津波のように押し寄せる焦燥感は――…もう、だいぶ薄れている。 …いや、厳密には
「…………」
ある意味での最終 対価とは、パレードのアレコレソレコレの経費のハナシ――だけれど、物理的な ファンタピア団員たち――もとい、NRC用務員ゴーストたちは、地縛霊――ではないけれど、 …ただそのおかげでなおさらに彼らの金銭へ対する執着心は薄れ、
「(弾き語りは――……避けたい、なぁ……)」
金銭に代わる 曰く、 ……いや、ウン、まぁ…その…そう、思ってもらえることは……、…一表現者としてはとても嬉しい事――…なのですけれど…ね? ……でも、
「………ミルさん」 「んー?なんだい?」 「……ピアノ弾けます?」 「――……練習に付き合う程度には弾けるけれど、キミの発表に付き合えるまでの自信はないねぇ」 「…」
唐突な私の問いかけに、ミルさんは平然と答えを返す――…けれど、どうにもその「答え」が釈然としなかった。 先の公演には、ミルさんも足を運んでいたが、その公演において私は指揮者としてしか出演していない―― …なんでしょう。
「いやいや、キミたちのトンデモなさはよーく知っている――以前に、ボクはそこまでの傑物ではないのでね」 「……色々と突っ込みたいところはあるんですが…――まず、何故 「――…簡単なハナシだよ。見たのさ、キミの本気を―― 「………ほん?」 「ノイ様の粋な計らいでね、八業にも観賞権が与えられたのさ――で、それを見たマスターがキミのことを大層気に入ってね。 「……………こわぁ…」 「ぇ、なんで??」
ミルさんが、悪いヒトではないことは――分かっている。 相手は獣神――とはいえ、自分の与り知らないところで自分の情報が、顔も知らない存在に流れているのは――怖い。
「…心配性だねぇ?私の指示で、だよ?」 「…姐さんが夕映の手を噛むように――…できる部下は上司の意に背くものなんだよ」 「………反逆の意思をもって?」
呆れを含んだ半笑いで尋ねてくるノイ姐さんに、私が返した答えは――…意気の死んだ、無感情の否定、だった。 たとえ …言いたくはないけどね、個人の心情的には!
「……八業が、愉快な面々でないことを祈るしかないねぇ……」 「それは――杞憂、だと思うよ?八業はその号の通り商売人気質だからね、不利益を生むようなことはしないはずさ」 「……夢獏に山吹色のお菓子握らされて………」 「…だとしたら――もっと、ひっちゃかめっちゃかのはずだよ?最初から」 「……ぅわあ」
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こんなことを言うのもなんだけれど――パレードの準備はすこぶる順調だ。 ――だとしても、トラブルやら問題やらが起きることなく着々と準備が進んでいることは、とてもとても喜ばしい事。 楽隊、パフォーマーそれぞれの練習は既に終了し、仮想現実下での合同練習――も、既に終え、 どれもこれも最低限という程度で次の段階に――と、かなり速いペースでの進行だったけれど、
「(及第点――…なぁ)」
「(テンパるとダメ――…か)」
いつだったか、トラッポラくんがそう言っていたが――たぶんコレも、そういう
「魔力運用て…」
談話室のソファーの上、ふと自嘲交じりの苦笑いが浮かぶ。 効率を重視するが故に根こそぎ
「(この世界の魔法の本質は呪い――なのか、それとも単に
魔法の使用について回るリスク――ブロット。
「(ブロットの浄化は穢れの浄化とほぼ変わらない――…けど、………自分のは、なぁ……)」
個人的な感覚として、ブロットというのは、
「…リドルくんたちの比ではない気が――」 「――ボクが、なんだって?」
噂をすれば影――というヤツなのか、ふとつぶやいた名前――の主の声がして、
「…おやぁ」 「……寮生が少ないとはいえ、 「……そうですね、では這いずって――」 「――…その前に、来客の対応をするべきだと思うのだけど」 「………と、言うコトは――…リドルくんは、私をお訪ねで?」 「……トレイがパンプキンパイを焼いたから…そのお裾分けに――」 「!」 「…よだれ」 「おっと」
トレイさんの 職長であるジェームスさんが紅茶を淹れてくれる――それは、いつもの事なのだけれど、 ソファの片側に寄り、空いたソファのもう片方へ「どうぞ」とリドルくんを招く――
「…ハロウィーンの準備は順調――…ですよねぇ…。 「……去年は、こんな余裕――…持てていなかったけれどね」 「…」 「ノウハウのあるケイトが立てた計画を、デュースが先頭に立って形にしていく―― 「――…その解釈は、少々卑屈が過ぎるのでは?」
去年とは違うと語るリドルくん――だが、個人的にそれはちょいと卑屈が過ぎる気がした。 おそらく、昨年の運営委員はリドルくんとクローバーさんだった――のだと思う。
「NRC生のハロウィーンに対するモチベーションを考えると、 「……ボクがここにいることが、なによりの 「……」
なんとも複雑そうな表情――を浮かべながらも、 …なにかこう……言い返したい、…というか、
「はぁーっ、真面目ですねぇ〜…」 「……キミが、それを言うのかい」 「ええだってリドルくんのは自戒でしょう?でも私のは――傲慢、ですから」 「………屁理屈…」 「、屁理屈だろうと私にとっては 「………なら、ボクもそういう 「――…おやぁ」
なにか、とんでもなくリドルくんがらしくないことを言った――が、彼が「そういう 人の振り見て我が振り直せ――てない
「――リドルくんも、頑固ですねぇ?」 「…キミほどじゃないよ」 「ですかねぇ?…こーみえて歳上に対しては結構素直なのですが」 「…………同い年だろう…ボクたちは」 「いやーでもナー?リドルくんがひと月遅く生まれて、私がふた月早く生まれていたら――二つ、学年が違ったわけで?」 「…………………………」 「…あ、リドルくん今、物凄く 「………………!……………!!」 「あ、堪えて堪えて。
私の その
「「煽るな」」
「………同級生との、フレンドシップのつもりだったんだけどナー」
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■あとがき なんか唐突に夢っぽいエピソードとなりました(笑) …ぶっちゃけ、公式のリドルくんとはキャラが違っていると思うのですが、このまま押し進む所存です。 人の影響を受けて人は変わる以上、公式にいないモノが居る時点で版権キャラだろうと変わってないと物語的には逆に不自然だと思うのですぅ?!(屁理屈/脱兎) |