運命という言葉はあまり好きではないけれど、
この出会いは……まぁ、運命って呼んでもいいかもしれない。
強い衝撃。でも、その衝撃はとても心地よくて、滅多に感じることのない「感動」を覚えた。
元々、感情の突起が少ない私。
だから時々本当に自分に「心」とか「感情」があるのか疑問に思うけれど、
やっぱり私は人間らしかった。
 
 
 
ーフェクト?
 
 
 
「………」

 

二匹のビークインを一人の少女が食い入るように眺めている。
少女に見つめられたビークインたちはどう反応していいものか困っているようで、
オロオロとしながらお互いの顔を見合わせていた。

 

、あんまり睨んでるとビークインたちに嫌われるよ?」
「……睨んでない…」

 

少女――に苦笑いしながら声をかけたのは、シンオウ地方のポケモンリーグで四天王を勤めているリョウ。
しかし、リョウの言葉はにとって不服なものだったようで、
はむすっとした表情でビークインたちからリョウへと目を移した。
すると、の視線から開放されたビークインたちは自分の主人の元へと戻り、彼らの腕に抱きついていた。

 

「にしても、まさかがビークインをゲットするとは思ってなかったよ」
「…ゲットしたのはミツハニー」

 

真顔でポツリと呟くにリョウはまた苦笑いを浮かべる。
彼女は、自分の非を認めたくないが故にこんなことを言っているのではない。
ただ本当に自分はビークインをゲットしたのではなく、
ミツハニーを捕まえてきちんと進化させて仲間にしたことを、伝えたいが故にこんなこと言ったのだろう。
それを理解しているリョウはくすくすと笑いながらの頭を優しく撫でた。

 

「そうだね。
ミツハニーからきちんと育てないとこんなに立派なビークインにはならないもんね」
「……リョウのビークインもね」
「へへ、に褒めてもらえるなんて光栄だな」

 

滅多に「褒める」ということをしない
だが、リョウのビークインに関しては高く評価しいるようで、少しその顔に優しい笑みを浮かべて言った。
やはり、滅多に褒めるということをしない――
いや、自分が想っている人間に褒められるのは嬉しいことのようで、
リョウはの言葉を聞いてニコニコと笑みを浮かべた。

 

「…でも、ビークイン自体の資質もあるよね」

 

すっかり気分を良くしたリョウであったが、
不意にがリョウの腕に抱きついているビークインに手を伸ばしてきたに驚き一歩引いた。
まさか後ずさりされるとは思っていなかったはとても不思議そうな表情を浮かべており、
思うところがあったのか首をかしげてリョウの表情を覗った。
その様子はいつものからは想像もできないほどに愛らしいもので、
リョウの頬には少しだけではあるが赤味がさしていた。

 

「どうかしたの?」
「いやー……、の性格はホント、僕にとってパーフェクトだなーと思ったんだ」
「??」

 

リョウの言葉に心底不思議そうな表彰を浮かべる
本当であればリョウの言葉の真意に気づいて欲しいところだが、
そうはならないことにはの性格を理解しているリョウが一番理解している。
心の中で小さなため息をつき、リョウはに提案した。

 

「これからハクタイの森にポケモンを見に行こうよ」
「……いいよ」

 

リョウの提案を受けては腰に装着していたモンスターボールをぽんっと放る。
すると、そのモンスターボールからフライゴン――緑翼が姿を見せ、
は緑翼に乗り込むとリョウの顔を見てまた小首をかしげた。

 

「乗らないの?」
「勿論乗るよ。
今はただ、にフライゴンがよく似合うから見とれてただけだよ」
「……。……リョウ」
「なに?」
「ありがとう」
「(…敵わないなぁ)」

 

笑みを浮かべるにリョウは心の底から彼女には勝てないと感じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■いいわけ
 リョウくんも好きですが、それ以上にビークインが大好きです。
OFFではバトル用メンバーとしてPBRで頑張ってくれています。
っつーわけで、二人のビークイン使いのお話でございました。