ナイトレイブンカレッジで住み込みで働くゴーストたちの娯楽のため、
「……なるほど…。 「ああ。澪一という 「………うん。そだね…見よう見真似でこれだけ組み上げられたなら上等だけど――… 「難しいことはできない――から、欲張らなかった、のさ」 「…あぁ……そゆこと…」
舞台の 欧州の古い歌劇場を思わせる 古く有名な歌劇場のような煌びやかで荘厳な雰囲気というのはまるでない――が、
「――――」
舞台 舞台の手前にはオーケストラピットがあり、その向こうには無数の座席があって、その
「…レバーひとつで大小ホールの切り替えができるとか………ファンタジーの底力ってなぁ〜……」 「……いやいや、
ファンタピアとは、現実から切り離された幻想の劇場である――文字通りの意味で。 行こうと思っていける場所ではなく、招かれた者だけが足を踏み入れることを許される特別な
「……しかし本当に――…夢獏をはじかなくていいのかい?アレは本物のトラブルメイカーだよ?」 「…一柱だけをはじくとなると逆に面倒だし――……厄介だからってはじくのは、端から降参してるみたいでヤダ」 「………その気持ちは理解するけれど、賢くはないねぇ?」 「…芸術に、賢いとかないからねぇ?」
賢くないと言って寄越すノイ姐さんに、苦し紛れの屁理屈を返し、軽く息を吐いてから――
「―――」
――一つ、柏手を打った。 最後にこの劇場を使用したのは――身内公演を行った4ヶ月ほど前。 劇場に積み重ねられてきた
「」 「ん…」 「過去とは所詮思い出。積み重ねていくモノ――…であって、失われるものじゃない」 「…」 「心に刻まれた『思い出』は、神――そしてそれに準ずるモノでもなければ 「……………はぁ〜…もぉ……ご尤もだけど乱暴、だなぁ〜…」
誰かの心に刻まれた思い出は、人の力では奪えない――
「今出せる全力の、本気で行くよ――でなきゃ、誰も応じてくれないからね」 |
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劇場の ――とはいえ、「今」に向けてできることが無くとも、「先」に向けてのやるべきことは山ほどある。 …なんというか、コレが経営者と ……ただまぁ、大きい事務所であればこそ、経営者が
「(…
仮に、どんな負担も苦労と感じない鋼鉄のメンタルの持ち主がいたとして、
「(…そーゆー意味では、リドルくんは救いがあった――…かな)」
エレメンタリースクールから、今の今まで、学年主席の座に在り続けた寮長殿――もといリドルくん。 はてさて何度目の訪問になるやらのハーツラビュル寮――の、調理場のドアの前。
「――おや、コレはお待たせした感じですかね?」 「…そんなはことないよ。ボクが早すぎただけさ…」
ハーツラビュル寮の調理場にいたのは、 遅れたわけではない――けれど、一人準備の遅れている状態に、持参したバッグからエプロンやらを取り出しながら、
「では、本日は仕上げの作業です。
改めて今日の作業内容――に、モットー的な言葉を加えて、作業の開始を告げるアルテさんに、リドルくんと一緒に「はい」と答える。 ――さて、未だやることは山積みの状況で、わざわざ他寮に赴いてまでお菓子作りをしているこの状況、 今回のことの発端であるトラッポラくんとリドルくんの和解――のためであり、 そしてそこに更なる 生真面目とはこのことか――という話で、しっかりとレシピ本を読み込んだ上でタルト作りに臨んだリドルくん。
「ほう…。今の時代はそれがスタンダード…なんですね…」 「…本場、というのか、本職故なのか……驚きの隠し味、ですねぇ……」
形を整えたタルト生地をオーブンで焼き上げる間に、
「カキから出たうま味が、クリームに深いコクを与える――そう、トレイは言っていたよ」
セイウチ印のヤングオイスターソース。 …てか入れるならせめてタルト生地だと思うのです。
「………隠し味、としか聞いてないから、適量はわからなくて…。 「「……」」
少し自信なさげな様子で適量を尋ねてくるリドルくん――に、思わずアルテさんと二人顔を見合わせる。 失敗は成功の母――というし、元を糺せば副寮長さんの蒔いた種なので、
「……なんとも言えませんね。私はクローバーくんの作ったタルトを食べたことが無いので…」 「右に同じく――ですね。…だいぶトリッキー過ぎて味の想像がつかないので…」 「クローバーくんのタルトの味を知っているリドルくんの感覚で入れるのが、一番『適当』だと思いますよ」 「そ、そうかい…?」
調理場長であるアルテさんの言葉に背を押され、
「………」 「……カスタードの色は卵黄からくるものですから…ねぇ」 「……でもこれはコクがありそうですね、色合い的に」 「……お、多かった…かな…?」
真白な牛乳が、チョコレートを混ぜた――とも違うなんとも形容しがたい薄茶色へと変わり、
「牛乳を足して薄めればいいのでは?残った牛乳は、上手いことアルテさんに晩御飯へ昇華してもらいましょう」
牛乳に対してオイスターソースを入れすぎてしまった――としても、 しかし、オイスターソース入りの牛乳を余ったからと捨ててしまうのは、勿体ないの精神の国の ……でもまぁ料理であれば、いくらでも化けるとは思うんだけどね―― |
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■あとがき 屁理屈(?)の下、リドルくんとタルト作りと相成りました(笑)ようやっと夢っぽくなりましたかね(泣笑) この話を書くに当たり、イチゴタルトの作り方を勉強したのですが――…適当なオイスターソースを入れる余地がわからず…(汗) マロンタルトの時にトレイパイセンが「クリームに〜」と言っていたので↑の形になりましたが……。ヒデェ違和感…。 |