バサバサと翼をはためかせて忙しなく洞窟を飛び回っているのはズバットやゴルバット。
その耳障りな羽音にイライラしながらも、ライナは洞窟を一人進んでいた。
「あーもう!なんでこんなところを1人で歩かなきゃいけないのよー!!」
溜まりに溜まった鬱憤を声として発散させるが、
その声に反応してズバットたちが騒ぎ出した。
『五月蝿い!五月蝿い!』
『煩いぞ人間付き!』
「そっちこそ煩いよ!あたしは好きでここに居るんじゃないんだからね!!」
ズバットたちが不満の言葉を返すと、ライナもまけじと怒鳴る。
確かに、ライナは好き好んでこの洞窟に入ったわけではない。
入った理由はユイが野生のハガネールからメタルコートを得たいというもので、
ダンジョン攻略ではないのだが、それに近いことが理由だ。はじめライナはユイに同行する予定ではなかったのだが、
ゴルバットたちとのバトルができると聞いて2つ返事で同行したわけだった。
「みんなのバカぁ…なんでバトルしないで逃げるのさァ〜!!」
ライナがユイたちとはぐれてしまった理由は簡単だ。
ゴルバットたちと必ずバトルするとおもっていたライナだったが、
ユイは必要なときだけバトルをするつもりだったようで、
ライナはバトルを仕掛けたのに対して、ユイは「逃げる」という選択肢を選んでいたのだ。ユイもライナも目の前のことしか見えておらず――
最終的に離れ離れになってしまったのだった。
「うわぁーん!ユイー!ラトー!何所ー!?」
とうとう泣き出してしまったライナ。
滅多に泣かないライナではあるが、流石に一人ぼっちは心細いようだ。
「…あ?なァ雷、アイツ、ライナじゃないか?」
「……(無視)」
「あー!蒼谷ぁー!うわーん!怖かったよー!」
「うおっ!」
泣き出したライナの前に現れたのは、蒼谷と雷だった。
2人の登場に安心したのかライナは蒼谷に抱きつきまた泣いた。
「ぅんげっ!離れろライナ!鼻水がつく!!」
「やだー!一人になるのはもうやだー!!」
「あー!誰も置いていかないっての!だから離れろィ!」
「……静かに、ゴルバット達が怒る」
ぎゃんぎゃんと騒ぐ二人に注意の言葉をけたのは雷。
完全に混乱しているライナ、そのライナの鼻水から逃れようとする蒼谷。
その2人のテンションとは正反対のテンションで話す雷に蒼谷は少しの怒りを覚えた。
「ここそんなに広くない。……歩いているうちにユイに会える」
「ホントに?」
「………」
雷がライナの質問にコクンと頷くと、ライナは蒼谷の服の端で涙を拭うと、「よしっ!」と気合を入れた。
「よーし!頑張ってユイを探すぞー!」
「………ん」
「(マジでコイツらマイペースすぎだろィ)」
やはりこの2人には少なからず殺意を覚えてしまう蒼谷だった。