学生たちの笑い声が響く昼休みも過ぎ、午後の授業が開始となって校舎が静けさを取り戻した頃、
「……リュグズュール?」 「そうです。ここにいる間は本来のファミリーネームではなく、リュグズュールと―― 「はぁ…?これは睨むでしょう…?意味…考えてくださいます…?リュグズュールって………!」
――リュグズュール。 …それに我が
「…あなたの言う『意味』はわかりませんが、 「……それ、は…理解しました――けど、意味が解らない――とは… 「…そうですね、リュグズュールの名に、意味はありません――が、 「(……逆にドンピシャなのでは?
クロウリーさん曰く、「リュグズュール」は神話における王の名――であって、それひとつで意味を成す単語、ではないそうな。 やっていることはセコいが、成功すれば致命的な打撃となる嫌がらせだけに、
「お名前の話は、納得してもらえましたか?」 「…はい。……畏れ多いですが、リュグズュールの名、お借りします…」 「そんなに畏まる必要はないと思いますけどねぇ?
古い記憶を引っ張り出しているような風でクロウリーさんは「古い話」だと言う――
「 「!」 「本来我が校は、闇の鏡に選ばれた者の入学しか認めません。 「…………グリムくん…もしくは兄さんと 「ええ、その通り――話が早くて助かりますよ」 「……」
ニコーっと笑顔で答えるクロウリーさん――に、若干の頭痛を覚える。 …まぁ、名門校だからとお高く留まって、新入生を確保できなかったり、 ――とはいえ、この学園に生徒として通えるというのは願ったり叶ったり。 … |
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とりあえず、ナイトレイブンカレッジへの入学――は、保留にした。 クロウリーさんには「なんですと?!」と驚かれたけれど、「ファンタピアの再開の方が重要」と答えたら、 ――ので、ファンタピアのことが落ち着いたら是非入学させて欲しい―― 名前の話、入学の話――クロウリーさんが話したかったという話に決着がついたところで、 無人のメインストリートを進み、食堂の前を通り過ぎ、鏡舎を横目に――ひたすらに歩く。 そんなどーでもいいことを思いながら橋を渡ると、すぐに見えてくるのは二棟の温室。 ガラスの壁の向こう――魔法薬学の教室では、
「……ぅわ…ここまで臭う……」
子細は見て取れない距離にあるにもかかわらず、失敗によるものだろう異臭は風に乗って私の鼻にまで届く。 イヤな臭いに「ぅえ」と思いながら、逃げるようにオンボロ寮を目指す――その途中、ふと目に留まったのは植物園。 ファンタピアで上演された ただ、今すぐ手を付けなければどうしようもなくなる――ほど、切羽詰まってはいない。
「…あ、コレ、ダメになる
穏やかに差し込む日差しに、柔らかな温かさ。 ――ただ、そういう意味でなくても
「(見たことない花がいっぱい……)」
魔法の世界のなんだから――と言ってしまえばそれまでだけど、こうして実際に目にしてしまうと未知の植物に好奇心が止まらない。
「っ…だとしても…!人様が手塩にかけたモノを手折るわけにはァ……!」
綺麗な花を前にして、それを 花を扱う者の端くれとして、花を育てる人には敬意を―― あれは誰かの育てた大事な(のかもしれない)花――
「――おや、あなた様は」 「っ――………ぅん?」
ふと後ろからかかった声に反射で振り返ってみれば、
「みみ………」 「…あ゛ン?」 「おやおや、獣人は『はじめまして』のようですな―― 「っ、ぁ…す、すみません…!不躾にジロジロと…」 「……――
庭師の そして彼らの間で何らかの取引が成立したのか、
「ぅぅ…申し訳ない……」 「いやいや、彼は誰に対しても『ああ』………ではない、か…。 「………ぇ?」 「はははは、色々な要因が重なった――といったところですかな」 |
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■あとがき イデアさんに続いて、レオナさんとも接点確保です!……接点っていうより、ただ「会った」ってだけですが…(苦笑) そしてここからしばらーく…最悪二章までレオナさんのご登場はない気がします…(遠い目) ……その分、フェアガラ連載でがっつり絡むことになるからいいよね!いいよね!…ただ、それこそ二章終幕後、のような気がするのですがァ……(滝汗) |