これは、個人に向けられた …ただ、弱点と言っても過言ではないくらい苦手なモノだけに、 何処に行ったところで、悪霊は悪霊でしかない――
「――ッガア゛ァア゛アアー!!?」 「…やっぱり居ましたか」
躊躇なく、私に向かって一直線で襲い掛かってきた イグニハイド寮の副寮区長を努めるコルチカムさんなのだから、
「フフ、まったく趣味の悪い――…さすがの私も、肝が冷えたんだがね?」 「……漁夫る気マンマンの 「ハッハッハ、そう言われてもな。 「……それは単にコルチカムさんの 「――うむ。否定はしないとも」
コルチカムさんの …しかしそれも、彼が相手では仕方のないこと――かもしれない。 ただ、年月の経過によって精神は正されていくモノ―― ゴーストの最上位種――にして、新たな魂の
「コルチカムさん、下がってください」
なにか面倒なものを覚えながら、自分の前に立つコルチカムさんに「下がれ」と指示を出す―― 面倒を嫌う――自分の利になること以外には非積極的なコルチカムさんが自ら出張ってきた――
「逃げることを選んだ賢明さは評価しますが――私から逃げられると思ったコトは減点、ですよ」
想像の範疇の乱入者の、思ってもみないほどの引き際の良さにアレコレ考えていた―― リコリスさんの …ただそうなると、色々処置が面倒になってしまうので――…いい加減、
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神道におけるお祓いや仏道のお経によって霊は成仏し、然るべき場所へと還っていく―― お祓いやお経で、未練だの後悔だの怨恨だのが解消されるなら―― ――だから、私の 傍にあって見守り、時に寄り添い支える――ことはできても、過去と折り合いを付けるのは、結局のところ当人にしかできない。 だから、やっぱり――
「
襲い来る 不幸中の幸いというのか、生前のリコリスさんは荒事には無縁の一般人だったということもあって、その攻撃をかわすことに難はない。
「ほらほら、きりきり舞ってくださいな――」
襲い来るモノを受け流す――動作を、神楽として魅せ、祝詞と共に奉納する―― ノウハウも、経験もないのに、理解するよりも先に体が動く――…だけれど、その感覚はあくまで私のモノ。
「ぁあそうそう、覚えているかはどうかは分かりませんが――言っておかないと気が済まないので一言、言っておきますね」 「ッ――!!!」 「(…覚えてる、以前に、聞こえてない――かな)」
ファントムに堕ちて以降の記憶を、リコリスさんが保持しているかはわからない――以前に、 …ただまぁ、これから私が口にしようとしている そう、吐き出すことができればそれでいいのだ。私は。
「リコリスさんの人生が無意味だというなら、 「ガッ…ァ゛ァア…ッ?!」
跳びかかってきたファントムを受け流す――その力を 当然それに対してファントムは咆哮を上げ、手足を動かし抵抗する――
「自分を否定するのはいいでしょう。それも、見方を変えれば向上心ですから―― 「ッァアアア!!グア゛アァア――!!!」 「自身を見限られず生に縋り、死を迎えてなお失われなかった自我――が故に犠牲になった
もし本当に、リコリスさんにとって彼の全てが無意味だったとしたら――
「自分を諦められなかった、諦めることができないだけの
光に絡めとられたファントムから距離をとる――その着地と同時に、クルリと一つ舞う。 私の干渉によって高まりゆくのは暖かな 簡単なことではないだろう。 …この絶望的な状況でも、未だ私への
「では、これで
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■あとがき シャーマニズムに半身浸かってる人の本領発揮でございます。…ただ、常日頃からこんなことしてたワケでは全くございません。 寧ろ幼い時分に引っ張り出された――以来、某大師匠から「(嘆きに引っ張られるから)アカン」と実は徴用禁止令が出てたりします。 ――なのにこの手の技能を身につけているのは、大有事においては問答無用で駆り出されるからです(笑) |