ビヒョオォォ…!

 

吹雪く雪はキラの視界を遮り視界はほぼゼロに等しい。
だが、それでもキラは進ん行く。自分の目的を達成するために。
今のキラの目標。それは、知り合いからもらったイーブイを進化させる事だった。
そのままでも十分に可愛いのだが、いかんせ戦闘能力が低い。
なので、イーブイのままで育てても本人のためにならないと考えたキラは、
とある噂を聞いてこの大吹雪きの中217番道路までやってきたのだ。

 

「…これが噂の……」

 

キラの目の前にあるのは大きな岩。しかし、普通の岩とは違う。
その岩は氷に覆われており、美しかった。

 

「凄く冷たい……こっちまで凍ってしまいそう…」

 

手袋をした手で岩に触れると意外なことにすぐに岩の冷たさが感じられる。
思わずキラは大岩に見惚れた。これなら噂は本当かもしれない。

 

「さぁ、用意は出来てるよ。キラ、はじめるかい?」
「うん、はじめよう。出てきて、イーブイ」

 

ポンッとキラはモンスターボルを放る。
いつもであればポンッと音をたててポケモンが出てくるはずなのだが、今回はそうもいかないらしい。
ぼさっと音を立てて雪の中に落ちるモンスターボール。
思わず時が止まるキラ、そして赤焔、緑翼。

 

「…こ、故障?」
「まさか、キッサキにいたときは開いたじゃない」
「でも……」
「機械系は蒼谷よ蒼谷。ほらっさっさとでてきなさいよ」
『ぶほはっ!』

 

赤焔がキラの腰からボールを奪い取り乱暴に放る。
すると中から蒼谷が勢いよく飛び出し思いっきり雪の中に放りこまれた。

 

『冷た!寒っ!!』
「男の癖にギャーギャー煩いわね。寒いなら――」
「さっさとボールの故障か調べてボールに戻りなさい!」

 

この大吹雪きのように冷たい赤焔と緑翼の言葉に蒼谷は少なからず落ちこむ。
そんな蒼谷の心境を感じ取ったのかキラが「蒼谷、ごめんね」と謝罪の言葉をかけてくれた。
そんなキラの言葉に救われた蒼谷はすぐに人の姿を取り、イーブイの入っているモンスターボールを調べ始めた。

 

「こりゃあ…」
「なによ」
「ボールに故障はねぇよ。ただ、中にはいってるやつが出たがらないだけだぜェ」
「はぁ!?」

 

ボールを調べ終わった蒼谷はすぐにボールに戻っていく。
だが、そんなことよりも新入りの暴挙に怒りを覚えていた。

 

「新入り!アンタのためにこんなところまできたっていうのに出てこないとはどーいうことよ!」

 

雪崩が起きそうな大声で怒鳴るのは緑翼。その表情はかなり怒りに染まっている。
だが、それもそのはずか。ここは雪――氷の世界。
ドラゴンタイプと地面タイプを持ち合わせる緑翼にとっては地獄のような場所だろう。
しかし、そんな緑翼の言葉に返答は帰ってこない。
それがさらに緑翼の不評を買い緑翼はイーブイの入っているボールを高く振り上げる。

 

「ちょっ、緑翼!それはやめなさいって!」
「離しなさいよ!赤焔!この新入りに制裁をー!」
「落ちつきなさいよ!大人気ない!!」

 

赤焔と緑翼がもみ合っているとぽとりとイーブイのボールが緑翼の手から落ちる。
それをキラは静かに拾い、ボールに耳を近づけた。

 

「…寒いの苦手なんだって。それと、氷ポケモンよりも草ポケモンに進化したいだって」
「やっぱり制裁をー!!」
「だからー!やめなさいよー!」