「ん〜…、ねぇペッパ、質問があるんだけどいいかな?」
「私にですか?」
「うん、結構重要なんですが」

 

珍しく真顔でそう言うユイに興味を持ったのか、
顔しかユイに向けていなかったペッパは体もユイの方へと向けた。

 

「…私でよければ話ぐらいは聞きますが…悩み事ですか?」
「……ペッパは水と飛行だよね?タイプ」
「………戻ります」
「うぎゃー!それはストップ!!」

 

先ほどと同様に真顔でペッパに問うユイであったが、
その質問内容はペッパの気に完全に触ったようで、
ペッパはさっさとボールへと戻ろうとしている。
しかし、それでは困るユイは大声を上げてペッパを引き止めた。

 

「うちの最強メンバー存続の危機なんだからマジで話聞いて!!」
「……、どういうことですか?」
「最近さ、暑い日が続いてたから無意識のうちにチャモをどーにも避けてたらしいんだよね。
んで、チャモがいじけてソウキのところに家出しちゃったんだよね…」

 

申し訳なさそうにペッパの表情を覗き込むユイ。
しかし、ペッパの表情はユイの想像もしないものだった。

 

「まったく、主の自分勝手は今に始まったことではないというのに、
何を考えているんでしょうね、あの馬鹿者は」
「…ちょ、ペッパ……さらりと胸にグサリと刺さる台詞言わないでよ……」
「グサリと刺さるということは、自覚はあるんですか」
「え、ちょ、ペッパさん、軽くスルーパスですか!?」
「終始のつかない会話はしない主義です」
「もぎゃっ!」

 

きっぱりと言いきるペッパに完全にユイは意気消沈。
だが、それを態々気にかけてくれるほどペッパは甘い存在ではなく、
大きな溜め息を一つつくとユイの腰からボールをひとつ取ると、軽く放った。

 

「お前が行った方が早いんじゃないのか?」
「私が行くとソウキ様がチャモのことを庇いそうなので……」
「ソウキならばありえるな…」

 

ボールから現れたのはエナ。
かなり面倒そうな表情を浮かべているが、流石のエナもペッパに逆らうつもりはないようで、
ペッパと同じように大きな溜め息をひとつつくと、
「わかった」とひとこと言い、擬人化した姿から元の姿に戻った。

 

『行ってくる』

 

そう言ってエナは1人走り出すのだった。