ついにこの時が来た――というヤツなのだろうけれど、 ハロウィーンウィークに際し、NRCへの来訪が警戒されていたモンスターマジカメグラマーは、 …ただ、事前に灰魔師団によって
「へーわですねぇ」 「……」
祭りの空気に浸る人々の表情は明るく、笑顔が浮かび、NRCのどこを歩いていても楽しげな笑い声が聞こえてくる―― 実情を語れば、未だにマジモンの検挙は続いている。 …なにせNRCの
「問題なく招待できてよかったですね」 「……それはテメェの
和やかな賑わいを保つメインストリートを、ハロウィーン用の衣装――ではなく、いつも通りの制服姿のレオナさんと共に、正門を目指して進む。 …ただ、私とレオナさんが一緒に行動している事に関しては、多少注目を集めているようだった。
「…毎年の事、なのでは?」 「……なわけあるか。一度たりとも来たためしはねぇよ――イイ歳した弟のお遊戯会になんて、な」 「…一年目は、イイ歳ではなかったと思うのですが」 「…――だとして、 「まぁ…約一週間前の 「…だから、今回の 「レーオーナーおじた〜〜〜〜んっ!!!」 「っア゛?!」
レオナさんのセリフを声で、更に
「っ…コイツはまた…!」 「ねーねーおじたんどうして?どうしておじたんは海賊の格好してないのー??」
レオナさんの腰に抱き着き、不思議そうに「ねーねー」とレオナさんに疑問を投げているのは、 …レオナさんはチェカくんのことを煩わしがっているけれど、チェカくんの方はまったくそれを意に介していないようで――
「僕ねっ、僕ねっ、おかーたまにお願いしておじたんと同じ海賊のお洋服、作ってもらったんだよ!」 「…あーあーそうかよ――…で、一緒に来たアネキたちはどうした」 「………――おいてきた!」
太陽を思わせる天真爛漫な笑顔をペカーっと輝かせ、 「ねーねー」とご機嫌で懐いてくるチェカくんを前に、
「やぁくん、すま――ぅむっ」 「早速、チェカがお騒がせしてごめんなさいね、」 「……ぃえ、寧ろお出迎えが遅れてしまい申し訳ありませんラフィア様…」 「ふふ、それはどちらかというと私たちの不出来ね。
苦笑いしながらコチラに声をかけてきたファレナ陛下―― 国王たるファレナ陛下をフォローするべき――だが、目の前のラフィア王妃をスルーするなんて以ての外――
「…ゲストの安全のため、我々も十二分に警備は行っています。 「――…そうね。アナタの膝元とはいえ、手放しはよくなかったわ」
立場を弁えた発言ではない――と自覚しつつ、どうにも引っ掛かるものがあってラフィア王妃に注意の言葉を向けた―― …おそらく、対ラフィアさんにおいては、私の返事は正解だった―― ……まぁ、それが信頼に値するのもわかるし、その重さを背負うなんて今更な
「とはいえ、大好きな叔父に懐く息子の手を無理やり取るのは酷なこと―― 「………………ぃえ…あの、それは………ファレナ陛下の……」 「アレは
好奇心にあふれた子供――のようで、 …変な話、彼女が兄さんの友人の奥さん――でしかなかったなら、
「王妃殿下、お戯れはそこまでに」
またしてもラフィアさんへの返答に困っていた――ら、 …おそらく、護衛の彼女とラフィアさんは事前になんらかの「約束」をしていたからなのだろうけれど――……
「」 「…はい」 「不躾なお願いで申し訳ないのだけれど――この子のエスコートを、頼まれてもらえないかしら?」
ラフィアさんが「この子」と言う――と、おずおずと そしてその応援を受けた少女は、面白くなさそうな顔でもにょもにょとつぶやいていたけれど――
「――あ!この子はリウ!僕の一番の友達なんだっ!」 「ぉうっ」 「!!!」
――なにか腰上辺りに軽い衝撃がどんと奔り、ほぼ反射で下に視線を向けてみれば、そこには笑顔で一番の友達を紹介してくれるチェカくんの姿。 …間違いなく、チェカくんに悪気なんてものは無い――寧ろ何なら善意での可能性もある。
「――バカチェカーーーー!!!」 「にぎゃーー!!?」
――おそらく
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【夕焼けの草原】の国王・ファレナ陛下――の妻子を伴ったNRCのハロウィーンウィーク見物は、 …途中、チェカくんとリウちゃんのケンカが勃発したり、 王族の訪問というある意味での特大イベントも何事無く完遂し、 …変な言い方になるけれど、予想以上に順調――というか、
「……まぁ、マジモン案件が発生している時点で『トラブル』は発生してるんですけどねぇ…」
折り返しとなるその日の夜、
「――とはいえ、事前にマジモンを排除するのは 「…こっそりやる連中が増えてる――けど、全体数としては減少傾向だし……。 「疑わしきは罰せず――が定着した時代では、罪状がなくては裁いた方が悪だからな…」 「…そういうやり方も、不可能ではなかったんだが――…さすがに時間がな…」 「………一体いつから考えてたのさ」 「…………プレ公演の後――… 「………ぅん?」
一応言っておくと、普通に考えたらヴォルスさんたちの初動は遅い―― 新代が行ったプレ公演は、NRCの生徒だけに披露された――のに、 更に言えば、音楽と芸能のアレコレを知っているヴォルスさんなのだから、 追及の意味を込めてヴォルスさんをじぃーっと睨んでいると、 まったく思ってもみない人物のリアクションに思わず首をかしげていると、
「…聞いていたのか?」 「いえ、顔合わせでのシュテルの絡み方がらしくなかった――のと、ワースさんなら 「「「ぁあー……」」」 「………それ、後者への納得ですよね?…ねぇ?!」
シュテルさんのことは、関係者であっても厳密な意味での身内ではないので事情はわからないし、しようがない――が、ワースさんは違う。
「…まぁワースも、ファンタピアを想っての事――だったんだろう。
仕方ない――と、ご尤もなことを言うのは、警備課は実働班の班長であるロンゴーさん。 …――でも、
「…一応言っておくと、話を持ち掛けたのはシュテルの方――…ワースさんも、立場上止む無く…だったと思う」 「…………――…立場上?」 「…妖精族は血を重んじる一族――と言えばわかるか?」 「ぁー……あー…そういう
ワースさんが、そしてシュテルさんたちが悪い人ではないと分かっている――
「… 「…………なにゆえ、ですか」 「…まず、 「……――」 「…っくふふ……それは確かに――だ。そして
ヘンルーダさんの理屈も、ロンゴーさんの納得も、理解る。
「………彼の団長殿については、どーなんですかねー」 「「ぁあー………」」
魂の規格において、神子と肩を並べられるのは神子だけ――だとしても、 …この世界に
「……仮に、アレが同等以上の影響力が有していたとして――も、…アレにお前と関わる気はないと思うぞ……」 「………………、………ぁの…そ、れは――…より問題では…っ?! 「……… 「……確かに、 「…ふむ。…お嬢がそこまで 「……それは――… 「「「………バカ」」」 「――ッ!!!」
うっかり失ってしまった平静さによって、ぼろと口に出てしまった本音。 「天才」と書いて「バカ」と読むタイプの「
「ぃ、いやっ…ぁああくまで言葉の綾――にしてもオフレコ!オフレコでぇ!!」 「………まぁ…レーイチも言っていたし……気にしないんじゃないか?」 「いやいや、十一も年下の相手に『バカ』と言われて気を害さないほど大人でもないだろう――実績のない
ふふと笑いながら愉しげに言うロンゴーさんを前に眉間にしわが寄る――が、ロンゴーさんの言い分は尤もだ。
「? どうしたお嬢?」 「……いえ、逃げる相手を前に待っていてもしようがないな――と」 「………それ、手を出した方が負けの 「ええ、だから――手を出さざるを得ないだけのモノを魅せようかと。…近々 「ほほぅ?これはこれは」 「………ロンゴーさん…間違ってもコル爺に教えないでよ――…今でさえ、リコリスの一件で
普段とは違う方向にギアを入れた私――に、愉快そうに笑うのはロンゴーさん。 久々の感覚――不安を押し退け湧く愉悦に心が躍る。
「……まずは30日を乗り切らんことには――です」 「「「………」」」 「……本当に…アレで大丈夫、なのですか…」 「…ジェームズさんも見てたじゃないですか、演りきったところ」 「…その後しばらく行動不能に陥った所も見ているのですが…」 「それは――まぁ…初回でしたから。 「…ソーダネー――…仮に、ぶっ倒れるとしても3 「………」 「……まぁ、否定はできませんね――最後の最後、競り合いでモノを言うのは『折れぬ意思』ですから」
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■あとがき ある意味で脈略のないキングスカラー王家訪問と、運営(現場)会議でした。 我が家における王妃殿下(レオナ義姉)は、近衛兵一族の出身で、キングスカラー兄弟の幼馴染み。因みに陛下の二個下。なのでオニーチャンとタメ。 正式に結婚するまでは近衛兵(SP)として現場に立っておりまして――黒服の彼女は同期(同級)の腹心であり親友だったりします(笑) |