本当に、凄いと思う――この子の、肝っ玉の強さは。
「やい!バケモノ!コっ、ココ、コッチなんだゾ!!」 「グルルル……!カエレ…カエレェェエエエ……!!」 「――ここまでおいで〜!」 「グウッ!?コッチモ、ドロボウ…!ワダサヌ…!イシハオデノ…オデノォ…!!」
グリムくんと二手に分かれ、顔のない怪物を挑発するのは――ユウさん。 …それが、本当に――心の底から素直に凄いと思う。 力を持つ者が
「……勇敢と無鉄砲は紙一重――
怪物と坑道の入り口の間に、程よい空間が生じる。
「――お願いします!」
ユウさんが
「オッケーお任せ!――いくぜ!特大突風!」 「アーンド!グリム様ファイヤースペシャルー!ふぅ〜な゛あ゛〜〜〜!!」
――怪物は、トラッポラくんの 単体では効果が薄かったけれど、風と炎の相乗効果によって火力を増した二人の魔法は、怪物に対して明らかなダメージを生む。
「――いでよ!大釜!!」 「グォァアアア!!?」 「(…なんとシュールな絵面……)」
スペードくんの召喚(?)した黒く大きな鉄製の大釜の下敷きになった怪物。 ――とはいえ、こういう手合いは追い詰めてからが本番。今に安堵を覚えるのはおバカの所業だ。
「今のうちに行くぞ!」
スペードくんの掛け声に全員が頷き坑道へと駆け込んで行く。
「あ――」 「はい黙る」 「むぐっ」
無言で粛々と魔法石の状態を確かめ、これと決めた魔法石をユウさんに持たせて、簡単に最後の段取りを確認する。
「とにかく逃げます――追いつけない 「ぅーわ…最後の最後にめっちゃ物理……」 「で、でも、逃げるが勝ちっていうし…!」 「…言うか?」 「いや、逃げたら負けだろ」 「 「「……」」
言葉の壁――というよりは 意識を改めるにも至らない会話に空気が緩む――が、それはそこまで悪いものじゃない。
「では立案者さん、号令を」 「ぇ、ぇえっ…?!っぇぇ…と………! 「「「「…………」」」」 「ぇっ……あ、のっ…わ、私なにか変なこと……?!」 「いや…なんと言うか……」 「…オマエ……変なところで肝が据わってるんだゾ…」 「…いえいえ、変ではまったくないんですよ? 「――ホント、お前んトコの遠足どんだけハードなんだっつーの!」 |
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行きはよいよい帰りはこわい――…いや、行きの時点で「よいよい」じゃなかった。 行きの時点で「こわい」濃縮三倍のこの旅路、 …とはいえ、最悪の状況には陥ってないんだから、今はそれで十分だ。
「オデノ!!オデノ!オデノイシダァアアアアア!!!!」
酷い穢れを含んだ怪物の咆哮は、怪物の 怪物にとっての
「(……これを、一人で撒くのは難しそう…か、なーぁ……、…かといって、早々に救援がくるとも……なぁ…)」
意を決し、鉱山から飛び出せば、怪物もまた逃げる 学園に帰ることさえできれば、あとはおそらくどうとでもなる――もし仮に、あの怪物がついて来てしまったとしても、
「――…荒事の、…適性があった――……のか、ねぇ…?」
――うむ。 魔法を使えない身でしんがりを――一人残ることを決めた、なんて無謀なことをしている、楽観視が過ぎる――かもしれない。 私の中途半端な力じゃ打倒なんて程遠い話だけれど、足止めとその後の逃亡に関しては、運さえついてくれば
「――納得して死ぬ、でしょ」
――ま、端から死んでやるつもりも無いけどね!
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■あとがき 夢主が、ある意味で現代人とは思えないほどの勇敢さを発揮しておりますが、所詮一般人ではないというか…(苦笑) たぶん過去に誘拐未遂とかなんとかの経験があって、こういった緊迫した空気感に免疫があるんだと思います。 その時の恐怖感とか無力感とかが、夢主が(物理的に)強くなる原動力だったんかもしれません(苦笑) |