…いえいえいえいえ。 「「えー」」 |
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そういう 私の ――とはいえ、今日の奉納舞はかなりの出来だったと自負している。 今までとは毛色の違う「
「(ズルいよ、なぁ……)」
既にほぼほぼ自宅扱いになっている 舞を奉納した数時間後、ぐえと倒れ込んだ弟。 まるで今際の時を迎えたかのような弱々しさで微笑む弟の「大丈夫」の言葉に、説得力なんて毛ほどもなかった―― 甘やかす方が悪いのか、甘やかされる方が悪いのか――それは、私の場合は後者が悪い、だろう。 …ああ、どうして私はこんなに甘ったれなんだろう。
「…所詮、 「っ…?!」
私しかいない部屋に通るのは、私が誰よりもよく知っている――私の声。
「私はいつだって過ちを犯す。私が私である限り、それはいつだって、どこだって――揺るがない。
ズンと、心臓を撃ち抜かれたような衝撃が全身に奔り――思わずその場に崩れ落ちる。 どうして、どうして、私なんかのために――
「…それは違う。私が私だから――私が
…ぐうの音も出ない、とはこのことだろうか。
「…私なんて、最初からいなければいい――…… 「ッ――」
背に突き刺さった殺意に半ば反射で振り返れば、 ただ漠然と、 だから――
「ぁ゛――ぅンーーー!?!!?」
アレー?!なんか落ちてるんですけどォー!!? |
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■あとがき 思わず初めてしまったtwst連載です。 いつものよろず主が、いつも以上に大暴れする予定です。 読み手さんによっては核爆弾級のアレでソレになると思われるので、皆様ご注意くださいませ。 |