ついに明日はポケモントレーナーとして自分だけのポケモンを貰って旅立つ日。
嬉しさと興奮でベッドに入ってもすぐに眠れそうにはない。
一番はじめのパートナーはどんなポケモンにしよう?
そんなことを頭の中でグルグルと考える。けれど答えはそう簡単に出てくることはない。

 

「ふぁ…」

 

急に溢れ出した眠気。もう少し明日のことを考えていたかったが、それよりも先に眠気が襲いかかってくる。
襲ってきた眠気を追い返すことはせずに欠伸ひとつして少女はそのまま眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

じまり

 

 

 

 

 

トーストに塗ったバターの香りが空腹の少女の鼻をくすぐる。
少女はキッチンのカウンターテーブルのイスに座ると「いただきます」とひとこと言ってトーストを口に運んだ。
彼女が住んでいるマサラタウンで有名なパン屋から買ったパンだけあって
その美味しさはいつものスーパーで売っているパンよりも柔らかく味は濃厚だった。
ここまではほとんどいつもと何も変わらない朝。けれど今日は少女にとって特別な日だ。
いつもであればもっとゆっくりとる食事も今日は少し早く切り上げて手早く食事の後片付けをはじめる。
そして少女が全てを片付け終わった頃、ふいにダイニングに気配が増えた。

 

「おっ、旅の準備は終ったの?」
「あ、お母さん。うん、もう出発するよ」
「そっか、間に合ったみたいでよかった」

 

そう言ってタオルで汗をふき取るのは少女――の母親。
彼女はポケモン研究者なのだが、
作業着に身を包んでおりその姿は研究者というよりはポケモンの飼育者と言った方が適切かもしれない。
だが、これが彼女の研究者としてのスタイルらしく娘のもその姿に少しも疑問は感じなくなっていた。
コンコンと靴のつま先を床で蹴りは完全に靴を履いたことを確認する。
それを慈愛に満ちた表情で母親が見守っていた。

 

「……それじゃあ、行ってきます」
「はいよ、いってらっしゃい」

 

母親に出発のひとことを告げては住みなれた我が家を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ、来たかくん」

 

そう言って優しい笑顔でを迎えてくれたのは一人の老人。
ポケモン研究者の中でも多くの人々にその存在を知られたオーキド博士だった。
は母親が研究者ということもあっては個人的にオーキドと親しいこともあり、
他にも上げられた出発地点を蹴って彼女は自分の出発地点をこのオーキド研究所にしたのだった。

 

「おはようございます。オーキド博士」
「うむ、おはよう。さて、早速じゃがどのポケモンに――」
「おっはよーございま〜す!」

 

オーキドの言葉を遮って聞こえたのは元気な少年の声。
とオーキドはこの声に聞き覚えがあるのか、
は苦笑い、オーキドは呆れたような表情を浮かべてバンッと音を立てて開いた扉に視線を向けていた。

 

「博士、ポケモン貰いにきました」

 

ドアの向こうから現れたのは1人の少年。
彼もまたと同じく今日からポケモントレーナーとして旅立つ若者の1人だ。
彼の名は。父親がバトルでそれなりに実力を認められたトレーナーで、
マサラタウンから旅立つ少年少女たちの中でもそれなりに期待をされている少年だ。
だが、当人はそれにまったく気付いていないらしく、
今日も今日とてのほほんとした自分のペースを崩してはいないようだった。

 

「おはよう、
「あ、。おはよ」
「2人とも一番はじめにパートナーにするポケモンは決っているかな?」
「はい、決ってます!俺、フシギダネがいいです!」

 

ご丁寧にオーキドの質問に挙手して答える
どうやら是が非でも草タイプのフシギダネをパートナーにしたいようだ。
はそんなを見てクスクスと小さく笑うとオーキドを見て小さく頷いた。

 

「よし、ではにはフシギダネを渡すとしよう」
「やったー!」
「よかったね、

 

オーキドからフシギダネの入ったであろうモンスターボールを受け取りは嬉しそうにガッツポーズを決める。
そして、嬉しそうに何度も何度もモンスターボールを眺めていた。
そんなの様子にまた呆れながらもオーキドはに視線を向けた。
最初に貰うポケモンたちは全部で3種類。
本当は全員が全員、好きなポケモンと共に旅立てればいいのだが、
ポケモンたちを用意することができず生憎それはできなかった。
故にオーキドはシビアに先着順にすることを決めていた。
本当はに一番はじめにポケモンを選んでもらう予定だったのだが、の勢いに圧されてしまいそれはできなかった。
だが、今度こそにポケモンを選ばせたかった。

 

「えーと…私はヒトカゲをお願いします」
「うむ、よかろう」

 

笑顔を浮かべてオーキドはの手の上にヒトカゲが入ったであろうモンスターボールを置く。
も自分のものとなったモンスターボールを眺めながら少し照れくさそうに微笑んだ。

 

「さぁこれでお前たちもポケモントレーナーの仲間入りじゃ!精一杯頑張るのじゃぞ!」
「「はい!」」

 

オーキドの激励を受けてはオーキド研究所を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで俺たちもはれてポケモントレーナーか。…、行く当ては?」
「とりあえずは…ジム戦かな?」
「あー…やっぱそれにいくよなぁ……」
「…なんだか嫌そうだね」
「まぁな、俺、親父のこともあるからポケモントレーナーとしての道はあんまり目指したくないんだよな」

 

歩きなれた道をいつもよりも少し早い歩調で歩く
2人は共に旅をするつもりはなかったが、とりあえずトキワシティにつくまでは一緒に旅をすることにしていた。
ライバル――というわけではないが、同じく今日出発するはずだったサトシとシゲルには会っていないが、
旅をしているうちに何れ出会うだろうと考えた二人は先を進むことにしていた。

 

「ポケモントレーナー以外の道を目指すの?研究者とか?」
「いや、研究者はムリ。なぁ、ポケモンブリーダー……って変かな?」
「ああ、ブリーダーね。ううん、全然変じゃないよ。が自分で選ぶんならなおのこと」
「そ、そっか!でもブリーダー目指す前に少しぐらいジム戦も…親父五月蝿いし……」
「あはは、大変な旅になりそうだね」
「なんだよ、はトレーナー目指すのかよ」
「とりあえずはトレーナーとしての腕を磨くよ。いきなり研究者になるなんて到底無理だもの」

 

確りとしたプランを持ったは大人しく感心した。
争いごとを好まない彼女がジム戦をあえて選ぶときいた時には正直意外だったが、
今のの言葉を聞いては納得した。

 

「よし、まず目指すはトキワシティだな」

 

の言葉には「うん」と頷き2人はトキワシティへの道を進み始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■いいわけ
 今更過ぎるポケモンアニメの序章でございました。
オーキド博士しか出てませんが気にしないでください。自己満足以外のなんでもないので…(恥)
次は女主人公とサトシの再会話とか書きたいです。