手に持っていたボールを宙に放り投げる。
すると、ボールは最も高い位置にくるかこないかのところで、ポンッと音を立てて開き、
ボールの中から一体のラプラスが姿を見せた。姿を見せたラプラスは、敬意を表すように深く頭を下げると、
にっこりと微笑んで口を開いた。
『お久しぶりです、キラ。お元気そうで何よりです』
「うん。紺優も元気そうでよかった」
キラの放ったボールから出てきたラプラスの紺優。
彼の元気な姿を見たキラは嬉しそうに紺優に抱きつくと、紺優も嬉しそうにキラに擦り寄った。――が、不意に自分に突き刺さった殺気に気づいた紺優は、
困った様子の表情を浮かべながらキラから離れると、自分に殺意を抱く存在に向かって言葉を向けた。
『緑翼、久しぶりに会った幼馴染にその顔はどうかと思いますよ』
「ぅるっさいわよ!」
『相変わらずですか……困ったものです』
「次言ったらぶった斬るわよ…!」
「落ち着きなさいよ緑翼。弱点つかれてるアンタが圧倒的に不利よ」
「うぬぬぬ…!!」
『セキリーダーは更に緑翼の宥め方が上達したようですね』
「まぁ、同類故よね」
ニコニコと笑顔で赤焔に褒め言葉を返す紺優に、
赤焔は少しの自嘲を含んだ笑みを浮かべた。とりあえず話が落ち着いたところで、
不意にキラの母親であるヒイナが紺優に近づくと、慌てて紺優は頭を下げる。
ヒイナはいきなり下げられた紺優の頭に少しも驚いた様子は見せず、
紺優の頭を少し撫でると、紺優に頭を上げるように言った。
「あなたを呼んだのは人間不信の子供たちがいるからよ。一名、特に重症の子がいるから注意なさい」
『お任せくださいヒイナ様。お守りのプロと呼ばれるこの紺優にお任せを』
自信に満ちた声音でそう宣言する紺優にヒイナは「任せたわ」と言葉をかけると、
自分のように立っているキラに目を向ける。
いつもと変わらない無表情――に見えるが、母親であるヒイナにはそう見えていなかった。
「キラもお守りの対象かしら?」
『まさか。キラは私の誇るべきトレーナー。守るべき存在ではありますが、お守りの対象ではありません』
笑みを浮かべて紺優は最後にキラにそう言うと、
キラは嬉しそうな表情を浮かべて紺優に「ありがとう」と礼を返した。そんなキラと紺優を見てヒイナは「まだまだ子供ね」と思いながら何事もなかったかのように下がっていく。
すると、ヒイナと入れ替わるように不意に翠葉がキラの元へとやってきた。
「キラ、これ持っていって」
「……雷の石…?」
「ん、多分役に立つから」
『かなり使用範囲が限られていますが……』
「でも役に立つと思う。――勘だけど」
「うん、翠葉の勘、あたるから。…翠葉、ありがとう」
「ん」
気にするなとでも言うかのように翠葉がキラに返事を返すと、
図ったかのように飛行船の出発を告げるアナウンスが響く。
名残惜しい気持ちになりながらもキラは紺優をボールに戻すと、
後ろいる赤焔たちとヒイナの方に向きかえった。
「ジョウト地方に――いってきます」