「……いらない」
思いを込めて贈ったプレゼントを開けもせずに断わる彼女。
デンジの中で一瞬時が止まり、めまいがした。
なにも言えずに少しの間彼女を凝視していると、
彼女は断わったことに罪悪感など感じていないのか、
自分をじっと見てくるデンジを不思議そうに見つめるのだった。

 

 

 

 

 

の妨害

 

 

 

 

 

「も、もしかして…俺のことかなり嫌い?」
「ううん?嫌いじゃないよ。でなきゃここにいないでしょ」
「……確かに」

 

いくら感情の突起が少ないだからといって、
好きでもない人間の元を態々訪れるかと問われたらそれは迷わずに「No」。
言われてみれば納得だが、ではなぜデンジのプレゼントの中身を見もせずに断わったのだろうか?
あまり人の心を読むことが得意ではないデンジが、いくら知恵を振り絞ってみても答えは出そうにない。
正直、かなり格好の悪い話だが、
このモヤモヤした気持ちを整理するにはひとつの選択肢しかない。

 

「なんで俺のプレゼントを断わったんだ?」
「……姉さんとユイさんにデンジからモノは貰うなって言われたから」
「…っな!?……あの性悪どもッ…!!」

 

の解答を聞いてデンジの脳裏によぎったのは、勝ち誇ったように高笑いをする
の姉――カナメと、一度自分とかバトルしたことのあるトレーナー――ユイだった。
あの2人とデンジは折り合いが悪く、
会えば口喧嘩をしながらもポケモンバトル。もしくは速攻でその場を離れるほど仲が良くない。
そんな相手の妹であり、後輩である
正直デンジは、も嫌な性格をしていると思ったが、その予想は大きく外れて現在に至っている。
そしてそれは、最大の妨害者を作っての恋になることにデンジは気付いていなかったのだ。

 

、俺以外にモノ貰うなって言われた奴いるか?」
「……いないよ。…なんでデンジはダメなんだろうね?」
「はぁ〜…ほんとなんでだよ……」

 

ただただ不思議そうなとは対照的に、わけを分かっているガックリが故に肩を落とすデンジ。
デンジが色々と気付いて欲しいは、やはり相変わらずで不思議そうに小首を傾げるだけ。
果てしなくライバルたちに遅れをとりそうな展開にデンジは溜め息をつく。
だが、人生そう悪い展開ばかりは続くものでもないらしい。

 

「デンジ、姉さんとユイさんには内緒にしようよ」
「へ?」
「……だから、私とデンジの秘密にするの」
「ってことは……」
「デンジさえ良ければ受け取るよ」

 

ニッコリと笑って言ってくれるにデンジは心底救われた。
できる限り悩んで決めたプレゼント。
それを受けとってもラ言えないと思ったら、
「二人の秘密」なんていう美味しい出来事がオマケでついてきたのだ、
これは喜ぶしかないだろう。

 

「んじゃ、改めてこれが俺からへのプレゼント」
「ん、ありがとう。……開けてもいいよね?」
「おう」

 

デンジがニコニコ顔でに言葉を返すと、
は器用にプレゼントのリボンと包装紙を取り去り、包まれていた箱を取り出した。
そして、が箱の中を開けると、その中には可愛らしいブレスレットが入っていた。

 

「どうだ?気に入ったか?」
「…うん。でも、技マシンじゃないんだね」
「は?」
「……バトルに勝ったから、またチャージビームをくれるかと思った」
「っ〜〜」

 

ある意味で予想通りの展開に思わず頭を押さえてしまうデンジだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■いいわけ
 何故か折り合いの悪いデンジとユイたち。きっと、デンジがユイに失礼なこといったんだろうね。
ユイの場合、顔が良ければそれほど失礼なこと言わなきゃ嫌いになりませんもん。
補足ですが、夢主とユイは結構仲良しさんです。パートナー同士は仲悪いけど…。