「はぁ…、キラは元気にやってんのかしら…!」
「とりあえず、黒鴉がついているから問題ないと思うけど――朱羽のバカがバカやってなきゃいいけど」
「……やっぱり朱羽はいらなかったんじゃないの?」
「でも、ボディガード役は黒鴉にはできないでしょ?」
「「はぁ〜…」」
同時に大きなため息をつくゴウカザルの赤焔とフライゴンの緑翼。
彼女たちの思考は今キラ――主人のことでいっぱいだ。見知らぬ土地――ホウエン。
そこでキラは今一人旅をしている。
とりあえず、情報伝達役としてドンカラスの黒鴉、ボディーガード役としてボーマンダの朱羽をつけているが、
それでもやはりふたりは自分たちがキラの傍にいられないため心配だった。そんなふたりの様子に呆れているのがキラの一軍の他のメンバーたちだった。
「いい加減に諦めろよ。いくら心配したってキラはお前たちのこと手持ちにゃ加えてくれないんだぞ」
「うるっさいわね、わかってるわよそんなこと!」
『それでも心配なものは心配なのよ!』
「――っとあ、危ねェな!」
突然もとの姿に戻りドラゴンクローを決めてくる緑翼。
レントラーの蒼谷がギリギリのところで緑翼の攻撃を避けたからいいようなものの、
擬人化した姿で緑翼の攻撃を受けていた日には恐ろしいことになっていただろう。その恐ろしい場面を想像した蒼谷は慌ててもとの姿へと戻り、トリトドンの紅霧たちの後に隠れた。
「そなたたちはキラのことを信用していないようじゃな」
「なっ!そんなことないわよ!」
「ならばなぜそこまで心配する。信用しておるのならば心配は無用であろう」
「そうですわ。紅霧さまのおっしゃるとおりです」
「キラなら無事にホウエンのリーグで優勝して帰ってくる」
紅霧たちにそう言われると赤焔たちは返す言葉が見当たらないのか水をうったように静かになった。
しばしその場を沈黙が支配するが、不意に赤焔が口を開いた。
「紅霧の言うとおり私たちはキラの実力を完全に信用していなかったのかもしれないわね」
「ええ、本当に信用していたら紅霧たちのように落ちついていられるものね…」
赤焔と緑翼がしゅんとなる。
だが、紅霧たちは誰一人として彼女たちを責めることをしなかった。
「でも、バカ朱羽が何かしでかしてないかと考えると…!」
「やっぱりそこにいきつくわよね…!」
「……そればかりは妾も『ふぉろー』のしようがないのぅ」
『(…キリがねェな)』