【 帰還 】

 

【レイリ】
 ありえない。
【コージロー】
 ……………。
【レイリ】
 この私がこの程度のことでコージローの世話になるなんて…!!
【コージロー】
 巨大で凶暴かつ残虐なことで有名な千鳥が相手だったんだ。
大きな怪我もなく羽根を手に入れただけで上等だと思うんだが……。
【レイリ】
 あのねぇ、こちとら吸血鬼の真祖なのよ?
千鳥程度にてこずってるようじゃ、真祖失格なのよ!

 

 そう、吸血鬼の真祖は常に強くなくてはいけない。
特に私のような吸血鬼貴族に名を連ねる者ならばなおさらに。
 ……だというのに、中の上といった程度の巨大な鳥の魔物――
千鳥に後れを取るなんて…!!
しかも、狼男に担がれて帰還どうなのよ。自分よりも格下の手を借りて帰還て…!
御爺様にこれが知れた日には……、考えただけで寒気がするわ…。

 

【レイリ】
 はぁ……、こんなことでコージローの世話になるなんて…。
【コージロー】
 …そう後悔するなら、今度からはちゃんと俺を連れて行ってくれ。
【レイリ】
 ……嫌よ。私1人でどうにかできるのに。
【コージロー】
 本来ならな。
【レイリ】
 うっ……。
【コージロー】
 俺はお前の世話をするために、屋敷を出てお前について回っているんだ。
たまには俺に甲斐のある仕事をさせてくれないか?

 

 くそう…。なんだか嫌とは言えない心境になってきた…。
コージローめ……相変わらず人を言いくるめる――宥めるのが上手いわね…。
さすが、あの魔物の巣窟でお母さん役やってただけのことはあるわ。
 でも、そう簡単に「わかりました」と返せる問題じゃない。
こればかりは吸血鬼貴族としてのプライドにも関わるのよ。

 

【コージロー】
 なに難しいこと考えてるんだ?
【レイリ】
 難しいことなんて考えてないわよ。極々単純なことしか考えてません。
【コージロー】
 なら、さっきの答えは了解の形で受け取っていいんだな。
【レイリ】
 はぁ?なんでそうなるのよ??
【コージロー】
 単純なことしか考えていないなら、答えも単純。
吸血鬼として、上手く下部を使う――そういう結論でいいんだろう?
【レイリ】
 …………。
【コージロー】
 無言は肯定と受け取っていいか?
【レイリ】
 はぁ〜…なんかコージローと話してると頭使うの疲れてくるわ。
【コージロー】
 レイリは物事を難しく捉えすぎだからな。
【レイリ】
 アンタは物事をプラスかつ、素直に受け入れすぎなのよ。
【コージロー】
 だからレイリの世話役に抜擢されたんだろうな。
【レイリ】
 ……公爵サマには感謝感謝ですねー。

 

 

【Gallery TOP】  【TOP】