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  リドルくんに誘われる形で向かったスイーツコーナー――の道すがら、  劇場制服の時と同じく、認識阻害の魔法が施された片目の仮面はパレードの衣装でも使用している――ので、今もつけている。  …それでも、ハーツラビュル生についてはリドルくんが適当に切りをつけてくれて、 
 「売り切れたァ………!」 
  スイーツコーナーの端、ひっそりと置かれていた――はずのアルテさんの新作ケーキは、  目的のモノが並べられていただろうプレートの上、 
 「くっ……!ないと思ったらなおさら食べたくぅ…っ」 「……キミにも…そういう俗的…というか、庶民的な情動があるんだね…」 「……好きなモノへの 「…だとしたら、キミならいくらでも手の打ちようがあるだろう?」 
  お目当てのスイーツの売り切れを嘆き、落胆する――私を前に、逆に冷静になったらしいリドルくんは落ち着いて様子で「次手」と口にする。  ――しかし、冷静になって考えると、それ以外の 
 「……もし、純粋に好評故に売り切れた――のであれば、ワンチャンあるのでは?」 「…一応言っておくと、なんでもない日のお茶会のスイーツはトレイの担当だよ」 「…夕食にスイーツが提供されることは?」 「それは…なくはないけれど――……食べに来るつもりかい?」 
  ハーツラビュル寮伝統の、なんでもない日のお茶会に――となれば一番簡単だったのだけれど、  寮の夕食の席に他寮生が同席する――おそらくそれは、手順を踏めば正式に認められるだろう。 
 「夕食に出すだけ作るのであれば、3個くらい都合してもらうことは可能かなと…!」 
  ハーツラビュルの寮長と懇意である――とはいえ、そこを介して「ケーキを食べる」という目標を達成するのはリスキーだ。 
 「――ただ、不評だったなら本日限りのメニューなのですが」 「「!」」 
  空のトレーの前であれこれと思案していたところ――に、 
 「クローバーくん他、NRCのスイーツ評論家たちからそれなりの評価をいただきましたので、 「おおっ!やった!」 「…ただ、その前に――マネージャーには試食をしていただきたいのですが?」 「ぇ…」 
  思わぬ爆速チャンスタイムに思考が停止する――… 
 「……………………」 「……」 
  情けない感情が、濁流の如き勢いで口から噴き出しそう――  近くにはリドルくんしかいない――とはいえ、 
 「…………………………………」 
  湧き上がる感情は途切れることなく、抑えつけるが故にその勢いは強くなるばかり―― 
 「…マネージャー」 「…」 「職長にお願いして、打ち上げの席にも並べることになっていますので――…その時に、お願いしますね」 「ッ――……そ…!それを早く言ってくださぃいぃぃ〜〜〜…………!!!」 
  安堵による緩みなのか、それとも歓喜による決壊のなのか――とにかくこれまで感情を抑え込んできた堰が崩壊し、  頭でも胸でも暴れ狂う、プラスマイナス入り乱れた感情たちを落ち着けるべく、 
 「…………大丈夫、かい…?」 「……ええ…まぁ………なんとか……」 「……個人的には嬉しいリアクションでしたが――……だいぶ、負担をかけてしまいましたね……」 「…いえ………これも祭りの魔力――…と、これまで抑えてきた 「…――はい、なんでしょう?」 「件のチーズミルフィーユを一つ、私の友人に都合してもらえますか?」 
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|  今夜のハロウィーンパーティーにおいて、  本番の準備が行われている大ホールではなく、最終確認を行っているリハーサル室でもなく、  あと一時間もしないうちに、ファンタピア劇団にとってメインイベントであるハロウィーン特別公演が開演となる。  何度も言うようだけれど、コレはゴーストによる、ゴーストのための特別な公演――  私が舞台の上で失敗する――観客の歓声を引き出すことが出来ない、なんてことは普段なら起こりえない。 
 「(私は私であって『私』じゃない――………んだけど、なぁー………)」 
  ――なんて、頭に言い聞かせてみるものの、今回の公演に関しては  今のまま成功しても、納得なんてできるはずがない――    ――…さすがに、  …正直、意味が分からない――というのが本音だ。自分の事なのに。 
 「――おやまぁ、心の底から疲れているねぇ?」 「………」 
  …おそらく、ご指摘の通りなのだろう。……いや、まぁ…当然の 
 「よくまぁここまで頑張ったものだよ――…へーわな異世界人の胆力で」 「………」 「いやいや、へーわな 
  ニヨと愉しげな笑みを浮かべ言う  …確かに、元の世界であったなら、ここまでは頑張らなかった――  ――で?それが故に「ここまで」が、へーわな異世界人の 
 「っ…、……」 「………――おやあ……コレは本当に重症だ」 
  キョトンとした表情で「重症」と言うミルさん――に、納得すると同時に、なんとも情けない気持ちになる。  諦めたくない気持ちも、悔しい気持ちも、そして許せない気持ちも――この胸の中にはある。 
 「…………寝る、かい?」 「………」 「時には勝負を捨てて、試合に勝つことも必要だと思うよ?」 「………」 「――まぁ、キミに正論をぶつけたところで 「……それ――で?」 「ああだから――ボクは、何もしない。 
  なにか、割り切ったような調子でそう言い切るミルさんに――…やっぱり、イラっとする。 
 「――ぁああもう!毎度毎度お前は話を勿体つけすぎなんだよ!! 
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| 「…これは――…特大の塩を送られた格好……なのかな?」 「いや全然?これはあくまで俺の独断――アイツの意思も都合もまーったく関係ない、俺の好意だよ」 「…………」 「…向こうの狐共の事は知ってるから疑うのは分かるんだけど――…違う、でしょ?」 「………そーだけど、ねぇ〜………」 
  具体的な理解を示された上で、ご尤もなことを言われた――…ものの、だからこそ納得できないというか、腑に落ちないモノがあって。  ……まぁ、正式な挨拶どころか神子の 
 「……にしても………どーゆー…コト?」 「…アイツらの中で俺のキャラ付けが『神子にも靡かない孤高の博狼様』ってことになってるから――だと思うよ」 「………ここう…」 「別に 「……それが、私にとっては一番の疑問なんだけど……」 「…好みと適性と相性はイコールにはならないってことだよ」 「……そこをとことんまでこだわり抜くのが獣神サマだと思うんだけどなーぁ………」 「…そこは――ヒトの都合、だよ」 「…」 
  行き合う  …かといって、初対面で振っていいような話でもない――…以前に、 
 「……女子の方が良かった?」 「………強くは、否定しないけどさぁ……。 
 …また、ご尤もなことを言われてしまった。  彼らのメンタリティーにははっきりとした性の区別がある――が、  性別とはあくまで魂の「器」の区分―― 
 「もうだいぶ、は自分の魂の 「……神子に選ばれてる時点で、ヒトの規格から外れてるのはわかってるよ――」 「…………あぁうん…じゃあ、認識を改めるべきは周り――への 「………ぅん?」 「…魂を選り好むのは獣神――と、ゴーストだけじゃあないってハナシ」 「…………ぇ…」 
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| ■あとがき 心が弱いわけでも、根性がないわけでもない――のですが、心の胆力が、通常(刀乱版等)よりも弱い設定です。 ただ通常版も、トラウマから逃げるために歯を食いしばってる――ってな歪んだ強さなので、問題があることには変わりないんですけどね(笑) 次回で遂にHW編第一部完結です!エンドレスなハロウィーンはとりあえずスルーするからHW編は次回で一段落!です!! |