窮鼠、猫を噛む――と言うけれど、 捨て鉢、玉砕覚悟――なんて、一欠片ほどでも勝機がある人間が選べる選択であって、
「…いずれ、こういう日が来るだろうとは思っていましたが……」
ハーツラビュル寮の用務員室――に設けられた簡易的な応接セットのソファーに腰掛けノランさんに話を振れば、 …ぇぇと、そんなに呆れられるようなこと……しましたか、ねぇ…?
「寮生が寮長に挑むのは、ハーツラビュルに限らずNRCではままあること、ではありますが―― 「………ぇーと……昨年も、同じような構図で?」 「……そう…ですね…。 「ほほほーぅ」
らしいと言うべきか、残念と言うべきか…。 …前寮長殿は前寮長殿で緩すぎた、のかな??
「… 「………まぁ…寮長殿もアレですが………あの二人に寮長は務まらない―― 「…そうなれば寮長が定まらない……暇なし寮長が変わる日々――…最悪、寮内で
真白な顔を青に染め、ノランさんは「あああ…!」とやり場のない感情を自身の手に向け、 規律から転じて伝統を重んじるハーツラビュル寮――の出身であるというノランさん。
「――だとしても、寮長殿のやり方は正しい、んでしょうかね?」 「……我々の時代で言えば、スタンダード――…故に『ただ 「…進歩が無い――…と」 「伝統を守ることは重要ですが、時代に取り残され、廃れてしまっては意味が無い――
ノランさんの 若者からすれば絵に描いたような お祖父様の存在を棚上げすれば、伝統を守ること、そしてそれを繋いでいくことに対するノランさんの姿勢は理解するし、同意もする。 ………ただ、
「ぅぐぅー………分かるんです…。ノランさんの仰ることはわかるんです…!! 「………それほどに、彼の態度が気に入りませんでしたか…」 「……いえ、寮長殿の態度うんぬんは関係ありませんよ。 「……」 「規律を守り、伝統を重んじる―― 「…、……――…」
不意に腹積もりが決まり、ずっぱと最終的なところを口にすれば、 ノランさんの態度に対し――ては、納得する部分しかないので、なにも文句はないし、反論の余地もない。
「……オーナーも大概でしたが……お嬢様の 「…と言われても、ピンとこないんですよねぇ――…身勝手な兄さん、って」 「………」 「……」
思いがけず訪れた謎の沈黙。
「マネージャーの、
平静と、理解を示された――上で拒絶された 生徒間のいざこざに部外者――それも大人が介入するのは
「しかし、現在のハーツラビュルの有り様に苦言を呈す権利は―― 「…」 「我々全員が、同じ考えを持っているわけではありません。緩和を望む者もいれば、今の厳格さを望む者もいる―― 「……それ、は――… 「…いえ、そこは
僅かに浮かんだ 確かに、ノランさんの性格――ノランさんだけのことを考えれば「ありえない」かもしれないけれど、
「ふふ――思慮深いことは善いことですが、マネージャーは重要な 「……と、言うと?」 「まず我々と彼らでは立場が、そして彼とあなた方では――役者が違う。 「…………ぉ…おぉ…ぅ……… 「ははは。それで潰れる
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兄さんがいなくなって数年後、自衛のためにと言われて叩き込まれた 彼らと共に過ごす トラッポラくんたちに協力を乞われ、それに応えることを決めた私――ではあったけれど、 …自分がやり合う分には、その場の流れに合わせて、これまでの経験を踏まえて適当に立ち回ればいい――
「………ホントに、見切り発車だったなぁ……」
延ばされた手を払えなかった――というより単に「取る」以外の発想が無くて、一考の余地なく当たり前に「協力」を口にした私―― ………後悔はしていなし、間違ったとも思っていない――けれど、反省はしよう。もう私は一人ではないのだ。
「……しかしジェームズさん、教えるの上手ですねぇ?」
熱がこもっている風はない――が、面倒そうでも、事務的という風でもなく、
「……………昔から、ですよ。…ジェームズの面倒見の良さ、は」 「ほぉ?」 「学生時代も 「………………そんな…に、長いお付き合い……だったんですか??」 「…」
イグニハイド寮の寮長であるシュラウドさんの計らい―― ジェームズさんとは、付き合いの長い職長と寮区長の関係――と思っていたけれど、 思いっきり興味を惹かれ、ぬいぐるみの如く抱きかかえたヘンルーダさんを、
「………ヘンルーダさんも… 「いや…いやいやいや…!おじょ――マネージャーの!我々に対する距離感がおかしいんです…! 「……いえいえヘンルーダさんはジジイじゃないですよ。 「それはそれで問題では?!」
こちらに顔を向けず、真っ直ぐ前に向かって「ぎゃあ」と叫ぶヘンルーダさん――の姿に、 これまで平然と、どうといった風もなく、ヘンルーダさんは私と話していていた――けれど、
「…まぁまぁ100歳オーバーの方からすれば私なんて赤ん坊みたいなものじゃないですか。 「……赤ん坊の抱き 「…善い大人は、積極的に赤ちゃん抱っこしますよ?」 「………抱っこされてるのは――オレなんですケドー?!」
盛大に、「ぎゃあ」と叫んで――その勢いのまま、 …業務的には、もうPCの設置も設定も、更にはネット回線のあれこれまでしてもらったので、
「男所帯と男子校は似て非なるモノ――…なの、かなぁ……」 |
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■あとがき こぼれ話送りにしてもよかったんじゃないかレベルのオリキャラ話でした。 ノランの話は今後の展開的に必要かなーと思えるのですが、ヘンルーダの話は不要だった気がします(笑) …ただ、この話が無いと文章量が足りなかったんだよネ〜っ(脱兎) |