燃え盛る闘志の炎。
完全に戦闘モードに入ってしまったこの3体をとめられるものはいない。
と二軍メンバーは青ざめての陰に隠れているが、
一軍メンバーは特にこの3体の状況に危機感を抱いている様子はなく、
いつもどおりに自分のいたい場所で暢気にことの状況を見守っていた。
このまま3体の大バトルがはじまると誰しもが思った。
が、それをよしとしない者がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

満と洗礼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

、落ち着いて。仲間同士が喧嘩してどうするの」

 

怯んだ様子もなくは真剣な表情で3体に言葉を向ける。
無表情に近いの表情。しかし、その瞳の奥にあるのは小さな怒り。
感情の突起が少ないとはいえ、感情がないわけではない。故に彼女だって怒る。
だが、そのの小さな心の変化を読みきることができなかったは不満を伝えようとするが、それを不意に遮られた。

 

『悪かったわ!私たちが悪かったから、そんなに怒らないで?ね?』
『ゴメン!でもね、パーティーのバランスを保つためには必要なことなのよ?』
「…でも、喧嘩は認められないよ……」
『ええ、そうね。わかってるわ』
『だから、私たちとがバトルする機会をくれない?デモンストレーション的なことで』

 

の機嫌をとっていたはずの2人。
だが、いつの間にやら話の主軸がずれ始めている。
「あれ?」とは思ったが、ここでツッコミを入れた日にはたちに何をされるかわかったものではないので、
は口にチャックをして、ことを成り行きに任せることにした。

 

「………」
『私たちだってバカじゃないわ。自分よりも本当にが強いのであればあんなことはしないわ』
『でも、もしかしたら自分よりも弱い新入りに大きい顔されたらムカツクのは当然でしょ?』
「…それは……」

 

完全に2体のペースに持っていかれてしまっている
しかし、この機を逃すまいとは更に語りかける。

 

『あくまで練習試合。本気は出さないわ』
『ちゃんとやっていいこととやっちゃいけないことの区別はついてるんだからいいでしょ?ね?』

 

2体のいうことはわかる。それに2体は少々過激ではあるが節度は守る。
パーティー内でのバトルはあまり好きではないのだが、の知らないところで3体が喧嘩して大惨事になっては困る。
本人たちが怪我をする程度ならば自業自得で、よくはないが仕方ない。
が、森を消し炭にしたとか、町の建物を壊してしまったとか、そんなことになっては困る。本当に困る。
そんな可能性を抱えているよりは、自分の目の届くところでバトルをさせて、わだかまりを解消させたほうが得策。
その結論に至ったは少し不満げではあったものの、小さくうなずいた。

 

『よしっ、決まりね』
『それじゃ、ダブルバトルだから、誰かのパートナーになってやんなさいよ』
『あ?2対1でいいだろ』
『それじゃあうちのマスターが納得しないのよ』
『面倒だからでいいんじゃないの?』
ぅおっ!?ちょっ、待て!なんで俺!?』
『理由なんてないわよ』
『別にいいじゃない。いっつもやられてんだから』

 

の一言にがっくりとうなだれる
確かに、確かには毎度のやられ役だ。
だが、それをよしとした覚えはない。
少しでもそれを返上しようと努力はしているが、その努力は一向に報われていないらしい。
それを痛感したはほぼ再起不能になってしまった。
それを哀れには思いつつも、当然だが、誰一人としての代わりを申し出るものはいなかった。
が、不意に以外の巨体が揺れた。

 

『私がのパートナーを勤めよう』

 

という意外な立候補が現れて空気がどよめく。
が、たちの表情に変化はなく、それがどうしたと言わんばかりの余裕の表情だった。
さすがのもそれには動揺を隠しきれずに、少し驚いたような表情を見せた。
が、次の瞬間には手ごわい獲物を見つけたといわんばかりにニヤリと笑った。

 

『全員異論はないみたいだな。では、このメンバーではじめるとしよう』

 

そうが言うとバトルに参加しないポケモンたちとは端により、
、そしてが適当な距離をとって身構えた。
両者が戦闘態勢にはいったところでは困ったような声で「はじめ」と言った。

 

『先手必勝!』

 

そう叫んで即行で攻撃に入ってきたのは
ルギアだけが覚える強力な固有技――エアロブラストがに向かって放たれる。
が、それをは身軽に避けて挑発するように笑う。
当然、そんな簡単な挑発には乗る。
自分は強い。
ゆるぎないその確信が、に余裕を与え、相手にハンデを与えるという行為に至った。
余裕で勝利を掴んでこそ、自分がどれほど強く、逆らうことが許されない相手なのかを、相手に刻み込むことができる。
長年夢見てきたとの生活を邪魔する邪魔者は絶対に排除しなければならない。
それに、自分の強さを見てが更に自分に惚れる可能性だってあるし!!
を獲物として視線で捕らえ、大きく翼を広げて翼で打つを決めようとそのまま突っ込む。
は格闘タイプを有している。ならばに大きなダメージを与えることができる。
ニヤリと笑っては力強く翼を振る。かなりの至近距離からの攻撃だ。今更避けることはできない。選択肢は受け止めるのみ。
だが、これだけの体格差があるのだから、おそらくの攻撃を受けて後方へとぶっ飛ぶことになるだろう。
しかし、のその予想は大きく外れた。

 

『リーダーの底力、甘くみんじゃないわよ?』

 

ガシリとの翼を受け止めては笑う。はっとして頭を働かせて至る結論は「守る」。
でなければの翼を打つを受けておいてあの余裕は見せられない。
「意外とやるじゃねーか」と心の中でが感心していると、不意に影に覆われる。
「不味い」と思いながら逃げることを第一として空へと逃れようとするが、
翼をががっちりと掴んでおり、逃れることができそうにない。
このままでは後ろに控えているであろうの攻撃が直撃してしまう。
しかし、そうはわかっていてもから逃れることはできなかった。
の口から青い炎がほとばしる。
攻撃力の高いフライゴンだ。おそらくはドラゴンクローを使ってくると思っていただけに、の攻撃は意外なものだった。
自身が特殊防御力が高いこともあり、思いのほかダメージはない。
しかし、の技の選択は最良だっただろう。
憎らしげに後ろを振り向いたの眼に映るのは満足げに笑う
力任せに体を振るいを振りほどき、更にとの距離も置く。
全員が最初と同じ場所に戻り戦いは振り出しに戻ったようにも思えたが、は大きなハンデを負った。

 

『それなりにアンタの力は認めてんのよ?』
『ただ、負けるとは思ってないけどね』

 

たちの言葉にの怒りのボルテージは上がる。
だが思いのほかは冷静なようで、冷静にこの状態を打破する方法を考えていた。
の予想外の攻撃――竜の息吹によって麻痺してしまった
回復技である自己再生は覚えているが、あの技は状態異常までは回復できない。
どうしたもんかと考えていると不意にの姿が眼に入る。

 

!俺が回復するまで時間を稼いでくれ!』
『うむ、それがいいだろう。が、最良ではないな』
『!なにか策があるのか!?』

 

冷静に言葉を返してくるは期待して彼の言葉を待つが、はすっとを指して言う。

 

『彼女たちに降参する』
『できるかぁ――!!』

 

の言葉に間髪いれずに怒鳴る
しかし、彼の反応も当然だろう。なぜ戦いもせずに負けを認めなくてはいけないのだ。
わなわなと震えるを「まぁまぁ」となだめながらは口を開く。

 

『だが、これが最良だ。どう頑張っても彼女たちには勝てない。ならば、無駄なことはせずに負けを認め――』
『バカ!相手はただのゴウカザルとフライゴンだぞ!?んなポケモンにルギアとディアルガの伝説コンビが負けるわけねェだろ!』
『…浅はかだな、相手はが育てたポケモンだぞ?種族の差を越えるなんて朝飯前さ。それに……』

 

ふっと眼を伏せるを不思議そうには見る。
何を言うつもりなのかと身構えているとさらりとは言う。

 

 

 

『いつ私がお前に加勢するといった?』

 

 

 

にこにこと笑顔で言い切った
そんな彼の様子を見ては確信する。

 

『(今コイツ、物凄い不機嫌モードッ!!)』

 

それなりに付き合いの長い
故にお互いの性格は把握しているつもりだ。
そして、一度機嫌が悪くなったの機嫌を持ち直すのにはかなりの時間が必要なことをは知っている。
おそらく、が怒鳴り散らしたことがの不機嫌モードのスイッチをONにしてしまったのだろう。
少しだけ自分の行動を悔やみながらたちを睨む。
無傷の2体に対して麻痺状態にある。劣勢ではあるが、勝機がないわけではない。
相性の良いをさっさと排除して、とタイマン勝負に持ち込むことができれば勝機はある。
ある程度の方針を決めたは翼を広げ吠えた。
急激に空の機嫌が悪くなりゴロゴロと音を響かせる。
そして、小さなしずくが数滴落ちたかと思うと、一気にフィールドは大雨になった。
これによっての得意とする炎系の攻撃が半減される。
には特に支障はないかもしれないが、にとっては恵みの雨だ。
力を溜め、照準を定める。そして、標的に向かって溜め込んだ力を放った。
の放った強力なハイドロポンプはに向かって迷いなく放たれる。
一度守ると見切り使用したでは、またこの技を使っては失敗する可能性がある。
一か八かで使ってみるのも手ではあるが、彼女たちにはもっと確実な回避方法がある。

 

『こんのっ…!ちょこまかと!!』

 

間一髪のところでを拾いは素早く空を翔る。
連続で放たれるハイドロポンプの嵐などものともせず、
無駄のない動きでハイドロポンプの間を飛び回り、着実にとの距離を縮めていた。
そう、もまた見切りが使えるのだ。
をかく乱しながらの頭上を通過する。
それをは視線で追おうとするが、突然の背から降ってきたにそれを阻まれ、尚且つ奇襲まで食らってしまう。
の拳を覆っているのは炎ではなく電気。どうやらは雷パンチまで習得しているようだった。
の弱点をつかれた攻撃はに結構なダメージを与える。
幸い、タイプの不一致との防御力の高さのおかげで致命傷には至らなかった。
正直、この技は使いたくはなかったが、負けるよりは100倍マシだ。
心を静めて力を攻撃ではなく回復にまわす。徐々にの体の傷が――

 

『あれ?』

 

一向に癒されない体の傷。いつもであればすぐに効果を発揮するというのに、うんともすんともない。
不審に思ってもう一度自己再生を発動させるプロセスを組んでみるが、やはり発動しない。
「何故だ!?」と色々考えをめぐらせる。
自己再生をこのバトルで使うのは初めてだが、生きてきて初めて使う技というわけではない。
もちろん、忘れた覚えもないし、がこの技を使えなくなる要素はない。
では、「相手が?」と考えて一考するが、
ゴウカザルもフライゴンも相手の回復を封じる技である回復封じを覚えるポケモンではない。
そして行き着いた結論は――

 

ォッ…!!』
『あはは、間違えてしまったよ』

 

みえみえの嘘をつく
誰がどう見てもに対する回復封じは意図的なものに見える。
だというのにしれっと嘘を言ってのけるあたり相当はいい性格をしている。
が「あれ?って腹黒キャラだったけ??」と思っていると、
が最後の攻撃だといわんばかりにに襲い掛かった。
しかし、こんなことで勝利を諦めるようなではなく。
痺れる体に鞭を打ってに攻撃を仕掛けた。

 

!いくらなんでもこれは…!」

 

この惨状に耐え切れなくなったのもとへ駆け寄り訴える。
が、不機嫌モードのの訴え聞き入れることはない。
だが、への嫌がらせによってだいぶ不機嫌モードがOFFになりつつあるのか、
は頭を下げ、顔をに近づけるとにこりと笑って「了解したよ」と言い力を溜めはじめた。
おそらくこれはディアルガの固有技――時の咆哮。
連続では放てないが、その攻撃力は絶大で、にとって苦しいこの状況をひっくり返す力を秘めている。
好転した状況を喜びの方を見たであったが、あうはずのないと目があった。
流石のも、この時だけは勝利を諦めたようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■いいわけ
 予想外にさんがイイ性格になってしまいました。もちろん、後悔はしていません。満足しています。
ひとつ謝罪するならば、ルギアは「翼で打つ」を覚えないのに、使っている描写としたことですね。
ルギアの特徴である大きな翼を活かせる技が「翼で打つ」しか思い当たらず…。
なので、ありえない描写をしました。混乱させてしまったら申し訳ありません。
…でも、うちのルギア様は使えるって事で!!(逃)