ふと見つけた後姿。
それは絶対に忘れられない人のもの。
少年――ルビーは思わずその後姿に向かって走り出していた。

 

グレー姉さん!」

 

思い切りよくルビーは懐かしの存在――グレーに抱きつく。
突然抱きつかれたというのにグレーはそれほど驚いていないようで、
「ん?」と小さく声を漏らしながらくるりと抱きついてきたルビーの存在を確認した。

 

「ルビー?」

 

 

 

 

 

れからライバルへ

 

 

 

 

 

街中で話すのもなんだということで街の公園にやってきたルビーとグレー。
ルビーはグレーに出会えたことがよほど嬉しかったのか、
グレーの手を取って興奮気味に彼女との再会を喜んだ。

 

「久しぶりだね、グレー姉さん!」
「うん、久しぶりだね」

 

グレーがルビーの頭を撫でるとルビーは心の底から嬉しそうに笑う。
それが嬉しくてグレーもルビーにつられて微笑を浮かべた。
そして、ひとしきりルビーの頭を撫で終わったグレーはふと疑問に思ったことを口にした。

 

「どうしてルビーがここに?」
「えぇーっと…コンテスト制覇のために……」
「…センリさんに認めてもらったの?」
「もらってない…」

 

グレーに問われルビーはばつが悪そうにグレーから視線を逸らす。
それを見てグレーは「ああ、やっぱり」とひとこと言ってまたルビーの頭を撫で始めた。
その目には嬉しそうなものがあり、ルビーの行動に対して悪い印象は持っていないようだった。

 

「センリさんの反対押し切って出てきたなんて凄いね」

 

ルビーの頭を撫でながらグレーはそう言って笑う。
センリのことをよく知っているグレーは、
ルビーの行動がどれだけルビーにとって、センリにとって重大な意味を持つか理解している。
それ故にグレーはルビーの行動を凄いと思った。
憧れの存在であるグレーに褒められるのは嬉しいが、ルビーはグレーに「家出」してきたことは告げていない。
それが気にかかってルビーの表情は曇り気味。
それをすぐに察したグレーは先ほどまでにこやかだった表情を少し歪ませた。

 

「お母様にちゃんと伝えた?」
「……伝えてない…」

 

ルビーの答えに「やっぱりか」と思う反面、
グレーはそれだけルビーが本気でこの旅を進めようとしていることを理解した。
ルビーはセンリと色々あって今はあまり懐いていない。
だが、母親のことは大切に思っており、ルビーが母親を心配させるようなことをするのは、
それだけルビーが本気で成し遂げたいことがあるからだとグレーはそう感じた。
「ふむ」とため息を漏らしグレーは腕を組みルビーを見る。
ルビーは一瞬怒られるかと思い体を膠着させた。
だが、グレーはルビーを責めるつもりはないようで、ポンポンとルビーの頭を叩いた。

 

「たまにはお母様に連絡するんだよ?」
「姉さん…、うん!」

 

グレーがそう言うとルビーは元気よく答えを返して嬉しそうにグレーに抱きつく。
抱きつかれたグレーも満更ではないようで薄く笑みを浮かべて再度ルビーの頭を撫でた。

 

「そういえば、どうしてグレー姉さんがホウエンに?」
「んー?ホウエンのコンテストはレベルが高いからちょっと出てみようかと思ってね」
「コンテスト……!なら僕たち、ライバルだね!」

 

ルビーの瞳に好戦的な色が宿る。
それを見てグレーは満足そうににこりと笑みを浮かべて「うん」とルビーに言葉を返した。
いつもは憧れるだけだったグレーという存在。
だが今は同じ舞台に立つことができる。それがルビーにとってはとても嬉しいことだった。

 

「絶対負けないよ!」
「私も負ける気はないよ」

 

そう言って二人はがしりと腕を組み合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■いいわけ
 ルビーのコンテストの1番目の師匠は夢主ということになってます(勝手設定)。
「歳の差燃えー」ということでガリガリ書かせていただきました。ちょっぴり満足です。
また、公式無視してルビー夢書き始めたら生暖かい目で見てやってください。