積み上げられる皿。
一枚、二枚と心の中で数えながらデンジは、
自分の財布が瀕死状態になるのではないかとヒヤヒヤしていた。
だが、瀕死ですめばまたいい方か。
最悪の場合に は、今食事をともにしている少女――に食事の代金を借りることにもなり かねない。
自信満々で「おごる」と言ってしまった以上、何が何でも借りるという状況は避けたいところだ。

 

だが、そんなデンジの心も知らずにはゆっくりとだが確実にその皿の枚数を増やしていくのだった。

 

 

 

 

 

 

想外
オンパレード

 

 

 

 

 

、美味いか?」
「うん。こんなメニューがあるとは知らなかった」
「そ、そりゃこれは俺だけの特別メニューだからな」
 
いつもならばこのの無表情に近いその顔も、「故意は盲目」というヤツで、
可愛いも のに見えるが、今日ばかりはそうもいかない。
何とかその気持ちを自分だけの心に押し留 めようとはしているが、
それもかなわず引きつった笑顔で、デンジはのいつもの表情を見ていた。
 
「……なんか、デンジ機嫌悪い?」
「いや、全然。そんなことないって。――というか、どうしてそう思うんだ?」
 
デンジが不思議そうに首をかしげると、
は少しばかり椅子から腰を上げてデンジの眉間に手を伸ばすと、
少したりともその表情を変えずにデンジの言葉に答えた。
 
「ここにシワよってる」
 
滅多に自分に――いや、他人に触れてくることがない
だが、今はデンジに触れている。
ありえない状況にデンジは一瞬気が遠くなった。
だが、こんな美味しい場面を、気絶 して逃がしてなるものかと何とかその意識を保つと、
がふっとデンジの眉間から指を 離し、食事を再開しながら言った。
 
「顔真っ赤」
「――ッ!」
 
にそう指摘され、デンジの顔は更に赤に染まる。
食事代の心配、との触れ合い、色々なことが一気に考えすぎたせいで、
デンジは自分の顔の状態にまでは気を配れなかったらしい。
それを知ってか知らずか、は何も言わずに確実に食事を勧めていた。
普段なら他人に興味を持たないに少しの不満も抱くところだが、デンジは はのその性格に感謝していた。
流石に好きな女の子との前で男が赤面するのはなんとも情けない話。
まぁ、確実にはそんなことを気にするタイプではないが、これはデン ジ個人の気持ちの気持ちの問題だ。
ぐぃと水を飲み干し、デンジは自分の頬に手を当ててちらりとを覗き見てから口を開いた。
 
「俺、まだ顔赤いか?」
「……まぁ、少しはね。でも、気にするほどじゃないよ」
「そう…か――って、まだ食べるのか?」
 
の答えを聞きホッとしたのも束の間。
なんとまたがウェイターを呼んだのだ。ウ ェイターに頼むことなどただひとつ。
デンジは予想外すぎるの食欲に、顔が赤くなっ たと思ったら、こんどは顔を青くしていた。
 
「まさか、もう食べないよ」
「じゃあなんで……?」
「ツケにした」
「はぁ!?」
「今日は食べ過ぎて持ち合わせがないから、ツケにした」
 
食後の一服とでも言うのか、先ほどは気づかなかったがとデンジの前には、
シャーベッ トが置かれており、それをは当たり前のことのように食べている。
デンジはまだわけ がわからないのか、「え?え?」と疑問符ばかりを頭上に浮かべていた。
 
「(流石に今日は食べすぎ。こんな金額払わせられないよ)」
 
そう心の中では思いながら何食わぬ顔で黙々とシャーベットを口に運ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■いいわけ
 夢主の意外な部分を出してみました。まぁ、相変わらずな部分も結構ありましたが(苦笑)
細い割りによく食べ、大食いと自負してちょっと気にしているという、少し女の子らしさを感じていただければ嬉しいです。
にしても、うちのデンジさんはヘタレですね。もう少し気合の入ったデンジを書きたいです。