「 「「うわああーー!!」」
一瞬のきらめきののち、スペードくんとグリムくんの首に嵌められていたのは、 ……まぁそれで、私に
「…さすがに、コレは無視できませんよねぇ〜」 「……」
独り言のように呟いて歩き出せば、後ろでノランさんが小さくため息をついて――私の後ろに続く。
「トレイ、ケイト――」 「――おや、またしてもトラブル、ですか?」
呆れを含みながらも平静に、そして場違いなほどに堂々とした振る舞いで、 部外者の空気を読まない乱入――によって乱された場の流れに、 そうして私とノランさんによって、二度も意気を削がれた寮長殿は、
「違反者に相応の罰を与えていただけです」 「…相応――か…」 「…ボクの判断に間違いがあるとでも?」 「…それは、
寮生たちに対し、あくまで中立――部外者の立場を貫くノランさん。
「私闘に、と言うなら介入してくれませんかねぇ? 「ッ…!なにをっ――」 「郷に入っては郷に従え――です。
私の指摘に寮長殿が噛み付く――すんでのところで、ノランさんがご尤もが過ぎる正論を口にする。 何がどうあれ、ウチの寮生がマナー違反――寮長殿に暴言を吐いたことは事実。 …だから、彼に対して頭を下げるのは、正直なところを言えば不服なのだけど――
「――我が寮生が無礼を働き、申し訳ありませんでした」 「!」 「これは寮生を指導する立場にある私の不徳の致す所。
下げていた頭をさらに下げ、謝罪の言葉を口にする。 …とはいえ、正直あまりこういう
「っ――…いいだろう。キミの謝罪に免じて、彼らの暴言については許そう」 「…ありが――………………ん?
聞き捨てた方がいい――のだけれど、思わず聞き捨てできなかった「
「ご――」 「それは要りません。というかやめてください。でないと私が哀れじゃないですか」 「っ…」
ユウさんが口にしかけた謝罪の言葉を遮って、
「寮長殿の寛容な裁量に感謝します――では、指導の足りない子猫どもはこちらで回収させていただきますね。 「な――」 「あ゛ん?」
説教という単語に反応して、不満を漏らしそうになったグリムくん――を、全力をもって(黒)笑顔で睨めば、
「そちらの |
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「――だから、『やめて』と言ったでしょうに」
頭を下げ、ユウさんが謝罪の言葉を口にしようとする―― 心優しい上に、義理堅いユウさんの性格を考えれば、自分たちのせいで私が頭を下げるはめになってしまった――と思えばそれは心苦しいだろう。 ――でもここで、ユウさんに頭を下げられては、甲斐がないのだ。
「謝るくらいなら、端から逆らうな――という話です。 「っ…で、でも…!」 「――くくく、わかってにゃーなぁ〜。おみゃーは利用されてるだけだぜー?」 「ッ!!?」 「「な゛?!」」 「生首お化け〜〜〜!?!」
私の主張に食い下がるユウさん――の、 ――が、若干の間をおいてノランさんが口にした「チェーニャか」という
「よぉノランの兄さん。珍しく肌艶が随分といいにゃあ?」 「…お前は相変わらずの様だな――で、パーティ会場は向こうだが?」 「ふふん、それよりコッチの方がオモシロそー――っと、こえーこえーまるでどっかの母親みたいだぁにゃー?」
首から下を現したのは、ユウさんの頭の上にのしかかるモーブの濃淡がメッシュのようになった―― 生首状態から、人としての全容を明らかにした――のはいいけれど、
「…おや、それはとんでもない言いがかり――大体、あなたの方でしょう?私がこの子を利用していると言ったのは」 「――にゃはは。そうだそうだ、そうだった――にゃけど、利用してるのはどっちも同じじゃーにゃあのかね〜?」 「……――まぁ、語意だけを言えばその通りですが…」
売り言葉に買い言葉で、とりあえず ――…というかそもそも、だ、
「――あ、あの!リドル寮長についてなにか知ってるんですか…?!」 「んん〜?知っていると言えば知っとるし、知らないと言えば知らにゃあな〜」 「…結局どっちなんだゾ…」 「ふふーん?なあにゃ君ら、リドルについて知りたーぁの?」 「――ああ知りたいね。どう育てればあんな横暴になるんだかっ」
チェーニャくんの言葉の節々から覗く 困難に打ち勝つためには、まず問題を知ることから始めるのが定石――ではあるものの、
「それじゃあ、あの眼鏡に聞いてみにゃあ。 「…それって…クローバー先輩が寮長と幼馴染みってこと?」 「…正直そんな風には見えなかったが……」 「――なら、 「あ!おい!?」
「ほいじゃ」とチェーニャくんが言う――と、現れた時とは逆に体が消え、その声と一緒にフェードアウトするように彼の顔が透けていき―― …どうやらチェーニャくんの
「…なんか変なヤツだったんだにゃあ――…って、あ!口調うつった!!」 「――それよりクローバー先輩だっ。 「おやおや、人聞きが悪いですねぇ。微笑んでるだけ、ですよ?」
ふてくされた様子ながらも、殊勝なことを言うトラッポラくんに、素直に感心していた――ら、当人から「なにを」と不満顔をされる。
「――ではここからは若者たちで頑張ってくださいね」 「えっ?」 「申し訳ない――とは毛ほども思っていませんが、私も私の 「……生徒でも無ければ、ハーツラビュルの関係者でもないアンタが、どーにかできるのかよ」 「ええ、だからこそ――ってヤツです。 「……………なんというか……新たな地獄を招く人間のセリフとしか思えませんね…」 「「「「……」」」」
痛烈なノランさんの一言に、思わず彼に視線を向ける――が、ノランさんは自分が間違ったことを言ったという認識がないようで涼しい顔。 …まぁ確かに、セリフだけを言えば、ソレはフィクションの世界でよく見る悪徳商人か悪徳領主が言いそうなセリフではある。 ………まぁ、見えないことはない――…とは思うけどね??
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■あとがき リドルくんとの初絡み……と言っていいんだか微妙な邂逅回でした。 …正直なところ、チェーニャくんの回と言った方が適当なような気もしています(苦笑) |