「マネージャぁアアアあ〜〜〜〜〜!!!」
遠いような、近いようなところから、なんかめっちゃ呼ばれている――…てかマネージャー? 答えを見つけられない疑問に不快感が沸き上がり、それが睡眠への欲求よりも勝って――のろりと身を起こす。
「マネージャー大変だ!いやっ、まだ大変なことになっちゃいないがなァ?!」 「………」
事務室の窓際に置かれた高さのないソファーの上、敷き詰められたクッションに再度身を預けよう――としたその瞬間、
「ねーるーなッマネージャー!!」 「………起きてます…起きてますぅー…」 「だったら目ぇ開けろ!ホレ!水!」 「んー……」
わーわー騒ぐポールさんに若干のわずらわしさを覚えながらも、差し出されたコップに口をつけ、中に入っていた水でのどを潤す――と、 ポールさんが指さす先――窓の向こうに見えるのは………崖? …喧騒……喧嘩的…騒音………。
「………決闘?」 「ちっがーう!決闘じゃねぇ! 「…」
……でもそれを、獣人の
「…………イジメ?」 「そう!イジメ!弱い者いじめ!肉食獣(人)が寄ってたかってだ!」 「ぅんー……確かにそれは良くないですねぇ………。……でもそれ、私が割って入るのもおかしいのでは? 「だあー!!イジメられてるのが――お宅の寮生なんですー!!?」 「…なん?」
聞き捨てならない
「――」 「ふぎゃ?!ま、マテ!まてマテ待て!オレは連れて行っても仕方ない! 「………んぇ、マキャビーさん戦力外ですか」 「そう!サバナクローは
なぜビッと親指を立て、イイ笑顔で真っ向勝負故に物騒なことを言って寄越すポールさんに、不快なカタチで意識が覚醒するのだった。
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走って跳ねてを繰り返し、あっという間にたどり着いた崖の上――の………これは、なんだろう…… ポールさんの報告というのか警告というのか通りで、黄色と黒の 一体 とりあえず、ユウさんについては何かしらの「面倒」に巻き込まれたから――だろうけれど、
「――っと、またしても何事ですか」 「っ…さん…!」
空中から急降下――の後、少しばかり 真っ当ではない方向からの侵入者に、誰も彼もが驚きに動きも言葉も止める中――
「っ! あーっくーん!止めて止めて!この
――と、少しばかりおどけた調子で ぅーん…この人もこの人で中々の曲者だなぁ……。
「…ユウさん、『助けてください』――ですか?」 「っ…はい…! 「そう、ですか。では、これはオンボロ寮として正式にサバナクロー寮に苦情ですね――マキャビーさん、出番ですよ」
…このまま、こちらののっぺりとしたペースで
「――――」
地面に転がるマキャビーさんを見下ろす――視線に、本日溜め込んだ色々を凝縮した 向けられた
「――ヒふギャ?!!」
針、釘を通り越し杭でも突き刺さったかのような声を上げ、 叩きつけられたゴムボールの如く飛び上がったマキャビーさんがその頂点に到達し、
「マキャビーさんおはようございます」 「ぁいー……」 「早速ですが、ウチの寮生が 「………ぇ…。…それは……………ムリ……」 「……」 「イヤ?!だって!?オレにそんな 「いやいやいやいや」
自分では無理――副区長であるエーランさんでなければ寮生たちを止められないと、若干ヤケクソ気味に宣言するマキャビーさん。 ピーわー騒ぐマキャビーさん――の首根っこを掴み、そのまま自分の肩の上にまで持ってきて、そこに置く。
「…さて……いかが、しましょうね?」
マキャビーさんを色んな意味で黙らせ、改めて うん…これは失敗だった――というか軽率だった。 ここで寮長殿下が大人しく引き下がっては、一団の長としてその沽券にかかわる。 …ことをややこしくすれば、ぶっちゃけ寮長殿下が相手であれば一瞬で
「――…発言をよろしいでしょうか」 「……なんだ」
色々考えた末、とりあえず黙っていても仕方がない――と、
「そちらのハーツラビュル寮生を含め、ウチの寮生たちを見逃してはいただけませんか?」 「……ハーツラビュルも、とは図々しいな」 「…この状況で『ウチの子だけ』は、さすがにないでしょう――人として、人格を疑われてしまいます」 「…ああ、それはご尤も――だが、縄張りを侵した 「………では、どう折り合いを付けましょうか」 「なに、 「……。…なるほど… 「ああ。
ニヤと意地の悪い笑みを浮かべ条件を提示するのは、ただ一人、私に対して恐れを認めていないサバナクローの寮長――レオナ殿下。 …これなら、
「…ふむ、わかりました――グリムくん」 「っ…!」 「グーリームーく〜ぅ〜〜〜ん〜?」
「こっちへ」という意味を込めてグリムくんを呼ぶ――が、 不満ではなく、
「ユウさん」 「………」 「…あなたが一人残ったところでしようがないでしょう――…大体、あなたに何ができるって言うんです?」 「っオイ!オメー!!」 「っ…だから……私じゃ…!私じゃどうにもできないから――…っ助けてくださいーー!!!」
恐怖と葛藤に苛まれ、泣くように叫ぶ――でも諦めずに仲間の
「だっ?!」 「ぅおっ!!」 「わへっ?!」
急に変な声を上げた――のは、三人の屈強なゴーストに担ぎ上げられたハーツラビュル寮生たち。 ――ただ、
「――ということで交渉決裂でーす」 「へ、あ――わひゃあ?!」 「しからばっ三十六計逃げるに如かず――ってことで!ずらかりまーすっ」 「ッ――…逃がすな!追えェ!!」
――ただまぁそれは?当然のように相手にとっても言えることなので?
「ハハハー!サバナクローとは全面戦争ですかねー!」 「ニャハー!マネージャーってばお〜っかネー!!でーもースーキ〜!」
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■あとがき 実力主義社会とはある意味、独裁的なモノなのかもしれません。ただ実力主義が認められてる時点で、正当なんでしょうけどね。勝てば官軍的な(笑) なんやらあってパワーバランスがややこしいサバナゴースト勢ですが、実力主義であることは間違いないのです。 ただ彼らの場合、+α要素にあたる「昔取った杵柄」が大きく作用するから、端からすればワケわからん組織体制になるのです(笑) |