「………っ」
吸い込んだ空気は相変わらず浜の香りがする。
だが、今吸い込んだ空気は少しだけ木々の香りが混じっているような気がした。
連日、船の上での性格を強いられていた彼女にとって、久々に感じる地上の空気はとても快いものだった。
しばしその場の空気を楽しんだ後、少女――はゆっくりとポケモンセンターへと足を進めた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
今、がいる場所はジョウト地方のアサギシティ。
が暮らしているシンオウ地方からはずいぶんとはなれた場所だった。
だが、強くなるために、多くのポケモンと出会うために、
旅をするポケモントレーナーであるにとっては、この遠出も特別変わったことではない。
極々ありふれた場面だ。
しかし、今回がアサギシティにやってきたのは、
あるポケモンと対面するためなのだが、そのポケモンは少々特殊なポケモンだった。
幼い頃に一度だけ見たポケモン。銀色の翼に大きな体。
それは、とても神々しいもので、幼いながらにはそのポケモンが人間と同じ世界に暮らすものではないと直感した。
そう、幼き日にが見たポケモンは――

 

「銀の翼、ルギア」

 

が追い求めているポケモンとは、伝説のポケモンといわれているルギア。
鮮明に残る銀色の姿を頼りには、
カンナギタウンやルネシティ、色々な土地をめぐってルギアに関する情報をかき集めた。
そして、その多くの情報をヒントに導き出された答えが、ジョウト地方の渦巻き島だった。
ほとんどの情報が不確かなもの。
しかし、相手は存在の有無すら確実ではないルギアなのだから、それは当然の結果といえば当然だった。
無駄足になるかもしれない。もっと悪ければはありもしない存在を追っているのかもしれない。
そんな考えが一度は浮かんだが、それはすぐに消えた。
あの衝撃が幻だったとは思えない。
の脳裏に焼きついたあの美しい銀が夢だとは思えなかった。
ポケモンセンターのジョーイから借りた渦巻き島近辺の地図を見つめながらは一考する。
渦巻き島は入り口が四つ。さすがに渦巻き島の内部の地図まではない。
なので、渦巻き島を攻略するには数日間は渦巻き島に篭ることになるだろう。
まぁ、幼い頃から洞窟篭りをしているにとってはさして苦になるものではないが。
さっさと結論を出したは地図を元通りに折りたたんで、それを手に立ち上がる。
そして、ジョーイにお礼を言ってそのままフレンドリーショップへと足を運んだ。

 

 

 
 
 
 
 
少しだけシンオウとは品揃えが違うが、目立った違いはない。
いつも通りの必要なアイテムを買い物かごに放り込んでいく。
回復アイテムといざという時のための脱出用アイテム、そして生きていくために必要な食料。
もちろん、人間の分とポケモンの分両方を買い物かごへ放り込む。
すると不意にガタガタと腰に装着しているモンスターボールが揺れる。
どうしたのだろうかと思って腰からボールをはずして、はボールを自分の目線と合うところまで持ってくる。
すると、ボールに入っているボーマンダのがなにかを激しく主張していた。
あたりを見渡すとまた不意にボールが揺れる。そのときに目にとまったのは、
がいつも使っているポケモンフードのワンランク上の商品。
最近、CMの影響で品薄になっていてあまり見かけることはなかった。

 

「…これ?」

 

そうに尋ねるとはとても嬉しそうに首を上下に振る。どうやらこれが彼のお目当てらしい。
これからそれなりに大変な状況に付き合ってもらうのだから少しぐらいの贅沢は許されるだろう。
ギブアンドテイク。ポケモンとトレーナーの関係にもそんな考えは必要だろうと思う。
ドラゴンタイプと電気タイプ用の商品を手に取り買い物かごへ。
そして、最後に買い物かごの中身を確認して飼い忘れがないかとチェックする。
すべてのものがそろったことを確認してはレジへと向かった。

 

 

 
 
 
 
 
フレンドリーショップから少し歩いたところでともう1体のポケモン――レントラーのをボールから放った。
元気よく2体のポケモンは飛びだし、気持ちよさそうに大きく伸びをした。

 

『っかー!久々の外だぜ!』
『やっぱ、ずっとボールの中にいると体が硬くなるな』

 

久々に感じる開放感には嬉しそうに笑い、
は2体のそんな表情を見てほっとしたような表情を見せる。
船の上でボール内ので生活を強いられたときの2体の機嫌の悪さといったらなく、
は少しだけ2体の機嫌が直らないのではないかと心配だった。
だが、それもの杞憂ですんだ。心の中でよかったと思いながら、は海へと視線をやった。
時刻は午後3時過ぎ。照りつける太陽の日差しはまだ衰えそうにはない。
太陽の光が反射してキラキラと光る水面がとても綺麗だった。だが、この美しさもあまり長く続かないだろう。
季節は初夏。多少日は長くなりつつあるが、それでも6時ともなればだいぶ日が沈む。
おそらく今から渦巻き島に向かっても特はない。
ただ渦巻き島で無駄に一夜を明かすことになり、必要のない体力を消費するだけになる。
長丁場になるであろう渦巻き島の攻略。故に意味のない体力消費は避けるべきだ。
「ふう」と小さなため息をついてはこれからどうするかを考える。
が、自分ひとりで導きだせる選択肢は多くないだろうと結論をだすとすぐにたちに声をかけた。

 

「2人はどこか行きたいところある?」
『…突然言われても思いつかねェよ』
「……だよね」
『なぁ、なんかこう、観光スポットってとこはないのかよ』
「…アサギの灯台ってところがあるよ?」

 

ジョウト地方のガイドブックをパラパラとめくりながらに言葉を返す。
するとは酷くつまらなそうに「灯台かよ」と呟いた。
そんなを尻目に、の持っているガイドブックを覗く。
そこにはアサギシティのシンボルであるアサギの灯台の情報が書かれていた。
しかし、所詮は灯台。
シンボルであり、観光スポットではあるが、特別変わった要素は持ち合わせていないようで、情報量は多くなかった。

 

『けどまぁ、ここでじっとしてるよりはいいんじゃねェか?』

 

がそう言うとが「えー」と露骨に面倒くさそうな声を上げる。
しかし、それを睨み付けるで制してに目をやる。
の言葉を受けて少し困ったような表情を見せただったが、
が「俺は寝てる」と言葉を残してボールに戻ると驚いた表情を見せた後、
苦笑いを浮かべながらに言葉をかけた。

 

「ちょっと、行ってみようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■いいわけ
 ルギア様との出会い物語でございます。全然ルギア様出てこないけど!!
まぁ、そのうち出てくるので気長に待ってあげてください。いずれ出てくるはずだから。
時々、レントラー♂夢なんじゃないかと思いますが、本人はルギア夢だと思っている次第です。