ユウさんとグリムくん――と、 そして大食堂で合流した7人の寮区長の手を借りて、
「……しかし本当に伴奏は不要、なのですか?」 「 「……呆れた自信ねェ…」 「これを失ったらあとは何も残らない――くらいの、 「いやいや〜お嬢には美貌っつー武器があるじゃねーか。 「…いえいえ、芸能界なんてとんでもないとんでもない…芸能界と 「フフンっ。さすがアタシの見込んだ子ネ!わかってるじゃない―― 「あー?意識が低いんじゃアねーんですよぉ〜。庶民派なの、しょーみーんーはぁ〜」 「…まぁ、イレーネ殿と比べれば、 「アん?んだよノラン。オレ様の演奏技術にケチつけんのかよ?」 「…演奏についての文句はないが……もう少し出演者であるという意識を持ったらどうなんだ…」 「……確かにハーさん…演劇でも兼任で出演することもあるし……」 「………というか
なにやら外見――身だしなみ的なことでやいやいと盛り上がる寮区長たち――に、思わず酷く疑問に思った事を投げる。
「我らの外見の 「………ぅん?…ということは、良い 「ええ、それが他所にはないファンタピアの――
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「チェストオォォオオオーー!!!」
突如、世界をぶち破ったのは、腹の底から響くようなデスヴォイス。
「ッ――なんか出てる!なんか出てる!なんか出てるー!!」
私が立つ簡素なステージの前、 落ち着いてられるワケないでしょうがー?!
「ぁああぁああぁぁ…!わワ、ワースさ――って!ワースさんたちまで逝きかけてるー?! 「ああ、ああ、大丈夫ですよ。誰もまだ逝っていませんから――…まぁそれもそれで、幸福ではありましょうが」 「なんて?!」
ステージ前で聞いていたゴーストたち――に留まらず、 なんだ、私はどうしたらいいの…?!
「ククク…♪まさか意図せずこの力を揮う者が現れるとは…―― 「………」
一体どうしたら――と慌てていたところ、不意に笑いを漏らしたのは、 悪意とか害意とか、そういったモノは感じられない――けれど、どこか彼の瞳の奥には僅かながら敵意、のようなものが感じられる。
「リリア殿。オーナーとマネージャーは別のモノ――同じと考えるのは早計だぞ?」 「ぅん?別の……モノ??…どういうことだ?」 「……血の繋がりはない、ということです…」 「…………――ぅんんん??血の繋がりはない??こんなにも似ておるのに、か??」 「…偶然の産物です」
先ほどまでの老練さはどこへやら、ダンさんに「リリア殿」と呼ばれた学生服に身を包んだ黒髪の少年は、 日本人でありながら、黒髪ではなく特異な山吹茶の髪を持つ三兄弟――なんて、全員の血が繋がっていると思って当然。 私たち兄弟の繋がりに「血」なんてものは関係ない――血が繋がっているから兄弟なのではなく、
「……どうかされましたか?」 「ぁ…ぅん……いや、あの……ちょっとばかり兄弟と名乗っていいものかちょっと疑問を覚えまして……」 「……ほう?」 「…時間がすべて、という 「――であれば、それでいいのではないですか?互いに 「……いいんですかねぇー…立場ある身なら、無力な身内はお荷物でしかないと思うんですが……」 「「……無力?」」 「………」
ダンさんとリリアさんが声を揃えてそう言って、なおかつ同じタイミングで首をかしげた。 …明らかに、今の話の流れ的に私の ……それに、この世界においては、「魔法が使えない」というだけで十分無力なはずだ。
「くく…どうやら本当に血の繋がりはないようだ。 「……」
どこか呆れたような表情で私を見るリリアさん――の呆れの原因になんとなし想像がついて、
「ワースとリリア殿は同郷の先輩後輩――心と口が軽くなってしまうのも仕方ないでしょう」 「それは………まぁ…止む無し、ですね……」
育ってきた どういう理由があってリリアさんがこの学園に通っているかはわからないが、
「――さて、後の始末は私にお任せください」 「…は――………………いや、あの………大丈夫、…ですか?それ……」 「ふふ、ええ大丈夫ですとも――誰をどうするにも足りない
ふと過った ――とはいえ、今に限ってはダンさんのその力は有り難い――というか、
「みなさんウチの大事な戦力です。一人残さず連れ戻してくださいね」 「ええ、ええ、もちろんですとも――彼らは皆オーナーのモノ。
今ここで大事な なるほど、それは確かに尤もだ――とは思うけれど、
「………マジですか?」 「いえ、冗談です」
あの兄さんが、使われる立場を知る兄さんに限って――ブラック体制、なんてモノを布くとは思えないのです。 |
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■あとがき うっかりすると、というか本気を出すと素でゴーストを祓っちゃう夢主です。怖え。 リリアさんとオニーチャンが――というよりは、茨の国とオニーチャンの相性が悪い、みたいな関係です。 長い歴史を持つ古き国――にとって、改変の寵児たるオニーチャンはクソ邪魔不敬者だろうなーと(苦笑) |