今一度改めておくと、先のエキシビジョンマッチにおいて勝利を掴んだのは――オンボロ寮、だった。 …ただそれは、観客の99%が予想もしていなかった展開ではあった――が、
「………」
ワヤガヤと騒がしいのはサバナクロー寮の選手控室。 興奮によって個々の意気が上がり、それによってチーム全体の能力値が上昇し、それによりおそらく初戦は難なく突破することができるだろう。 …万全の状態でも勝てるかどうか怪しい相手を前にして。 ――ただそれでも、素直に褒めるべき部分もあって、 無言で司令塔殿下――レオナさんを睨んでみるものの、 レオナさん、あなた無関係じゃあないんですよ…。
――パンッ…!
色めき立つ空気を割ったのは私の柏手。
「先の試合、お疲れさまでした。大方の予想に反し――負けてしまいましたが」
負けた――その指摘に空気がズンと重くなる。
「前半戦の動きは、悪いものではありませんでした。
息のつまる緊張感に、私の …とはいえ、彼らが油断してしまうのもわかる。
「油断を悟られ、意表を突かれて動揺を晒し、それによって反応が間に合わず失点――…
私の指摘とも、叱責とも――愚痴ともとれる発言に、場の空気がどんよりと淀む。 落ち込むということは、「だって」と他人や状況に
「――しかし、後半戦のイレギュラーへの対応は立派でした。
精神的な
「では、見せつけるとしましょう――サバナクローの新たな
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既に祭りは終わり、熱を帯びた興奮も日暮れと共に鎮まり――…世界はゆっくりと、平静を取り戻していた。 厳しい練習であっても逃げ出すことなく熱意をもって、 …たぶんこの「 人間という動物は、ただ一つの種族――だけれど、生活してきた地域によって差異がある。 齢百年を超えた マレウス殿下の精神年齢や知識までは制限されていなかった、 策を練り、仲間と協力してその喉元へ迫ることができた――…としても、その息吹ひとつで …あの 後悔があるのか――と問われれば、それはその通り――だけれど少しニュアンスは違う。 戦略とはジャンケンのようなモノ――出した 彼らの実力が、100%発揮できる
「――まだ、黄昏れてるのか」
不意にかかった声に、反射で振り返れば、日が陰り薄暗いコロシアムの通路の奥から姿を見せたのは―― …レオナさんから、マイナスの視線を受けるのは自業自得―― 私の失策に対し、怒りや不満をぶつけてきた――のであれば、それは尤もな
「……納得、してるんですか」 「ハッ、納得も何もあるかよ。端からわかってたことだろ、アレは正攻法でどうにかできるモンじゃない――…ヒト風情には、な?」 「……」 「お前にとっては悔しい結果だろうが――…俺たちは、この
現実を嘲笑いながら諦めの言葉を口にするレオナさん―― ――…それに、よくよく考えればあの
「――言うまでもないだろうが、お前の後悔は俺たちに対する侮辱だからな?」 「……それ、は――……思い上がり、ですよ」 「オイオイ、言ってくれるじゃねーか。マジフト歴一週間のシロウトが」 「……」 「結局、足りなかったのはお前の経験と俺のスペック――…悔やみようがねーだろ」
やっぱり人を小ばかにしたような笑みを浮かべてレオナさんは諦めのような納得を口にする。 …ただまぁ
「……なんだよ」 「…いえ……急に物分かりが良くなられて、どーいった心境の変化があったのかと………」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら疑問を促してくるレオナさん――の言葉に甘え、思ったままを口にする。 現実の壁にぶち当たって心が折れ、 私の
「……」 「…………」
不満げに私を見下ろすレオナさん――に対し、
「ぬお?!」 「ぉおっ!?」
刹那、ズドムとレオナさんを背後から押し倒したのは――黒の雄獅子。
「っ……退けよっ…ダスク…!!」 「ゥグルルルル……」
自身の背の上に陣取る黒獅子――ダスクと呼んだそれに、 …考えるまでもなく、
「…――ダスク」 「! ゥグー♪」
確証はなかったけれど確信に近いモノはあって、黒獅子に向かって「ダスク」と名前を呼んでみる。
「…伸縮自在………いや、変幻自在??」 「ぅぐるるる〜」
私の腕に収まった時には、ダスクは大体子ライオンサイズまで小さくなっていた―― しかし
夕日は既に地平線の下に沈み、 そしてそれは――
「――じっくり拝ませてもらうぜ、お前の 「…」
気付かぬうちに立ち上がり、そして不意にそう言って――レオナさんは去っていく。 …なんともすっきりしない――が、 一表現者としての自負と実績、そして信頼を受ける「指揮者」としての
「…――さて、
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■あとがき 統率者としては、常に無茶はあっても無理はない運営をしているだけに、敗北や失敗の経験が少ない夢主です。 過去に派手にやらかした経験があるがための堅実さなのですが、臆病故というよりも責任感故の堅実さです。 信頼の上で預けられた力を――彼らの努力を無駄にするわけにはいかない――下手すると強迫観念にも近いのですが、 挫折の経験が少ないのでまだ責任感の枠に収まっているかと思います(苦笑) |