うっそうと茂る緑。木々が空を覆い隠すように伸びている。
そのせいか、まだ昼間だというのにトウカの森は暗い。
あまり暗いところが得意ではないは、
小さなため息をついて下げていた頭をぐいと持ち上げ空を望んだ。
の目に入ってきた空に太陽はなく、
また空でさえもその青は少なく、大半を占めているのは木々の緑だった。

 

ガサガサッ。

 

不意に木々が揺れる音が聞こえる。
だが、はこの音の主に心当たりがあるのか怯える様子もなく音のした方に視線を向け、ひとこと放った。

 

 

 

 

 

ろしく

 

 

 

 

 

バサバサッ。――ドンカラスの名を呼ぶと森に鳥の羽音が響く。
そして気づけば、の腕には一羽のドンカラスがとまっていた。

 

「何か見つかった?」
『いいや、特に何もなかった』

 

が問うとは首を横にふりながらに答えを返す。
はこのトウカの森を抜けるためにを偵察に向かわせていたのだが、
このトウカの森には特別報告するような危険は問題はないようだった。
からその報告を聞いてはほっと胸をなでおろした。

 

『怖かったか?』
「…少しだけね。でも、が戻ってきたから平気」

 

自分を気遣ってくれるを優しく撫でながらは安心したように笑う。
に撫でられて気持ちがいいのか目を細めて嬉しそうにしている。
そんなの様子を見ては嬉しそうに話し出した。

 

「こうしてと旅ができるなんて嬉しい」
『そうか?』
「うん、だってはじめは、私に懐いてくれなかったから…」

 

が出会ったのはシンオウ地方のハクタイの森。
傷ついたヤミカラス――が発見したのが始まりだった。
当初は、傷が回復したらを野性に返すつもりだったのだが、
はなぜかを手放さずに自分の手持ちにをおいた。
はじめはを信用しなかっただったが、徐々にを信用するようになり、現在に至っている。
そして今回がホウエン地方を旅するにあたって、
は一軍のリーダーである赤焔直々に二軍のリーダーに任命された。
はじめはに懐かなかったも今ではすっかり信頼のおけるポケモンになっていた。

 

『(人間嫌いだった俺がここまで人間を信用するようになるとはな…)』

 

そんなことを思いは心の中で自嘲する。
人間に傷つけられ人間という人間を嫌ったというのに、なぜかだけは憎むことができなくて。
昔は大嫌いだった人間が――好きとまでは言えないが憎らしく思わなくなった。
そして、自分の主人であるに対しては絶対の信頼を置くようになっていた。

 

、これからもよろしく頼む』
「うん、よろしくね、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■いいわけ
 金剛石夢主の二軍リーダーを務めるドンカラス――くんの夢でございました。趣味満載の自己満足作品です。
因みに、デフォルト名は黒い鴉と書いて「黒鴉(クロス)」になっております。無理矢理な当て字です。
個人的にドンカラスが好きなので、また夢が突発的に製作されるかもです。