圧倒的な 未だ僅かに明るい夜空――から視線を前に戻すと、 宙に浮くリコリスさんの元へ歩み寄り、躊躇もなく気絶している彼の顔を覗き込んでみる―― 申し訳ないような、呆れたような気持ちがぐちゃと混ざって――思わず苦笑いが漏れる。
「見事――としか、言いようが無いな」
リコリスさんを鎮めることができた――とはいえ、あくまで「問題」は解決ではなく沈静化しただけなのだから、 …おそらく、コルチカムさんは見たかったんだろう――私の、本気の
「お褒めに与り光栄です――けど、タダ見とはいい度胸です」 「む――これでも後詰めとして控えていた、…つもり、だったのだがね?」 「なら、私 「…――ぁあ、姫は 「………」
思わぬ存在を持ち出された上に、痛いところまで突かれて――つい、眉間にしわが寄る。 ――…故に、コルチカムさんが後詰めとして控えていたのは、私
「………コルチカムさん…」 「ふむ。なんだろうか」 「……急ぎオンボロ寮に戻って、ジェームズさんに状況の報告をお願いできますか」 「――ああ、任されよう」
なぜか楽しげに笑って、私の …コルチカムさんが、なにを考えているかはさっぱりだが、なにを言うこともせず応じてくれたのは有り難かった――と、いうことにする。
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「さて、帰りましょうか」
座り込んでいるユウさんたちの前で両膝をつき、手を差し出すのと一緒に「帰ろう」と声をかける。 ……うん。明らかにこれは――泣かせた格好、だね!
「ぇぇと…あの、…ユウさ――」 「もう…いやですっ…こんなの……!」 「っ…!」
心の奥底から吐き出されただろうユウさんの 訳の分からない状況下でも喚き散らすこともなく、
「力になりたいのに…!なのに…なのに…っ!迷惑かけるばっかりで……!」 「――」 「私が……もっと、しっかりしていれば……っ」
力になりたいのに迷惑をかけている――そう言ってユウさんは自身の「弱さ」を責める。 ――でも、それは違う。コレは、ユウさんが弱い――なんて、ハナシじゃない。 ……明け透けに言ってしまえば、ユウさんが場違いな …
「
唐突に、話――と、私とユウさんの間に割り込んできたのは、白の小さな飛竜――ネフラ。
「ネフ――…ぃで?!」
――ら、頭全体に髪を引っ張られたような痛みが奔り、その 「何事だ」と半ば反射で振り返ってみれば、そこには三つ編みにしてまとめた私の髪をくわえるノイ姐さんの姿。
「お前がもっと 「――…………、」 「お前ができることを、お前なりにやればいい――とは言った。 「!」 「…え」
ネフラの総括に、思わず声が漏れる――が、よくよく、冷静になって考えてみれば――ご尤も、な気がした。 「ユウ」という ――…そう考えると私の場合、厚意の押し付け――ですらないだろう。
「…コイツの場合、お前に対する好意はあっても、他人に対する厚意はねぇ―― 「…」
なにも、ネフラは間違ったことは言っていない――…のだけれど、彼がそれを言うには些か納得し難いモノがあって。 家族の元へ帰るため――それが「自分のため」となる理屈は分かる。
「
どこか試すような口調で、ネフラはユウさんに選択を促す―― …常識とか良識とか、その他諸々、世の理屈で
「…、さん」 「っ――はい」 「………私、じゃ……さんの、力には――…なれない、ですか…」
疑問を確かめる――ようでいて、答えを受け入れる覚悟を決めるように、ユウさんは一つ一つ言葉を重ねていく。 …とはいえ、不誠実だからと無情な事実を突きつけることが、誠実さなのかと問われれば、
「そう――…ですね、…難しいと、思います」 「っ……………私じゃ……見ているしか…できないんですね――」 「――そーだな。お前が一番イヤだと思ってるコト、だな」 「「――」」
ユウさんに向けられた――ようでいて、私に向けられたのかもしれないネフラの 見守ることしか求められていない――そんな私の求めは、 見守る――それは、行動としてはとても簡単な事。だけれど精神的な意味では、難しいことであり、苦しいことでもある。 …そうでなくては、きっと私は簡単にこの
「…ユウさん」 「っ…は、はい」 「………今更ながら、確認させてください。…あなたは――…元の世界に、帰りたいですか?」
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■あとがき なんと言うか、どこかで腹割っとかないとなー――ということで切開回です(笑) 公式主は無個性主――と謳ってはいますが、異世界トリップしてもへーぜんと順応してる時点で、無個性違う(笑) それでも、パーソナルやポテンシャル的な部分に特別な個性を持たせず(もしくは開示しない(笑)やっていこうと思います。 |