木々が群れを成す森の中、ぽかりと開けた一画で、 この森は私有地であり、所有者の許可なく森へ立ち入ることは許されない――
「………」
怖いもの見たさ――
「……」
行方不明者の名前の横に記載されていたのは、失踪したであろう日付。
「………対策、何か講じた方がいいでしょうか…」 「……いや、そこは心配しないでいい。今年は別件も含めて既に 「………………――ぇ、…藍の師団は事務か――人事担当のはずじゃ…?」 「…近年、ハロウィーン期間になると生者もゴースト並みに羽目を外すようになっていてな…。 「………」
…脳裏をよぎるのは、人でごった返した某交差点――と、
「…………」 「……藍の師団――オリナ兄さんの手腕を信じてくれ」 「………ヴォルスさんがそう
ヴォルスさんが「 …まぁ、それ以前に私がこの案件に関してできることなんてないんですけどね!そもそも!
「(そしてそこまでの面倒を見る余力があるかと問われればなんとも言えないわけで………)」
目を向けた先――フェンスの向こうに広がる深緑の森を前に覚えるモノは、 招かれざる者を無邪気に森に誘った精霊たちが恐ろしい――わけでは、全くない。
「(あー…………)」
理解した 罪悪感で 心と頭を切り替え、改めてフェンスで隔たれる森に視線をやり、
「…………………………ド、ラ……??」
反射で顔を上げた先――フェンス、というか看板の上にドンっと陣取っていたのは、…ドラゴン。 濃い赤色の鱗。首が長くて、腕は細いが、脚はガッシリ。畳んでいるが、翼があって。 ダンッと赤いドラゴンがフェンスを蹴り、ドンッと私の背後に降り立つ。
「………」 「…………………」
なぜか?赤いドラゴンとの睨み合い―― 良し悪しなく、ただ無言でお互いを見合っている――
「――アネキ、いつまで黙ってんだよ」 「!」 「……かといって、お前が口を開く場面でも無かったと思うぞ…」
不意に、ひょこと赤いドラゴンの背から顔を出したのは、めっちゃ小っちゃい2体の――…ドラゴン。 自身の背に向いていた赤いドラゴンの
「姐さん??」 『ハハハ、それは濡れ衣というものだよ―― 「はん?」 「!」 『――ほらね?』 「…」
ノイ姐さんからの指摘に、思わず出た怪訝な声――に、 …よくよく考えれば、兄さんがこの場所を訪れたことがあるということは、 …もしくは、もう
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背に人を乗せた時点で、ドラゴンにとっては低速なのだろう――けれど、それでもその飛行速度は人の域をいとも容易く凌駕する。 そんな油断ならない状態――という以前に、空を駆るが為の強烈な風圧によってまともに声が出せない上、 ――なんて、能天気な
「(………ひょーじょーが、まるでわからないー………)」
思いっきり顔を上げ、やっと見ることができる …ただ、こちらに対して警戒とか嫌忌とか、そういったマイナスの感情がない事だけは確かだった。 ――不意に、ドラゴンが動く。 瞬間、某ゲームの中で何度も喰らったドラゴンの、ボディプレスが、脳裏をよぎる。
「――…ほハ?」
降りてくるドラゴンの顔に、死の想像がよぎった――が、それは私の過ぎた
「……――やぁっと会えたわ〜〜〜〜!!!」 「っ――ぎょえーー?!」
ニヘと笑みを見せたと思ったら、誇張なく目にも留まらぬ速さでこちらとの距離を詰めた―― 見た目は人並みよりも少しばかり美人だけれど、それ以外は人間とほとんど変わらない――
「母様!ストップ!ストップです!!」 「ぅん?」 「っ……!あ…相手は…人間っ…ですよっ!!」 「………ぁ…ああ〜〜…………」
…本気で、上半身の骨の大体を持っていかれると錯覚する――
「あ、あら?も、もしかして…どこか痛めてしまったの…?!」 「いや、ちがっ………ほっとしたら…力が、抜けて……」 「そう?それならいい――……のかしら?」 「…怪我がねーならそれでいいんじゃねーの?てかよくなかったらかーさんが無事で済んでないだろ」 「……それもそうね!」
…おそらく、彼女――なのか、彼女 今訊くのも、目的に到着してから聞くのも、
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■あとがき なんでこうなった?さてな!気づいたらこんなコトになってたんでなァ!(脱兎) |