血の気が引いて――文字通り、貧血のそれに近い眩暈がした。 ユウさんとグリムくんの目の前に迫った危険――怒りと拒絶をあらわにしたリコリスさんの前から、二人を離脱させたのは一頭の白の雌獅子。 …確かに?ユウさんなら
「………すみませんユウさん、グリムくん――…怖い思いをさせてしまって」 「っ……!」
目の前に迫った危険を理解する――間もなく、その脅威から離脱させられ、 ユウさんの オンボロ寮にユウさんたちが帰ってきていない時点で、テリハ姐さんに帰還指示を出していれば――こんなことにはなっていなかった。 ――ただ、この件に関しては、私だけが悪い――というのも、さすがに釈然としない。
「」
悠然とした調子で――ノイ姐さんが、私を呼ぶ。 ……確かに、その通りかもしれない――けど、コレが問題になったのはノイ姐さんのせい、だからね??
「…ユウさん」 「っ…」 「大丈夫です――ユウさんのことも、グリムくんのことも、そしてリコリスさんも――ちゃんと、守って見せます」 「っ…!ッ……っ!!」
目の前にした恐怖を
「…フフっ――並の巫女ならいざ知らず、
――慣れた傲慢の笑みを浮かべ、ユウさんの リコリスさんの苦悩に気付けなかったこと、ユウさんたちのことを気遣えなかったこと――その他諸々ひっくるめて、
「テリハ姐さん―― 「……はい…確かに任されました」 「――と、ジェダとネフラも下がっててね」 「……」 「…おーえんは」 「――…そうだね、2人が必要だと思ったら――でいいよ」 「「………」」
応援要請の是非をジェダたちに投げる――と、ジェダは苦い表情を浮かべ、ネフラは呆れと怒りの混じった表情で私を睨む。
「――姐さんって、意外と不器用?」 「ふふ、まあね――でもその分は、 「………ぅわお。…振り回されるテリハ姐さんの
|
|||
躊躇なく、一歩一歩足を進め――表情を恐怖に染めながら、こちらを呆然と見つめるリコリスさんとの距離を静かに縮める。 …なんというか……長所は短所ってこういうコトなのかなぁー………。
「くるな…!くるなぁ……!」
拒絶の言葉を紡ぐ声に絶望をにじませ、リコリスさんは怯えた表情で私の …効率を重視するなら、リコリスさんの言葉に応じる必要はない――のだけれど、私は巫女であると同時に
「毎日毎日顔を合わせて、言葉を交わしていたのに――…気付くことができなくて、ごめんなさい」 「っ…ちがっ……!違う…!マネージャーは……っ!」 「違わないですよ。私は――ファンタピアの 「っ…!」
リコリスさんに「くるな」と言われた場所で足を止め、そこで腰を下ろして――リコリスさんに謝罪の言葉を向ける。
「ちがうっ、ちがうっ、ちがう…っ!マネージャーは悪くない…!悪いのはっ…悪いのは…!」 「……そこまで思い詰めるほど悩んでいるのに――気づけなかったんですよ?悪くないわけないじゃないですか」 「っ…それは…!それは俺がっ……俺が隠してたからで…!」 「――だとしても、気付くのが本物です」
私を悪くないと言うリコリスさんの本音は――おそらく自己否定、だろう。 誰が問題を隠していようが、それによる異変を敏感に察知して、
「――なのに、私は気づけなかった。
生前、歌手を目指していたリコリスさん――だけれど、 これまでに、リコリスさんがファンタピアで歌い手として舞台に上がったことはない―― 未練や悔しさに苛まれながらも、リコリスさんは未来を生きていくために、 リコリスさんが夢を諦めたことと、彼を襲った
「やめろ…!俺の……俺のナカ、に…!踏み込んでくるな……!」 「……やめろと言われただけで、諦められるワケないじゃないですか――あなたを選んだ私には、責任ってモノがあるんです」 「ぁあ…!やめろ……!くるな…くるなってぇ………!
顔に浮かぶ恐怖の色を更に濃くして、リコリスさんは拒絶の言葉を繰り返す。傍に来るなと、近づかないでくれと――もう、嫌だと。 この ――とすれば、その
「嫌だ…!イヤだ…!もう、独りになるのは――…もう…!イヤ、なんだ…!
今一時にしても、これまでにしても。
「…コレ、は……」
吐き出した穢れを身に纏い、リコリスさん――だったモノが形作ったのは、…おそらく生前の姿。
「ハハっ…!気味が悪いだろう…?生きているのに死体より不気味で醜くて――無様な姿だろう!!?
耳に障る嗄れ声で、 初めからリコリスさんのことを、言葉で引き留められるとも、引き戻せるとも思っていなかった――
「嗤えよ……俺を――…見苦しく希望に縋った俺を…!
何度も言うようだけれど、リコリスさんの
「………………………………――ハハー」 「、」 「…嗤えと言ったのはリコリスさんじゃないですか」 「――――――……ぁぁ………ぁ――…っ、アあアアアあ゛あーーー!!?!?!」
リコリスさんの目が、ようやっと その見てくれに相応しい狂気と怒りに染まった咆哮を上げ、血走る――が過ぎて
|
|||
■あとがき キャラクターを考え、作り上げている時は、ナニとも思わないのですが、 こうして物語の中でキャラを動かしていると「とんでもねぇ運命背負わせちゃったな…」と自己嫌悪のようなモノを覚えます。 奇病なんて患わせなくたっていいじゃない、なんなら夢破れるだけでいいじゃない――と思いもするのですが、 それじゃあゴーストに成れない――仮に成れても名無しのモブ止まりだと思うんだ(鬼) |