「「はぁ〜…」」
蒼谷と朱羽の口から深いため息が漏れる。
それを聞いた灰山は不思議そうな表情を浮かべて2人に声をかけた。
「なんだよ、2人とも死にそうな溜息ついて」
「(死にそうだという認識はあるのか…)」
心底不思議そうに尋ねる灰山の後ろには青波がいるが、青波はこの話に関わりたくないのか、
聞き耳は立てているようだが、蒼谷たちへ視線のやろうとはしなかった。だが、それを蒼谷たちは気にするつもりはないようで、灰山の質問に答え始めた。
「こないだキラと話してたら赤焔に突然、火炎車決められてよ…」
「俺はキラに頼まれて手伝いしてたら緑翼からドラゴンクローだぜ…」
「?当然の結果だろ?」
「(…それが当然じゃないんだ)」
「なにを当たり前のこと言ってんの?」と顔に書いてある灰山。
しかし、これはどう考えても「当たり前」ではない。
世間一般的に見て、これは「異常」だ。ところが、生まれた頃からこんな状況の中で暮らしてきた灰山なのだから、
これが当然のものだと認識している。
加えて、他人のこと、世間のことを気にする性格でもないので、
この状況を「当たり前」だと思い込むことに拍車がかかっていた。因みに、灰山と同時期に生まれ、尚且つ同じ環境で育ってきた青波ではあるが、
彼は灰山と違って、世間に対しての関心が高いため、
割と早い段階でこのキラパーティーの異常に気づくことができた。なので、早々に自分のあるべきポジションを確保し、男子軍でもそれなりの立場を手に入れている。
ある意味で灰山と真逆なのだが、この2人はコンビになることが多いので、
バランスが取れてちょうどいいといえば、ちょうど良かったりした。
「ったくなんだよ!図体でかいくせにアホキャラでよ!だから緑翼たちもノーマークなんだよっ!!」
「おい!勉強が苦手だってのは認めてるけど、アホは認めてないぞ!」
「うっせ!お前アホだろ!誰がどう見たってアホだろがッ!!」
自分たちの苦労も知らずに、そのアホキャラのおかげで緑翼たちの制裁対象にならない灰山。
それが酷く気に触って朱羽は思わず怒鳴る。
が、そんなことは知らない灰山は単に馬鹿にされたと思い、朱羽に対して怒鳴り返す。
もちろん、そこで大人しく引き下がる朱羽なわけもなく、思い切り怒鳴り返す。
こうして、なぜか朱羽VS灰山が成立してしまうのだった。取っ組み合いになって本気で喧嘩する朱羽と灰山だったが、
それを蒼谷も青波も止めようとはしなかった。
「ある意味、こんなんだから朱羽は緑翼たちの怒り買うんだろうな…」
「結構調子に乗るし、一言多かったりするから。朱羽」
「けどよォ…、俺の具体的な理由って何だよ……!?」
「立場のせい」
「改善のしようねェ…!!」
ひたすらに打ちひしがれる蒼谷だった。