「ホウエンに行きたいぃ〜?」

 

どかりとキラのベットの上で胡坐をかき不満げに言葉を返すのはゴウカザル――赤焔。
その主人であるキラは床に正座して「うん」と簡潔に言葉を返した。

 

「キラよ。何故突然ホウエンなのじゃ。シンオウやマーキャでは駄目なのか?」
「うん、駄目なんだ。私はホウエンの四天王さんと戦いたいんだ」
「あー…こないだホウエンに行った時に会わせてもらった連中か」

 

レントラー――蒼谷がそう言うとポケモたちは納得したように「ああ」と言を漏らした。
届け物をするために従兄――ソウキに会うために行ったホウエン地方。
そこでソウキに会ったときにであったホウエン四天王。
その闘志に触れたキラはいつの間にかホウエンのポケモンリーグに興味を持つようになった。
そして、好奇心の強いキラは我慢しきれず今回の提案にいたったのだった。

 

「ホウエンに行くのはいいのよ。色んなところへ行くのはいいことだと思うからね。
でも、なんでパーティー総入れ替えなのよ!」

 

バンッ!と赤焔がベッドを叩く。
幸いベッドは壊れることはなかったが、
赤焔の叩いた場所の目の前にいたキラはビックリして硬直してしまった。
慌てて蒼谷がキラに「大丈夫か?」と声をかけると、
キラはその数秒後に「大丈夫」と言葉を返して赤焔の方を見た。

 

「みんなに少しでも休憩を取ってもらいたくて」
「休憩ぃ?そんなものいらないわ。だって私たちはキラと一緒にいるだけで安らぐんだから」
「そうそう、キラと分かれたら休憩じゃなくて逆にストレスがたまっちゃうわよ」

 

赤焔とフライゴン――緑翼が「うんうん」とうなずきながら言う。
キラはトレーナーとして、二人の言葉がとても嬉しいかった。
だが、それでもキラはホウエンを旅するにあたって
新しいメンバーを組むことを頑として譲らなかった。
ポケモンたちを休ませたい。
ということもあるが、キラは新しいパーティーで自分の実力を試したいということもあった。

 

「お願いみんな、私の我侭を許して?」

 

上目づかいで尋ねてくるキラに思わず赤焔は「う゛っ」と言葉を詰まらせた。
そして、「ね?」とキラに問われた緑翼も言葉を詰まらせた。
しばし続いた沈黙を破ったのは蒼谷だった。

 

「キラが望むなら俺は応えるだけだ。俺はキラの帰りを待ってるぜィ」
「蒼谷さんのおっしゃるとおりですわ。キラ様のお心のままに…」
「私も蒼谷と同意見」
「…お主がそこまで言うのなら妾も従うぞ」

 

蒼谷を筆頭にキラのホウエン行きに賛成してくれるポケモンたち。
彼らの言葉を聞いてキラはその表情を明るくする。
だが、それと打って変わって渋面になっていくのは赤焔と緑翼だった。

 

「いい加減認めてはどうじゃ」
「…っ、わかったわよ!私もキラがホウエンに行くことは許可する!」
「え、ちょっと!本気で言ってんの!?赤焔!」
「本気よ。でもね、ひとつだけ条件があるわ」

 

ピッと人差し指を立てて赤焔はキラを見る。
キラはどんな注文をされるのか不安なのか表情を強張らせた。

 

「情報伝達役として黒鴉を連れて行きなさい」
「……ドンカラスの黒鴉?」
「そう、アイツならあんたを任せられるわ」
「あ、そういうことなら、朱羽も連れて行きなさい!そうしたらホウエン行きを許可するわ!」

 

どんな大変なことを言われるかと思いきや、赤焔たちの条件はそれほど難しいものではなかった。
それに、黒鴉に関してはもともと連れて行く予定だった。
ボーマンダ――朱羽は少々予想外だったが、それでも簡単な条件といえば条件だろう。

 

「わかった。二人の言うとおりに黒鴉と朱羽はホウエンに連れて行くね」
「はぁ…本当は私がついていきたいんだけどねぇ」
「ゴメンね、赤焔。でも、私、自分の実力を確かめてみたいんだ」
「わかってるわよ。だからOK出したんでしょ。頑張ってホウエンでもチャンピオンになってくるんだよ!」
「うんっ…!」