さすが――と言うべきか、やはり OBたちのアドバイスを胸に、在校生のフォローを受けつつ過ごした人生初の学校生活は、 ――本来なら、オンボロ寮に戻って、
「いやはや暗記で対処できる教科が多くて助かりますねぇ」 「……そんなことを言っていると、 「…いえ、数学以外は答えが定型なので丸暗記 「……」
綺麗まとめられたノートから一旦目を離して横に顔を向け、 結果によっては、ファンタピアの運営に致命的な支障をきたすことになる――定期試験。 リドルくんと同じ勉強法を今から実践しても遅い――が、
「覚えて答えるだけ――なら、やることは一つで済みますからねぇ」 「………筆記はそのスタンスで問題ないとして――…実技は、どうするつもりだい?」 「それは――家庭教師の 「………」 「……元教員の勘でヤマ張ってもらおう――とか、思ってませんよ?ちゃーんと全部仕上げてきますとも」 「………そうだね。…キミの実力を考えれば、心配なんて不要だったね」 「いや………うーん…… 「……まぁ…課題に挙げられる魔法は――」 「何事もない状況下で魔法を使おうとすると、緊張感が無さ過ぎて暴走しがちなんですよねぇー… 「…」
筆記試験に比べれば、実技試験に抱える不安はかなり薄い――けれど、それでも全く無いわけではなくて。 …ある意味で、リドルくんの反応はありがたいというか嬉しい反応――ではある。
「……いや、待ってくれ――…本当に、暴走した…というのかい?キミの、魔法が??」 「ぁ、いえ、制御から外れる――という意味での暴走ではなくてですね?
ぎょっとした表情で「暴走」の真偽を尋ねてくるリドルくん―― 発現した魔法が
「……キミが失敗するのは意外だけれど――…その内容が…『らしい』ね…」 「…なかなか難儀してるんですよ、コレ…――試験までには完璧に仕上げてみせますが」 「まぁ…効果が過ぎているというのなら、出力を下げればいい――という話ではあるからね。
リドルくんの見解に頷きつつ、目に映る文字列を自分のノートに書き写していく――が、その
「………簡略化したい…」 「…それはまだ先の課題だよ」
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元の世界へ帰るため――に、ファンタピアを再興する必要が(たぶん)あって、 知識も経験も十分な
「……………………普通に…勉強したぃ………」 「……」
初登校から早一週間が経過した今日――
「…知りたがり脳味噌が、勉強の足を引っ張ることになるとは………」
知的好奇心は勉学における良き友である――…が、この度の「勉強」においては正直、害悪と言っても言い過ぎではないように思う。
「……そんなに、…なのかい?」 「…いえ、今のところは予定通りに進んでいる――…んですけど、 「……学びたい、という 「 「…………」
自分自身を嘲り「過ぎたるは」と言った――のに、なぜかリドルくんが不満げな顔をする。 …限度を知らずやらかすのと、限度を分かっていてやらかすのでは、そもそも問題の原因が違う。
「…せめてもう少し、範囲を絞ることができれば…ここまでの苦労はないんですけどねぇ…」 「……ヤマを張る――というのかい?」 「そうですね、あと一週間あったら――ですけど」
苦笑いしながら「そうですね」と倒置法でリドルくんに答えた――ら、不機嫌というか迷惑そうな表情のリドルくんに軽く睨まれてしまった。 90点以下を、一教科でも取ったら、それで
「おや、リドルさんが図書館で歓談とは――珍しいこともあるものですね」
不意に聞き覚えのある声がリドルくんの名を口にした――半ば反射で声の聞こえた方へ視線を向ければ、 ハロウィーンウィークにおいて
「…なにか用かい」 「いえ、用というわけではありませんよ――編入したばかりのリュグズュールさんのお力になれたらと思いまして」
綺麗な笑みを浮かべたオクタヴィネルの二人組の顔――と、「どういうことだ」と若干怪訝な表情のリドルくんの顔がこちらに向く。 さて、私が友人からの不審を払ったところで――彼らは一体どう
「…なにか、良案をお持ちですか?」 「良案――かは分かりませんが、ボクがまとめたテスト対策のノートは、いかがですか?」 「…――?」 「…授業の内容をまとめたノートなら、ボクのもので十分だよ」 「ええ、ですから、ボクのノートは単純に授業の内容をまとめたノートではなく、 「………ボクたち?」 「フフ、それは『
「ボクたち」とくくった眼鏡の青年――アズール・アーシェングロットくんの言葉に倣い、
「…キミの作ったノートの内容を覚えるだけで満点が取れる――と言うのかい?」 「もちろん、理論上は――全てを覚えられれば、という前提での話ですが、 「…それは………」 「――とはいえ、あくまで結果は当事者次第ですから、テストの点数を保証することはできません――
自身のテスト対策の ハロウィーンウィークにおけるアーシェングロットくんのマネージングは全体的に保守的――失敗を排除した方針を執る印象を受けた。 ――しかし、それが本当にテストを突破するための、虎の巻となるだけの価値のあるモノ――
「どうぞボクのノートをリュグズュールさんの勉強に役立ててください―― 「………ご厚意に、預かってもいいんですか?」 「ええそれはもちろん!リュグズュールさん――いえ、ファンタピアのおかげで今年のハロウィーンウィークは想定を超える大盛況!
高揚した声音で「ご恩」と笑顔で口にするアーシェングロットくん――…ではあるけれど、その顔に浮かぶ
「受けた恩には報いるのが道理――ですから、どうぞ遠慮なくボクを頼ってください。あなたにはその権利があるんです」
これは、アーシェングロットくんの 相手に
「……恩に、と言うのであれば――寮生の、生活態度に目を配っていただければ」 「――…………………は?」 「オクタヴィネル寮の 「「………」」 「寮区長曰く、毎年の事――ではあるそうですが、 「………そんなことで…いいんですか?」 「
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■あとがき オクタ組−1との本編での初邂逅でしたー。でも背景からもお察しの通り、リドルくん夢の気の方が強かったかと思います(笑) 一週間に亘り夢主がリドルくんを独占していた――ようで、ハーツ・サバナ合同勉強会を催してたり(笑) 真面目に勉強していても、人数と質問等の数が多くて騒がしくなり、注意しにきた司書――も巻き込んで、賑やかに勉強しておったかと思います(笑) |